[KATARIBE 31403] [HA06N] 小説『夏の木造校舎の怪・二回目』

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Date: Fri, 19 Oct 2007 23:54:07 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31403] [HA06N] 小説『夏の木造校舎の怪・二回目』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2007年10月19日:23時54分06秒
Sub:[HA06N]小説『夏の木造校舎の怪・二回目』:
From:いー・あーる


てなわけで、いー・あーるです。
呑気な呑気な話です。
……うん、とりあえず、「キャラメルって一箱に幾つ?」って尋ねた理由は、
判ってもらえるかもとか……うん、結構終盤で使うことになりそうなんだ(えう)
というわけで、どうやら18粒、ということで続けます。
とよりん、妙な問いに、即答えを有難うございました。

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小説『夏の木造校舎の怪・二回目』
================================
登場人物
--------
 相羽真帆(あいば・まほ)
   :
 橋本保鷹(はしもと・やすたか)
   :橋本家四男。ワーモグラな男の子。ぼけぼけだけど頭がいい。
   :同じ塾に通う御羽仁藻とはトップを争う仲。
 御羽仁藻(おわ・にも)
   :御羽貞我の妹。小6。ツンデレブラコン。 
   :同じ塾の橋本保鷹とはトップを争う仲で、コンプレックスを感じている。 

本文
----

 コンクリートブロックで囲まれた敷地は結構広く、確かにこれは、昔の校舎
だったのだろう、と思わせるような空間が残っている。その脇にぱさぱさと、
どうもおまけのように残った樹木と、幾つかの壊れかけた植木鉢。
「……なんだかすっかり、暮れるのが早くなったんだねえ」
 呑気に言う真帆の片手を、少女はしっかりと握り締めている。少年のほうは、
こくこくと頷きながら興味ありげに周りを見ている。
「あっちだよね、校舎」
「はい」
 まだ口の中に残っているキャラメルをもごもごと噛んでから、少年は頷く。
「それにしても……灯りみたいなの持ってる?」
「……いえ」
「だよねえ」
 真帆にしても、灯りになるようなものは持っていない。懐中電灯やロウソク
は無論、マッチやライターについても、せいぜい相羽が持っているくらいで、
真帆は持っていない。
「じゃあ、急ごう。あの暗い中で転ぶほうがあたしは怖いよ」
「……は、はいっ」
 早足になった真帆に、緊張で一杯の返事をしながら、それでも少女は足を速
めた。少年のほうは、相変わらず呑気そうにきょろきょろと周囲を見ながら、
けれども流石に何も言わずに二人についてくる。
 かろうじて残っている砂利で、以前の『道』だったろう場所を歩いて、校舎
の正面玄関へ。
 扉が壊れたのか、元から無いのか。ぽっかりと空いた入り口から、三人はそ
の古い校舎に入った。

            **

「あ、ここ段になってるよ。気をつけて」
「はいっ」
 正につるべ落としの勢いで日は暮れた。それでも淡く残る残照が窓から入る、
その光でかろうじて階段の位置だけは判ったものの。
「ゆっくり上がろうね。怪我したら莫迦らしいから」
「はいっ」
 両手でしがみつく様に真帆の左手にすがった仁藻が、それこそすり足状態で
歩きながら頷く。
「橋本君は大丈夫?」
「大丈夫です」
 さらさらの髪の毛と、眼鏡。おっとりとした気性がそのまま顔に出た、と称
したくなる少年は、こくん、と頷いた。
「じゃあ、まず石を……ここに置こうか」
「あ、はい」
 白い、丸くつるつるとした石を、少年はポケットから引っ張り出した。階段
の一段目に置こうとして、はた、と手を止め、考え込む。
「……手すりのこっちの上とかは?」
「あ、そうします」
 やはり木製の手すりの一番下部、丁度掌二つ分程度の平らなところに石を置
こう、とした時に。
「こら。何してるかね」
 後ろからかけられた声に、三人共飛び上がった。


「……いやそりゃ、お化け屋敷って呼ばれてるのは知ってるがね」
 きゃああ、と悲鳴を上げて振り返った先で、やっぱりえらくびっくりした顔
をしていた男は苦笑した。
 年齢は50代後半か60代前半。紺色の制服を着て、片手には懐中電灯。そ
の灯りのお陰で、古い木造校舎は先程の怖さを相当に減じている。
「というか、それだから私なんかが雇われて、ここを見て廻ってるわけだけど」
「ああ、成程」
 細長い顔と、どちらかというと痩せ気味の身体つき。少し下がり気味の眉の
せいか、いつも少し笑っているような顔に、今ははっきりと笑いを浮かべたま
ま、警備員という男は説明を加える。
「これだけ古いから誤解されてるんだと思うけど、ここ、結構使われてるんだ
よ。少し先に中学があるだろう?」
「あ、ええ」
「放課後になったらそこから子供達が来て、ここで勉強したりするんだよ。確
かに最近……やっぱりほら、木造だし夏は暑くて冬は寒いから、来る人が減っ
たのは確かなんだけどねえ……しかし」
 何で3人がこうやってここに来たか、は、真帆が説明し仁藻と保鷹が補足し
た。なんてことだろねえ、と、男は暫し慨嘆したものである。
「男の子を男の子達が苛める。まあ、これはあるさね。でもそれで女の子まで
そういう目にあわせるかねえ」
「……ごめんなさい」
「いやいや、お嬢ちゃんが驚くのは普通だよ。そんなこと言われてここに入っ
てきたんだもの」
 はじめは悲鳴を上げて真帆に縋りついた仁藻だが、警備員の言葉と、何より
その表情に安心したのか、すっかりいつもの表情に戻っている。ぺこん、と頭
を下げられて、男は笑った。
「それにしても、女の子にそんな真似をするってなあ……まあ、多分、そいつ
らなら、ここの階段を二階に上がるのが精一杯なんだろうけどね」
 仁藻はちょっと笑うと、真帆を見上げた。路地で真帆が言っていたことと同
じだ、とおかしかったの半分、ほっとしたの半分というところか。
「それで……あの、ご迷惑かとは思うんですけど」
「ああ、この校舎の上まで石を置くってやつだね?」
「あの……宜しいでしょうか?」
「そりゃいいよ。その子らにもちゃんと来て貰って、ここが本当はどういうと
こだか判ってもらわんといかん」
「それなら……いいでしょうか、上に行っても」
「いいけどね。ただ、私も一緒に行くよ?」
「え?」
 先程は仁藻の半分程度の驚きしか示さなかった保鷹が(流石に飛び上がって
振り向くことは振り向いたのだが)、今回は目をまん丸にして警備員を見やる。
眼鏡越しのその目の様子がおかしい、と、警備員はころころと笑った。
「そんな顔するがね坊や。この校舎、夜になると電気をある程度消すんだよ」
「ある程度?」
「うん。帰る時には最後に出る人が消すことになってる。だから、ここに人が
居ない限り真っ暗なんだよ」
 うんうん、と頷きながら、男は懐中電灯を示した。
「壁のボタンを探してるうちに転ばれたらこちらのほうが心配だ。それくらい
ならこの懐中電灯を一緒に持ってったほうが安心だろう?」
「それはそうですけど……宜しいんですか?」
「なあに。いつもの見回りと思えばね」
「有難うございます」
 真帆の言葉に、仁藻はほっとした顔になって、そして保鷹も生真面目な顔の
まま、一緒に頭を下げる。
「じゃあ、行こうかね?」
「はい……ってあ」
「ああ、私はね、竹下って言うよ」
「あ、じゃあ、竹下さん、これ如何ですか?」
 ポケットからキャラメルを引っ張り出して真帆が薦める。男は妙に嬉しそう
に手を差し出した。
「お好きですか?」
「いやあ、何だか久しぶりに食べるなぁ……あ、良かったらあと一つ余計に貰っ
ていいかね?」
「ええ、勿論ですとも」
 キャラメルの箱を大きく開いて、真帆はぽん、と、箱を叩いた。ころころと
転げだした三つのキャラメルを、真帆はそのまま竹下の手に渡した。
「どうぞ。さっき三人で食べたんですけど……何か黒糖とかで、結構美味しかっ
たですよ」
「ほう、変わったのが出てるんだねえ」
 竹下は嬉しそうに一つをつまみ上げ、すぐに紙を剥いて口に放り込んだ。
「うん……うまいね」
 その口調が何とも嬉しげで……仁藻と保鷹が、つられるようににこにこと笑っ
た。
「さあ、じゃあ、こうやってキャラメルも貰ったし……一緒に行こうか」
「御願いします」
 懐中電灯をひょい、と階段のほうに向けて歩き出した竹下の後ろを、三人は
やはりとことことついて歩き出した。
 ぎぃ、と、足元の板が鳴った。


時系列
------
 2007年9月上旬

本文
----
 三人がお化け校舎で出会った人々。その一。
*************************************
 てなもんで。
 しかし、ログが無くて直接書くと、なんかこう……全体に黒々としてますね。
地の文がなんか増殖しまくって、先に進まない……

 続き頑張ります。であであ。
 
 



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