[KATARIBE 31308] [HA06P] Episode :ランダム小隊・外伝 オワタくんの家庭の事情(中)

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Date: Mon, 3 Sep 2007 16:10:32 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31308] [HA06P] Episode 	:ランダム小隊・外伝 オワタくんの家庭の事情(中)
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2007年09月03日:16時10分29秒
Sub:[HA06P] Episode:ランダム小隊・外伝 オワタくんの家庭の事情(中):
From:Toyolina


[HA06P] Episode:ランダム小隊・外伝 オワタくんの家庭の事情(中)
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登場人物
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 オワタ    http://kataribe.com/HA/06/C/0718/
        悪運が強くて、りまりまのぱんつを毎日拝んでいる高2。
 りまりま   http://kataribe.com/HA/06/C/0717/
        無防備で、えっちな下着を愛用してる高1。


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 正直な話、携帯がなくては、生活が──主にコミュニケーション面で──成り
立たない。
 昨日の今日で、携帯を買いに行く、それ自体は急でもなんでもない話で。
 校門のすぐ横の植え込みの前で、オワタと待ち合わせている。
 割と急いで、友達の追求をかわして、りまりまは小走りで校門に向かった。
 オワタはもう来ていた。
 近くまで小走りで、そして、ふと思い出して、歩いて近寄る。

 りまりま   :「あ、ごめん、お待たせ」
 オワタ    :「おう」

 片手を挙げるオワタ。
 チャイムが鳴って速攻で来たのだが、それにしては、オワタには急いでやっ
てきたという雰囲気はなかった。

 りまりま   :「結構急いできたんだけど……オワタ君早いね」
 オワタ    :「あ……うん、ちょっと」

 前の授業サボってた、とは流石に言えないから、言葉を濁す。
 あまり上手なごまかし方ではないから、りまりまはすぐに、様子が少し変だ
と気づいた。

 オワタ    :「おし、いこーぜ、ショップとか色々あるしさ」

 悟られないように。少し手遅れかもしれないが、努めて明るい声を出す。

 りまりま   :「……あ、うん。そだね。携帯以外もなんか、みてきたいし」
 オワタ    :「そだな、折角出るんだし」

 オワタは笑って応える。
 笑っているのに。その笑顔が遠くにあるように思えた。

 そう感じたのは、間違いじゃないようだった。
 駅までの道すがら、オワタの口数は、明らかに少ない。

 りまりま   :「……ねえ、オワタくん、携帯どんなの使ってるの?」
 オワタ    :「え、ああ……俺のは」

 シルバーの、シンプルで、かなり使い込んだ携帯だった。
 開いてみせると、液晶の画面が結構粗い。

 オワタ    :「あんまし、機能とか使ってねーなぁ……」
 りまりま   :「え、でもあたしもメールとネットくらいしかしてないよ。
        :あと写真。それで普通なんじゃないかな?」
 オワタ    :「そう? ならいいんだけどな、全然使えてないかと思っ
        :てたし」

 ふと、ボタンを押しすぎて。
 着信履歴が表示されていた。さすがに、あまり見られたいものではないが、
のぞき込んでいたりまりまには、表示されている文字が、しっかりと見えて
いた。

 着信:奴

 オワタ    :「……っ」
 りまりま   :「? なんかすごい名前で登録してる。嫌いな人とか?」
 オワタ    :「……あ……これは」

 咄嗟に言葉が出ないオワタ。明らかに動揺している。

 りまりま   :「あ、ごめん、あんまり、こういうの聞いちゃダメだよね。
        :うん」
 オワタ    :「あ、うん……まあ、その」

 お互いに下手なごまかし方で、とりあえずなかったことにする。

 オワタ    :「……い、いこうぜ」

 思わず、りまりまの手を引いて、オワタは歩き出した。携帯を無造作にポケッ
トに突っ込んで。
 少し強引で、無造作。
 ああ、男の子なんだ。
 そう意識せずにはいられなかった。

 駅につくまで、オワタはずっと手を引いたままだった。
 りまりまが、おとなしく引かれたまま着いてくるものだから、無意識の行動を、
自覚するのがだいぶ遅れたようだ。

 オワタ    :「……」

 そういえば……手つなぎっぱなし?
 どこか堅い仕草のまま、振り向いて、すぐ後ろのりまりまと目が合う。

 オワタ    :「あ」

 恥ずかしい。
 慌てて手を離して、そっぽを向いて。

 オワタ    :「えと、ほら、乗るか」
 りまりま   :「……う、うん。そだね。電車何分かな」

 りまりまも恥ずかしかったらしく、そそくさと時刻表を見上げる。

 りまりま   :「あ、あと五分で快速くるよ。これ乗ろ?」
 オワタ    :「おう」

 二人してそそくさと切符を買って、改札を通った。


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 JRで梅田まで。
 最近も、梅田に出たのを思い出した。

 オワタ    :「……こないだはパフェだったよなあ」
 りまりま   :「あ、あのおっきいヤツ。あれすごかったね。……もしか
        :して、また食べたい、とか思ってる?」
 オワタ    :「う……正直カンベン」

 オワタは、二人でパフェをつつく光景を一瞬で想像した。
 さすがに、恥ずかしい。恥ずかしすぎる。

 りまりま   :「量多すぎるもんねー。あのときさっちサンいなかったら
        :無理だったもん。あ、そうだ。今日、晩ご飯とかどうしよう」
 オワタ    :「あ……今日は、俺当番だった」
 りまりま   :「え、じゃ、あんまりゆっくり回れない、っていうか、今
        :日、都合悪かった……?」
 オワタ    :「ああ、だいじょぶ。あいつ塾行ってるし」

 オワタは、ニモは中学受験するから、と付け足した。
 それを聞いて、りまりまは少し安心した。
 昨日、何の考えもなく、携帯を買いに行くのを付き合ってくれと言ったこと
を、少し身勝手だったか、と思ったのだ。

 りまりま   :「そうなんだ。んじゃ、また、お肉……?」
 オワタ    :「……えーと、こないだ豚肉コマだったから」

 今日は豚の肩ロースかな。
 オワタは事も無げに応えた。

 りまりま   :「豚肉かー。お野菜とかあったら、カレーとかもいいよね。
        :明日も食べれるし。今日はさすがに、味足りないかもだけど」
 オワタ    :「……かれー」

 オワタの呟きは、なんとも複雑な声色だった。
 しかし、嫌いな食べ物の名前を口にしたようには思えなかったから、りまりまは
続きを待った。

 オワタ    :「……こう、ジャガイモとかにんじんとか切るじゃん、それ」
 りまりま   :「ん、うん。切るね。あ、もしかして、タマネギとか涙出る
        :からしんどい?」
 オワタ    :「……マジなける」

 フォローになっているかどうか、判らない。
 しかし、タマネギを切るのが苦手だ、というのは少なくとも、ジャガイモの
皮をむくのが面倒だ、というよりはマシに思えた。

 りまりま   :「……よかったら、あたし、作ろっか……?」
 オワタ    :「……え? マジで?」
 りまりま   :「う、うん……慣れてるし……」

 手の込んだ料理を作ろうと思うには、昼過ぎの電話を引きずっていた。
 いくらカレーが楽な料理とはいえ、肉を焼くよりはよほど手がかかる。
 一晩眠れば、明日言われたのなら、まだなんとかなりそうな気がしていたが、
今日は無理だ。
 それを察しているわけではないだろうが、りまりまの申し出はこの上なく、
ありがたく思えた。
 しかし、それに甘えていいのか。
 戸惑いながら、オワタは訊ね返した。

 オワタ    :「……じゃあ、頼んでいい、か?」
 りまりま   :「うん、作っちゃう。じゃ、帰りに材料買ってこ」
 オワタ    :「おう」

 なんとも、身構えることのない、ゆるいノリで、りまりまは快諾した。


----

 デモ機に一目惚れして、りまりまはさっさと新しい機種を決めていた。
 通称、ペンギンケータイ。auの、最後がCAで終わる端末。
 携帯を開くたびに、毎回違うペンギンの絵やアクションが表示される。
 そのペンギンをすっかり気に入ったらしく、店員のお姉さんが説明を始める
前に、これにする、と言い切っていた。
 もっとも、ペンギンの他に、カツオもプリセットされていて、そちらもかな
り、お気に召しているようだった。

 ことあるごとに開いてペンギンの動作を確認するりまりま。
 それにつっこみをいれつつ、画面をのぞき込むオワタ。

 オワタ    :「りまりま、携帯見すぎ」
 りまりま   :「え、え、だってほら、毎回変わるんだよコレ!」
 オワタ    :「でもなんか癒されるなーこれ」
 りまりま   :「でしょー。メールとか、ヤギさんに追い掛けられたりしてー」
 オワタ    :「俺の古いからなあ」

 軽く三年は使っている携帯。
 もちろん、ペンギンは住んでいない。

 りまりま   :「そんだけ使ってたら、ただで機種変更出来るから、壊れた
        :りとかしたら、オワタくんもペンギンにしよーよ」
 オワタ    :「そだなぁ……かなり使い込んでるし」
 りまりま   :「うん、すっごいこれカワイイし、メールとか打ちやすい
        :し……おそろ……お、お揃いとかちょっと、いいかなーって」
 オワタ    :「!?」

 少しかみながら、恥ずかしそうにおそろいなんて口にする。
 思わず赤面するオワタ。

 オワタ    :「お、おそろ、い……あ、うん、いい……かも」

 どきどきしながら、午前中の、クラスでの会話を思い出した。
 嫁。友人がそう呼んだこと。
 逃がすか!と叫んだこと
 絶対離さない、だってー。と、クラスの女子につけられた尾ひれ。

 オワタ    :「そ、そ、そうだな……いいかも」

 お揃いのケータイ。
 なんか、もうラブラブじゃねえ? 彼女みたいだし、アレ、嫁? いや待て。

 オワタ    :(よめ、かのじょ……いや、その、まだ、あの、おれ)

 表情に出ていたのだろうか。小さく吹き出すりまりま。
 りまりまは少し声色を作って、可愛らしく、携帯のボタンを押した。

 りまりま   :「……送信」
 オワタ    :「え?」

 オワタの携帯にメールが届く。
 同じキャリアの携帯なら、電話番号でメールが送れるのだ。
 行きしなに携帯を見ていたときに、りまりまは番号を覚えていたのだ。
 そして、そこにはメールアドレスが書かれていた。

 オワタ    :「あ」
 りまりま   :「新しい携帯で、初メール」
 オワタ    :「……おう、登録、しとく」
 りまりま   :「うん。せっかくだし」

 そうこうしているうちに、帰りの快速は、吹利に着いた。


時系列と舞台
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 九月のとある日。


解説
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 こうして、オワタくんはりまりまの電話番号とメアドをゲットしたのである。


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Toyolina



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