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Date: Wed, 24 Oct 2007 00:24:52 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31405] [HA06N] 小説『夏の木造校舎の怪・三回目』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200710231524.AAA47714@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 31405
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/31400/31405.html
2007年10月24日:00時24分51秒
Sub:[HA06N]小説『夏の木造校舎の怪・三回目』:
From:いー・あーる
てなもんで、いー・あーるです。
色々時期外れですが、とりあえず、ストーブが出る前になんとか!<おい
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小説『夏の木造校舎の怪・三回目』
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登場人物
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相羽真帆(あいば・まほ)
:
橋本保鷹(はしもと・やすたか)
:橋本家四男。ワーモグラな男の子。ぼけぼけだけど頭がいい。
:同じ塾に通う御羽仁藻とはトップを争う仲。
御羽仁藻(おわ・にも)
:御羽貞我の妹。小6。ツンデレブラコン。
:同じ塾の橋本保鷹とはトップを争う仲で、コンプレックスを感じている。
本文
----
ぎし、ぎし、と鳴る階段を一段ずつ登ってゆく。
「大丈夫かね?」
「ええ、大丈夫です」
足元を丁寧に丸く照らしながら声をかけてくる竹下に、真帆は元気よく答え
たが……その途端。
「ひゃっ」
「真帆さんっ」
がた、と、その姿勢が崩れたのに、片手を握ったままの仁藻が顔色を変える。
「あ、だいじょぶ……って、もしかしてあたしが踏み潰したのかな?」
「いや、あんたがというより、ここんとこが古びてたってことだよ」
気をつけて足を引き抜いた真帆に、ちょっと笑って竹下が言った。
「どっか怪我してないかね?」
「あ、それは大丈夫です」
流石にそろそろと足を引き上げて、次の足を下ろす。みし、と音はしたもの
の、流石に問題は無かった。
「次の石は、ここでいいですか?」
二、三歩先に進んでいた少年が振り返って声をかけてきた。
「どこどこ?」
とと、と、上がって真帆が見やった、時に。
……しゃあっ……
「ん?」
小さな声が、した。
……しゃあああっ……
「なっ、なにっ」
真帆にしがみついた仁藻と対照的に、保鷹のほうは音のほうに首を伸ばすよ
うにして見やった。真帆のほうは片手に仁藻をしがみつかせたまま、音のする
ほうに進む。
一歩、二歩、と進んだところで。
「…………ネコだよ」
ぽつん、と、少年が言った。
「ネコ?」
「うん。ネコ」
頷いた少年は、良く見ると鼻を小さくうごめかせている。無論仁藻も、そし
て真帆も、そんなことには気がつかなかったが。
しゃあ、と、威嚇するような声だけが響く。
「……ちょっと待って」
気がついて、真帆は買い物袋の中をかき回した。鰯のすり身のさつま揚げを
取り出し、ラップを外して一枚だけ取り出す。
「……どう、かな?」
それをまた半分に千切り、もう一度半分に千切る。それをぽん、と、竹下の
灯りの丸い光の少し外に投げた。
「………………」
軽い足音と、がつがつ、と咀嚼するする音。そしてふぅ、と、小さく威嚇す
る唸り声。そして、その丸い光の中に少しだけ見える、小さな白い耳二つ。
「……よし」
光の輪の中に、真帆はまた、四分の一のさつま揚げを投げた。
「…………あ」
少女が小さな小さな声をあげた。
咀嚼する音を『がつがつ』と称するのは、意味が無いことじゃないのだな、
と、妙に真帆は納得した。決して薄くは無いさつま揚げを、その猫はがつ、が
つ、と牙を鳴らすようにして食べている。
耳は白いが、顔の半分くらいは黒い。背中には大きな茶の斑点。もう、ある
程度大きくなった猫なのだろうが、その身体はげっそりと痩せている。しっか
りとした後ろ足の先は白いが、腰の辺りから尻尾、そして足の付け根にかけて
は、光の輪からはみ出ていて、よく色はわからない。
「こいつ、また来たのかね」
少し呆れたような声に、真帆と仁藻は振り返った。保鷹は、後の半分のさつ
ま揚げを真帆から受け取って、食べ終わったら次の四分の一を渡そう、と、構
えている。
「ご存知なんですか?」
「うん、何度か見たね。……しかしまあ、何でこんなに痩せたかねえ」
食べ終わった猫は、周りに吹っ飛ばした屑をぺろりと舌で掬い上げた。ぐい、
と顔を上げて保鷹を見る。よこせ、と言わんばかりの目つきに、保鷹は素直に
さつま揚げの欠片を落とした。ぐる、と、喉を鳴らして、猫は尻尾の先まで全
て、懐中電灯の光の輪の中に入ってきた。
腰の辺りの大きな黒いぶち。そしてすらりと長い尻尾の途中の茶色い縞。
しかし。
「……あ!」
「うわ、酷い!」
全員がほぼ一斉に、声をあげ顔を顰めた。
「誰だねこんなことをやったのは」
竹下の憤然とした声に、仁藻と保鷹がうんうん、と頷く。猫の……恐らくは
つやつやとしていただろう尻尾に、細いたこ糸のようなものが絡められ、しっ
かりと縛り付けられているのである。どうもかなり前からのものらしく、一部
の毛は擦り切れたようになり、そこから赤膚が見えている。
「とってあげないと!」
「お嬢ちゃん手を出したらいかん!」
咄嗟に立ち上がりかけた仁藻の肩を、ぱっと竹下が抑えた。びく、と、逃げ
かけた猫を、保鷹がまた、小さなさつま揚げの欠片で引き止めた。
「どうかしてやりたいんだけど……」
糸自体は、完全な堅結びでもないらしく、先のほうにリボン状の部分がある。
つまり、上手く引っ張れば……その結び目はかなりきつくなっているとは思わ
れるが……解けないわけでは、ない。
が。
「赤剥けだもの。これ下手に触ったら猫が逃げちゃう」
「うーん……」
三人が唸った時に、ひょい、と保鷹が猫の前に手を出した。小さな欠片を指
の上に乗せる。はぐ、とその欠片を一口で食べた猫は、彼の指についた油をぺ
ろりと舐めた。
「よし」
どこかしら呑気そうな少年は、そう言った途端、ひょい、と猫を抱き上げた。
脇に手を差し入れ、後足をぶらーんとさせる格好で持ち上げる。猫のほうはど
うも多少気を呑まれたようで、何となくきょときょとしながら、けれども暴れ
るまではいかない。
「おばさん、とれませんか、糸?」
「あ、ちょっと待ってね」
それでも神経質そうに、ぱたり、ぱたり、と動く尻尾から伸びる細い2本の
糸の先を真帆はじっと狙った。そろり、と手を伸ばし、充分に近づけて。
「よし!」
「ふぎゃっ!」
糸を掴んだ途端、猫はぴん、と尻尾を持ち上げた。一瞬、ぎゅ、と、嫌な手
ごたえがあり……そして。
「解けた!」
仁藻が嬉しそうな声を上げた。
最初の結び目が解けても、糸自体はぐるぐるに巻きつけてある。痛くないか
らね、と、少年がそのおっとりとした声で猫に呼びかけている間に、後の三人
は、尻尾を取り囲んでかなり奮闘することになった。大体尻尾を触られて喜ぶ
猫はあまり居ない。まして触るだけで痛みそうな状態なのだ。
「これじゃあ鋏があっても、無理だったわね」
くるりくるり。ゆっくりと解いて、最後に残った糸をそろりと引く。ぴくぴ
くと動き回っていた尻尾が、ようやくすとんと落ち着いた。
「……これで、大丈夫かな?」
「うん。大丈夫だよ」
仁藻の声に、返事をしたのは保鷹だった。ちょっとむっとしたような顔で見
上げた仁藻に、保鷹はにこっと笑った。
「猫の顔、ほっとしてるもの」
「……そうかなぁ」
疑わしげに口では言ったが、仁藻も小さく頷いている。すとん、と降りた猫
は、尻尾をそろりと舐めて、にゃあ、と、小さく鳴いた。
「もう、大丈夫だね」
「良かった」
何となく四人が、ほぅ、と、息を吐いて笑った。
「さて、じゃあ、石をどっかに置くかね?」
「猫にいたずらされないとこって……やっぱりここかな」
手すりのところに、保鷹は石をそっと置いた。
「これが最後だからね」
仁藻は、最後の四分の一をぽい、と、猫に投げている。落ちて2度ほど跳ね
たのを、がっぷりと咥えた猫は、するり、と、懐中電灯の輪から抜け出していっ
た。
「さて、なんか時間食っちゃったね。上に行こうかね」
「あ、はい」
ちょっと懐中電灯を振って竹下が言い、後の三人が頷いた。
2階から3階へと行く階段の一段目に足をかけたときに。
ふわり、と、小さな猫の声がした。
時系列
------
2007年9月上旬
本文
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お化け校舎の2階で出会ったのは……。
*************************************
てなもんで。
あ、ちなみに、保鷹君にダッコされた猫が抵抗してないのは、
やっぱり……種は違えども、獣人の血のせいということに!(おい
猫の習性については、いやこういう猫も居るということで!!(逃)
であであ。
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