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Date: Wed, 8 Aug 2007 12:53:25 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31242] [HA21N] 小説『偶然の悪夢・0〜怯える男』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200708080353.MAA71969@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 31242
Web: http://kataribe.com/HA/21/N/
Log: http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/31200/31242.html
2007年08月08日:12時53分25秒
Sub:[HA21N]小説『偶然の悪夢・0〜怯える男』:
From:久志
久志です。
短いけどちょっとだけ投げます。
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小説『偶然の悪夢・0〜怯える男』
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発端
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夜。
街灯にうっすら照らされて藍色に塗りたくったような道路を一人の男が息を
切らせて走っていた。
「はぁ……はぁ……」
まだ若い顔立ちに似合わすうっすら顎鬚を生やし、だらしなく着崩したジャ
ージの上下を着込み、鼻に耳に口元につけられた無数の金のピアスがちかちか
と揺れている。見開いた目が時折背後をうかがうように動き、なおも震える足
で前へ前へと走り続ける。手にした白いビニール袋が跳ねるように揺れて、
中に入れられたペットボトルの水があぶくを立てている。
静かな夜の帳の中、その総てが。
藍色の道路が、ゆらりと伸びた電信柱の影が、近くの民家に停められた車の
窓のむこうが、塀の向こうの曲がり角が。
言い知れない不気味な圧迫感を男に与えていた。
「ひぅ……っ!」
足がもつれ、前のめりになって倒れる。
なおも起き上がって必死に走ろうとするが、走り続けた足はもはや感覚もわ
からない程に疲労しきって、がくがくと小刻みに震えている。
「くそっ」
震える足を叩く。だがどうあっても走り出す体力も気力も残っていない。
顔を上げて何度もあたりを見回す。寝静まった街人の気配はない。男の目の
前には転んだ拍子に投げ出されたビニール袋が落ちていて、中に入ったペット
ボトルが道路に転がっている。
男の目が異様なものを見るようにペットボトルを凝視する。
中に入っているのは透明な……水。
しかし、それはただの水ではなく。
「……」
もう一度、あたりを見回す。
警戒ではなく、様子をうかがうようにあたりの家、道路を見回す。
目がついたのはすぐ傍らの一軒の家。
「これのせいで」
震える手でペットボトルを手に取る。
「これさえなければ……」
そして、サイは投げられた。
時系列
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2007年7月終わりから8月にかけて
解説
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逃げる男。”水”を不法投棄する。事件の発端。
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以上
このにーちゃんが不法投棄した水のせいで、少女が不幸なことに……
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