[KATARIBE 31210] [HA06P] 鬼の霍乱 ( 後)

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Date: Sun, 15 Jul 2007 19:59:46 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31210] [HA06P] 鬼の霍乱 ( 後)
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2007年07月15日:19時59分46秒
Sub:[HA06P] 鬼の霍乱(後):
From:Toyolina


[HA06P] 鬼の霍乱(後)
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登場人物
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 蒼雅紫     風邪をひいた子。女子大生。
 品咲渚     紫の恋人。女子大生。
 蒼雅棗     紫の母。女子高生。


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 今日、泊まっていくことを許してもらおうと、渚は棗の元に向かう。
 紫の部屋にいる頃から、雨音が気になってはいたが、廊下に出たところで、
大変な降りになっているのに気づいた。

 棗      :「まあ……雨がひどいわねぇ」
 渚      :「ほんまですね……」

 すでに、お庭に新しい川が出現していた。
 少し高まった所に蒼雅家はある。
 この分では、道路は水で大変なことになっているだろう。

 棗      :「渚さん、今日はうちに泊まっていったほうが」

 こちらから切り出すより先に、棗が提案した。

 棗      :「お一人で暮らしてらっしゃるのでしょう? お部屋はあ
        :りますし、お布団を用意しますから」
 渚      :「あ、ええんですか? そしたら、お言葉に甘えさせても
        :らっても……ありがとうございます、おばさま」
 棗      :「ええ、お布団用意しますね」
 渚      :「あ、出来たら、夜でも紫の看病できるように……隣のお
        :部屋とかが空いてたら……すみません」
 棗      :「ええ、お部屋はいっぱい開いてますから」

 棗も、渚の甲斐甲斐しさであるとか、控えめな態度が気に入っているようだっ
た。そして、時折うっかり漏れる本音や希望が、また年相応でなんとも可愛ら
しい。

 少し恥ずかしいのか、それとも嬉しいのか早足気味に、紫の部屋に戻る渚。

 紫      :「あ……渚さま……」
 渚      :「紫、今日、泊まらせてもらってくことになったの」
 紫      :「あ……本当ですか?」
 渚      :「うん。だから、今晩はずっと一緒におれるよ。夜中、具合
        :とか悪くなっても大丈夫」
 紫      :「……嬉しい、です」

 外は大雨と風で、大変なことになっているというのに、紫の部屋は、春の日
のように、なんとも暖かい空気が満ちているようにみえる。

 渚      :「お隣の部屋に、お布団用意してもろたけど……こっちに
        :敷いてもええかな?」
 紫      :「いいんですか?」

 もう何度目かはわからないが、再び笑顔の紫。
 渚は手際よく、隣室から布団をもってきて、紫の布団の隣に敷き直す。
 寝間着も用意されていたので、そちらもお借りすることにした。

 まだ、時間は夜九時を回ったあたりだが、紫はこの時間にはかなり眠くなっ
てきているらしい。その分朝が早いのだが。

 並べた布団の中で、紫の手が伸ばされる。渚はその手を握って。二人は並ん
で、顔を向けて、見つめ合って笑った。


 それからしばらく、渚の質問に応える形で、二人は話しつづけた。
 主に、以前に一度だけ、風邪を引いたときの話を。

 紫      :「川を……素手でさかのぼってゆく修行だったのですが……」
 渚      :「すご……そのときなん?」
 紫      :「はい……石にコケが生えていたのですが、それで滑って」

 とんでもない子供時代だ、と渚は正直思った。しかし、愛する人の昔話だ。
渚にとって、色々と興味深い。

 紫      :「にいさまに助けていただいたのですが……そのときに、
        :風邪をひきました」

 少しはにかむ紫。

 紫      :「そのときは、お母様に、手を握っていただいて……眠っ
        :たんです。……今、渚さまに……こうしていただいてる
        :みたいに」

 紫にとっては大切な思い出の一つなのだろう。
 それと同列に扱ってもらえている。胸の奥から、熱さがじわじわと、四肢に
伝わっていくのを感じた。きっと、手のひらも、熱くなってきている筈だ。

 渚      :「すごい修行やなあ、それいくつくらいのときの話……?
        :川とか上ったこと、うちないよ〜」
 紫      :「はい、たしか七つの頃で……その頃は毎日山で過ごして
        :ましたから」

 山に詳しいのはそのせいらしい。

 渚      :「七つ……小1か小2くらいのときかあ……すごいなあ。
        :その頃のうちなんて……」

 いたって普通の、小学校に入り立ての女の子だった筈だ。もう記憶はかなり
薄れて、何があったのかなんて、数えるほどしか覚えていないけれど。

 紫      :「……学校には……通っていませんでしたから」
 渚      :「あれ、そうやったっけ……じゃあ、高校が最初?」
 紫      :「はい……蒼雅の家は、前は……普通の家ではなかったので」

 確かに、今聴いた七歳のエピソードだけでも、まったく普通ではないことは
よくわかる。
 それに第一。今はその姿を失っているが、プリンを守ってくれている呉羽に
したって、元々は紫の霊獣として、魂をつないだ存在だったのだ。

 そう考えると、紫と自分は、本来大変遠い位置に立っていたのだ、というこ
とに思い当たる。

 渚      :「そうなんや……もしかしたら、高校も通わんかったって
        :可能性も」
 紫      :「……はい、にいさまが学校に通うようになって……すごく、
        :楽しそうで……うらやましかったんです」

 紫の兄、巧に感謝しなくてはいけない。
 そう思った。
 今はどこかに出て、なかなか帰ってこない、蒼雅の当主。紫の双子の兄。

 渚      :「そっかあ……それ聞いて、紫が学校行くようになって、
        :ほんまよかった、って改めて思った……学校きてなかった
        :ら、会われへんかったもん」
 紫      :「……はい、私も……学校にいってよかった」
 渚      :「学校行くのが普通って思ってたから、そう考えると……
        :今こうしてられるのって……すごいことやね……」

 運命、と言いそうになって、渚はその単語を引っ込めた。
 出会いそのものは偶然だったかもしれない。
 しかし今こうしているのは……運命なんて、自力の及ばない現象だとは思い
たくはなかったのだ。
 とはいえ、実際に思ってしまった以上。
 恥ずかしかったり、嬉しかったりで、渚は少し赤くなって、はにかんだ。

 紫      :「……はい」

 紫も応えるように、握った手に力を込める。

 渚      :「ね、もうちょっとそっち行って……いい?」
 紫      :「え? はい」

 渚は手を握ったまま、器用に布団の中を横に移動する。

 渚      :「……もうちょっと近くで、紫の顔見たくなって」
 紫      :「私も……渚さまの顔を見てると……安心します」

 だいぶ顔が近い。
 以前には感じたことのない──少なくとも、去年の夏には──、気恥ずかし
さを覚えながら、渚は体を起こして、空いている手を紫の顔に伸ばす。
 額にはりついた前髪をどかして、熱をはかった。


 渚      :「熱、どうかな」
 紫      :「はい、楽になりました」
 渚      :「うん、だいぶ下がってるみたい……よかったあ……」

 心の底から、安堵のため息が出る。

 渚      :「一応、タオルとか交換しとこっか、寝ちゃう前に」
 紫      :「はい……」

 枕に巻いたタオルを換えて、紫の体を拭いて。そしてお布団も、押し入れか
ら出してきて、取り替える。

 布団の境界線をはさんで、手をつないで。
 再び向かい合った。
 紫も、渚もそろそろ眠くなってきていた。

 渚      :「今日は、紫の昔の話聞いたから、今度お泊まりするとき、
        :うちの昔の話してもええかな、ううん、紫には聞いてほし
        :いの」
 紫      :「はい……私もききたいです」
 渚      :「うん、でも、紫のお話みたいに、冒険とかそんなのは全然
        :ないけど……でも、知っててほしいし。うちのこと……好き
        :な人には、全部」
 紫      :「……はい、ちゃんと、聞きます」

 渚の応えは、声にならなかった。ただ、口が少し動いただけで、小さく頷く
のとほぼ同時に、寝息を立てていた。
 紫もつられるように、目を閉じて、眠りに入る。

 まだ、がたがたと雨戸が揺れていて、外は大変な天候らしい。
 しかし、二人の寝顔は大変穏やかで、そんな物音はまったく耳に入っていない
ようだった。


おまけ
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[Toyolina] 膝のけがのこととか、昔つきあってた人のこととか
[Toyolina] でもこの前出てきたバカの話は三秒で終わる予定。なかったことに
      なっている。
[Hisasi]  うむ
[Hisasi]  もう二人の間ではいなかったことにされてる
[Toyolina] これで、ウザがられて振られた話を考えなくてはならなくなった。
      ウヘヘ
[TK-Leana] えらい扱いだ
[Toyolina] だって完璧に忘れられてましたからね、そもそも


[TK-Leana] もうなんかガチレズになってきてますね
[Toyolina] はい
[TK-Leana] 侮れん奴
[Toyolina] ほめられた。えへ。
[H_Aoi]   ゆかりんまっしぐらデスネ
[Toyolina] ゆかりんさんもまっしぐらみたいですよ、すよ

[TK-Leana] あとはもう語り部に居ないキャラはガチホモだけになってしまった
[TK-Leana] ていうか、暫く見てない間にえらいことなってたんですね
[Toyolina] はい。
[TK-Leana] みぎゆかまさき時代から見るともうBADENDにしか見えない。涙が
      ちょちょぎれますよ
[TK-Leana] 本人らが幸せなのでいいのですが。嗚呼、いかん笑い涙で前が
      見えねえ
[Toyolina] 確かにバッドエンド言うたらバッドエンドか。一般的なギャルゲ
      視点で言えば。

[TK-Leana] いや、というか
[TK-Leana] まさきさま視点からいえBA
[Toyolina] 特に意味に違いはない気がしました。
[TK-Leana] いや、あの頃奴は輝いてたからにゃ
[kisito]  ……輝いてた……
[mikeZzz]  まさきさまの今後はおまかせください
[Toyolina] まあ、しゃーない。

[TK-Leana] みぎー視点から見れば一度諦めかけて大逆転なわけで、すごく
      ドラマチック
[Toyolina] その間に愛情分が猛烈に増量されました。
[hari]   障害を乗り越えて結ばれた愛
[Toyolina] ベストカップル賞を狙います
[H_Aoi]   真面目に狙えそうなところがスゲェ
[Toyolina] よく考えたら人気投票部門二位だったんだった。
[Toyolina] 実績がすでにあるw
[mikeZzz]  二人は百合キュア


時系列と舞台
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 2007年7月中旬

解説
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 風邪で弱ってるせいか、ゆかりんさんが、甘えんぼさんです。


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Toyolina


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