[KATARIBE 31303] [HA06P] Episode :逃走劇と初デート?

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Date: Sun, 2 Sep 2007 21:04:36 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31303] [HA06P] Episode 	:逃走劇と初デート?
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web:	http://kataribe.com/HA/06/P/
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2007年09月02日:21時04分36秒
Sub:[HA06P] Episode:逃走劇と初デート?:
From:Toyolina


[HA06P] Episode:逃走劇と初デート?
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登場人物
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 オワタ    http://kataribe.com/HA/06/C/0718/
        悪運が強くて、りまりまのぱんつを毎日拝んでいる高2。
 りまりま   http://kataribe.com/HA/06/C/0717/
        無防備で、えっちな下着を愛用してる高1。


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 ああやっぱり。いつかこうなるとは思ってた。

 と、オワタは思わずに居られなかった。
 割って入って、りまりまをかばうように立ちふさがる。それはいいものの、
相手は三人。
 ケンカしてどうにかなる人数じゃない。

 一高生A   :「なんだテメエは」
 オワタ    :「なんだよ、やんのか」
 一高生B   :「オレら声かけただけだっつーの」
 オワタ    :「信じられるかよ」

 さっと視線を走らせる。
 幸い、オワタもりまりまも、運動は出来る方だ。
 相手の三人の位置を確認する。

 オワタ    :「りまりま……逃げるぞ!」
 りまりま   :「え、あ」

 とっさに、りまりまの左手をつかんで走り出す。
 二呼吸ほど遅れて、事態を察した一高生の三人が、怒鳴りながら追いかけ始
めた。

 オワタは自ら持って生まれた悪運に感謝しながら、りまりまの手を引いて走
り続けた。
 点滅する歩行者信号を駆け抜けて、鳴り始めた踏切も駆け抜けて。
 十分ほどすると、さすがに向こうもあきらめたのかもしれない、もう追いか
けてきている様子はなかった。

 いつの間にか、商店街の真ん中の小さな公園に来ていた。
 二人して、肩を大きく上下して、ベンチにへたり込む。

 オワタ    :「はぁ……はぁ……ったく……」
 りまりま   :「はー……はー……」

 りまりまが絡まれていた原因は、聞かなくても大体わかっていた、むしろ、
察しがつく。
 本人にその気がまったくないのはわかっている。

 オワタ    :「はぁ……あ、あのなー」

 どうにか声は出せそうだ。
 以前から思ってはいたが、口にしなかった。
 しかし、今日ばかりは言うしかない。

 オワタ    :「てか、あぶねーよ! りまりま!」

 びくん、とりまりまの両肩がはねる。
 続けて、その無防備はヤヴァイ、イロイロと!
 そう言おうとしたところで。

 りまりま   :「う……。ご、ごめんなさい……」
 オワタ    :「いや……その、ごめん……なんというか、こう」

 オワタとしては予想外なことに、素直に謝られた。
 一瞬で毒気を抜かれるオワタ。
 むしろ、しおらしい姿に、どきどきしたりする。

 りまりま   :「普通にしてるつもりだったんだけど……あぶない、かな」
 オワタ    :「……だから、あぶねえんだよ、その……すかーととか、
        :えーーーと、ぶらうすとか」

 りまりま本人にそのつもりがまったくないのはわかっている。
 ボタンを一つ開けたのも、暑かったからだろうし、スカートが短いのも、
その方がビジュアルとしてカワイイからなんだろう、そう思ってのことなんだ。
 でもその無防備さが。
 オワタとしては心配でならなかった。

 りまりまはというと、太ももの上で両手そろえて裾を隠すように座っていた。
 結果として、胸が両側から軽く二の腕に挟まれて、強調する形になっている。

 これだ。
 この無防備さが危ないんだ!

 りまりま   :「えっと……スカート、そんな短い? あとブラウスって
        :……」

 胸元のボタンを一つしめるりまりま。
 その仕草も、オワタの目にはしっかりと映っていた。

 オワタ    :「……いや、その、えーと……ちょっとというか、その、
        :見えそうというか……そういうのは、あぶない」

 身振り手振りをまじえつつ、とにかく危ない、と連呼する。

 りまりま   :「……そ、だね。実際、さっき、危なかったし……」
 オワタ    :「……こう、ああいうの、とか、引っかかるだろ」

 黙ったまま頷くりまりま。

 オワタ    :「……だから、その……」
 りまりま   :「うん」

 もう少し反論したりしてくるかと思っていたから、日頃のりまりまからは
想像できないしおらしさに、さらに動悸が危ういことになってくる。

 オワタ    :「注意しろよ……こう、その」

 一息つく。

 オワタ    :「……遅くなったら、送ってやっから! な!」
 りまりま   :「え」

 まっすぐオワタを見つめるりまりま。

 オワタ    :「……だから」

 その視線を、不意打ち気味に受け止めて。
 赤面しながら続ける。

 オワタ    :「……遅くなりそうだったら言えよ、送ってやっから」

 そして思い出したように続けるオワタ。

 オワタ    :「で、でも、普段からも少し防御とか、その、考えろよな!」
 りまりま   :「う、うん……言う。一緒に帰ろって……う、うん、そっ
        :ちも、考える」
 オワタ    :「……おう」

 しばらくして、りまりまが口を開いた。

 りまりま   :「じゃ、今日から早速。いい?」
 オワタ    :「え? ……あ、おう!」

 いい?の部分が、どこかおねだりするように、上目遣いだった。
 送ってやる、と言った手前。それに、危ない目に遭いかけたその日だし、オ
ワタに断る理由はなかった。


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 カバンを抱えて、ポケットに手を突っ込んで。
 時折歩調を修正しながら、二人は家路を歩いていた。

 さすがに、二人で一緒に帰っているという状況は、何か意識してしまう。

 りまりま   :「……」
 オワタ    :「……」

 しばらく黙ったまま、お互い、話しかけるタイミングを計っていた。

 オワタ    :(黙ったままっつのもなあ、よし)

 りまりま   :「あ、あのさ、オワタくん」
 オワタ    :「そういえばさ、こないだよ」

 同時に口を開いてしまった。

 オワタ    :「……」
 りまりま   :「あ、ご、ごめん……オワタ君、さきしゃべって」
 オワタ    :「あ、いや、その、りまりまからいえよ」

 照れながら、りまりまに譲る。

 りまりま   :「え、えっと、じゃ、じゃあ言うね! さ、さっき気づい
        :たんだけどさ、逃げてる間、いっぱい走ったよね」
 オワタ    :「あ……おう」

 確かに、逃げるのに必死で、どれだけ走ったか、なんてまるで気にしていな
かった。

 りまりま   :「そ、それで、さっき気づいた……って二回言ったけど、
        :気にしないで! それでね。携帯……壊れちゃったみたい」

 胸の前で両手をあわせて。開いたり綴じたりしながら。

 オワタ    :「え!?」

 驚いて足を止めるオワタ。

 オワタ    :「ちょ、見せてみろよ」
 りまりま   :「う、うん」

 逃げてる間に、カバンが壁かどこかにぶつかったようだった。
 カバンにこすり傷があって、その時に、そのあたりに収まっていた携帯が
ぶつかったようだった。

 オワタ    :「あちゃ……液晶割れてる」

 携帯を開くと、プリクラが何枚か貼ってあって。
 その中央には、ひび割れて真っ黒になった液晶が。

 りまりま   :「うん……で、明日買いにいこっかなって思うんだけど……
        :その……」

 ちら、とオワタを見上げる。

 オワタ    :「……おう、おし、つきあうぜ」

 帰りが遅くなっても大変だし、なにより一人で行かせるのも危ないし。
 どこか自分に言い訳しつつ、オワタはりまりまの意図を汲んだ。

 りまりま   :「ホント!? うん、おねがい!」
 オワタ    :「おう、じゃあ明日……梅田にでもでてみるか?」
 りまりま   :「……う、うん……そうしよ」
 オワタ    :「……おう、そうだな!」

 まだしおらしいままのりまりまの口調に、オワタは少しひっかかる。

 りまりま   :「……うん……なんか……」
 オワタ    :「どうしたよ」

 上目遣いでオワタを見て。
 少し視線を外して、りまりまは恥ずかしそうに笑う。

 りまりま   :「え、えっと……ちょっと、デートっぽい? とか思った
        :だけだよ」
 オワタ    :「え”っ」

 デート、デート、デート。
 耳の奥から脳内まで。三文字、発音としては二文字とちょっとくらいの単語が。
 何度も何度も。

 オワタ    :「は、は、はは、ははは」
 りまりま   :「え、ちょ、ちょっと、黙ったりとかなしだって」

 真っ赤になって、少し怒った口調のりまりま。
 そんな彼女も新鮮で。
 オワタの過呼吸は危うい領域に達しそうになった。

 オワタ    :「そ、そ、そ、そう、だな、はは、はは、はは、は、ぶはっ」
 りまりま   :「お、オワタくん? 大丈夫? いまなんかすっごい咽せ
        :たけど」
 オワタ    :「へ、平気平気……ま、まあ、明日楽しみ、だよな、うん」

 平静を装って、努めて呼吸を整える。
 そうだ平常心だ平常心。
 剣道をやっていて、よかった。
 そう思わずには居られない。

 りまりま   :「う、うん……楽しみ。あ。あと、今日のことは……」
 オワタ    :「……ん?」
 りまりま   :「ちゃんと、兄ちゃんたちにもいい感じに言うね」

 ギクリ。
 オワタの背筋に冷たいモノが一筋。

 オワタ    :「……そ、そ、そう?」
 りまりま   :「うん、かっこよかったし……上の兄ちゃんとか、オワタ
        :君のこと見直すと思うし」
 オワタ    :「うえっ」

 前回お邪魔したときの、あの迫力が自然に再生される。

 りまりま   :「大丈夫だって、兄ちゃん、顔怖いけどすっごい優しいん
        :だから」

 そんな兄だが、りまりまにとっては、幼い頃から接し、可愛がってくれてい
る、優しい兄なのだ。
 オワタはそれを信じるしかなかった。


時系列と舞台
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 九月のとある日。


解説
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 こうして、オワタくんは望めば一緒に下校できる権をゲットしたのである。


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Toyolina


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