[KATARIBE 31320] [HA06P] Episode :後期初日

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Date: Thu, 6 Sep 2007 11:38:34 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31320] [HA06P] Episode 	:後期初日
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2007年09月06日:11時38分33秒
Sub:[HA06P] Episode:後期初日:
From:Toyolina


[HA06P] Episode:後期初日
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登場人物
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 御厨正樹
 蒼雅紫
 蒼雅渚(旧姓:品咲)


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 吹利大学、後期初日。
 部室棟の一角に創作部がある。
 もっとも、部として公認されているわけではないので、自称、部のサークル
だが。
 部室では、相変わらず部長の御厨正樹がダレていた。
 デレではない、念のため。

 正樹     :「うば〜」
 渚      :「やあ久しぶりー」
 正樹     :「おーす」

 紫と渚の二人がほぼ並んだ状態で入ってくる。
 二人ともほんのりと日に焼けていた。

 正樹     :「ふぅ……」
 渚      :「なんすか、乙女みたいなため息ついて」
 正樹     :「誰が乙女か……第一理由はわかってるくせに」
 渚      :「何が? この夏出会いがなかったとか?」
 正樹     :「出会いは無いっつーか、興味は無かったが」

 出会いに興味がないと明言するあたり、なんとも枯れた男である。

 紫      :「まあ、どうなさいましたの?」
 正樹     :「何か、木下さんと勝負して終わった気がする夏休み……」
 渚      :「勝負? っていうか木下さんて誰」
 正樹     :「んー、先輩と同じ剣術習ってる色々な意味でライバル」

 正樹がいう先輩、とは、剣道部の溥清湖のことだ。
 文学部の三回生なので、どちらかというと、紫と渚の二人の先輩、という方が
立場的には近い。
 以前、ひょんなことから、剣の型を見せてもらったことがあった。

 渚      :「ほー、いろんな意味で。ふーん」
 正樹     :「何だよ」
 紫      :「?」

 正樹が言外に含んだものをあっさり関知する渚。
 もっとも、紫の方はわかっていないらしく、小首をかしげる。

 渚      :「んでその勝負は決着どうなったわけ?」
 正樹     :「一応勝ったけど、どーみてもあれは万全の状態じゃなかっ
        :たなぁ」
 渚      :「へー。その後なんか進展は?」

 訊ねながら、渚は紫に耳打ちする。

 渚      :「恋のライバル出現やって」
 紫      :「まあ」

 以前から、この二人はむやみに仲がよく、よくこうして二人でひそひそ話を
していたが、今回は様子が少し違っていた。
 しかし、正樹はやはり気づいていないのか、気にしていないのか。

 正樹     :「いや、まったく。ちなみに勝負って剣術の勝負な」
 渚      :「いやそんな、この話の流れで、それ以外に何の勝負すんの」
 正樹     :「……無いな」

 改めて注釈を入れるが、会話の流れを読み違えるような渚ではない。

 渚      :「そっか、それは正直寂しい夏やなあ。どっか誘うとか
        :したらよかったのに。ねえ紫」
 紫      :「そうです、折角のおやすみでしたのに」
 正樹     :「いや、そんな。無理無理」

 ぶんぶんと首を振る正樹。
 今の二人からすると、なんともネガティブに映る。

 正樹     :「まぁ、仮に誘ったとして」
 渚      :「して」
 正樹     :「ものすごーく、困惑すると思うんだが」
 紫      :「お知り合いではないのですか?」
 正樹     :「むしろ、知り合いのレベルだと思ってる」

 現状の把握には問題がないらしい。

 渚      :「そこから一歩踏み込むためには、やっぱりなんかお誘い
        :するのが一番やと思うけどなあ」
 正樹     :「うぐぐ……」

 停滞しがちな現状を打破するには、違ったアクションをとってみるのは、や
はり有効だ。おおむね。

 正樹     :「……うぅ、趣味も何にも知らな……って趣味は剣か」
 渚      :「ほら、お誘いする時点で、相手の人選んでるわけやし。
        :ええんちゃうかな、刀狩りやのーて、日本刀屋さんめぐり
        :とか」
 紫      :「剣術を学ぼうとしていらっしゃるならお話をお聞きしたり
        :するだけでも」
 正樹     :「……なるほど」

 手を打つ正樹。

 渚      :「メアドとか聞いてる? 電話番号とか知ってる? あ、
        :あと道場以外やとなにしてはるか、とか」
 正樹     :「……ぜんぜんわかりません……」

 それはちょっとやばいんちゃうか。
 そう言いたげな顔をして、渚が口を開いて、自分たちを例にする。

 渚      :「紫とうちなんてすっごいお話してるのに、ほんとちっ
        :ちゃいことでも。ちょっと剣でわからんことあったら聞き
        :たいんで、よかったらメアドとか教えてもらえませんか?
        :とか言ったらたぶん教えてくれると思うけどなー。嫌われて
        :なかったら」
 正樹     :「……今度聞いてみる」
 紫      :「ええ、がんばってください」

 以前だったら、紫も渚も、なんらかの形でお節介を焼いていたかもしれない。
 じゃあ、先輩にちょっとメールしとくわ、など、具体的なアクションを起こし
たり。
 しかし今は、二人ともお節介はしないことにしているようだった。
 紫と渚が今の状態になるまでは、お互いに支え合いながらも、結局は自力で
なんとかしてきたのだ。
 その結晶の一つとして、二人の左薬指にはお揃いのリングが小さく光っている。
 そして、落ち着いた、穏やかな空気をまとうようになっていた。

 正樹     :「で、その指輪はあれですか。やっぱり」
 渚      :「ん、あ、まだ言ってなかったっけ。一応指輪の意味くら
        :いは知ってたんや、えらいえらい」
 正樹     :「……あまりにもあんまりですが、まぁいいや」
 渚      :「意味わからんし」
 正樹     :「さすがに、そこまで言われると俺も悲しいなと」

 思わずダメ出しする渚。

 渚      :「そっか、でも今の会話は……落第です」
 正樹     :「……がーん」
 渚      :「指輪に気づいたんやったら、聞いてあげんと。今のは
        :気づいて、まあいいや、って投げてるから、相手の子が
        :うちでよかったと感謝する場面」
 紫      :「ふふ」

 ちょっとはにかんで、幸せそうな顔の紫。

 渚      :「怒りっぽい子やったらもうこの部屋から出て行っちゃっ
        :てるよ。うち優しいなあ」
 正樹     :「ワーイ、シナザキサンデヨカッタナー」

 大抵のことは笑って流せる。
 それくらい、穏やかに日々を過ごせるようになっていた。
 紫もそうだ。
 二人の他愛ないやり取りを、こんな風にまた見られるようになるとは、ほん
の少し前までは思ってもみなかった。

 渚      :「改めまして。蒼雅紫の妻でございます」

 少しずつ、この挨拶にも慣れてきた。
 もっとも、言われた側の正樹は、どう応えてよいのか、わからないようだった。

 紫      :「双方のご両親にお許しをいただいたんですよ」
 正樹     :「うわ、すごいなそれは」

 結婚を自称しているとか、駆け落ちしたとかではなく。
 厳密には事実婚だが、祝福されていることは間違いない。

 渚      :「うん、手続きとか面倒やから、大学は前のまんまやけど、
        :別に蒼雅さん、って呼んでくれてもええよ」
 正樹     :「いやこー……名前で呼ぶのもあれかなーと思ってあえて
        :避けてるんだけど」
 渚      :「品咲の方が呼びやすかったらそっちでもええよ別に。時々
        :気づかんかもしれんけど、そんときはもっかい呼んでくれたら」
 正樹     :「むしろ、何て呼んだら良い?」
 渚      :「じゃあ品咲さんで」
 正樹     :「了解」

 呼び慣れた呼び方の方がいいだろう。
 そう思った。


時系列と舞台
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 九月のとある日。


解説
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 リアルでこんな挨拶されたら、やっぱりどう応えていいかわからんと思うw


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Toyolina




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