[KATARIBE 31189] [HA06P] ヱビスゆかりん

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Date: Sun, 1 Jul 2007 17:20:02 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31189] [HA06P] ヱビスゆかりん
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2007年07月01日:17時20分02秒
Sub:[HA06P] ヱビスゆかりん:
From:Toyolina


[HA06P] ヱビスゆかりん
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登場人物
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 蒼雅紫
 品咲渚


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 紫      :「……はふぅ」

 渚の視線の先には、金色に、慎み深く輝く缶があった。
 YEBISU、そう書かれている。
 ヱビス。ちょっと贅沢なビール。
 紫は、美味しそうにのどを鳴らして、缶に口をつける。
 白い喉が、小さく動く。思わず見入ってしまっていたが、渚はどうにか我に
返った。

 渚      :「ちょ、大丈夫? ……全然のこっとるし」
 紫      :「へうぇぅぁぅ」

 缶の残量を確かめる。まだ半分以上残っている。
 紫は、あまりお酒に強い方ではない。むしろ、すごく弱い。
 ただ、苦手だったりキライだったりはしない。渚が本を見ながら作ったカク
テルを、週末の楽しみにしている程だから、好きなのだろう。

 紫      :「ふにー」

 えへー、と笑いながら、渚の頭を抱き寄せる。
 ふにっと。とても柔らかい感触が、渚の両ほほに。

 渚      :「わ、ちょ、すごい酔ってる??」

 くすくす笑いながら、さらに抱き寄せる紫。
 心拍数が、一気に三桁に跳ね上がる。同時に。
 だんだん、苦しくなってくる。

 紫      :「ふにー」
 渚      :(やらかい! っていうかくるしい!)「もがもが」

 どきどきして、このまま、抱かれていたい気持ちと。
 一刻も早く、逃れないと危ないという危機感が。
 渚の中で激しいつばぜり合いを演じ始めた。

 背中に手を回して、抱きしめようとする両腕。
 紫の両腕をつかんで、離そうとする両腕。

 ちょうど中間地点で、硬直する形になっている。

 ふと、紫の姿勢が崩れる。
 渚の頭を抱きしめたままで、腰掛けていたベッドに倒れ込む。
 引っ張り込まれる形で、渚もベッドに倒れ込んだ。

 紫はそのまま、ううん、となんとも悩ましげに、丸まって眠ろうとする。
 勢いがつきすぎたのか、力加減を間違えたのか。
 ころん、と転がって。

 渚にのしかかる姿勢で、紫はえへへ、と笑っている。
 幸い、抱きしめていた腕は緩んだ。
 渚はどうにか、顔を外に出すことに成功した。

 渚      :「ぷは……」
 紫      :「ふにゃ……渚さまー……」

 身動きがとれなかった。
 酔った結果とはいえ、紫に押し倒されているのに違いはない。
 以前、偶然押し倒されたときは、紫は素面だったけれど、やはり渚は身動き
が取れなかった。

 渚      :「……紫……」
 紫      :「はぁい……えへへ」

 どきどきどきどきどきどき。
 渚は、ゆっくり手を伸ばして、紫の両ほほを撫でる。
 暖かい、むしろ熱い。
 一瞬、そのまま抱き寄せて、くちびるを重ねたい衝動に駆られる。
 しかし、思いとどまった。

 渚      :「……すごく、酔ってるね」
 紫      :「はいっ。ふわふわして、気持ちいいです!」

 満面の笑みで、ぎゅうっと渚を抱きしめる。
 顔にかかる前髪を、耳の後ろに流して。
 渚は、紫をじっと見つめた。

 紫      :「渚さまー」
 渚      :「もう、しゃあないなあ、紫は……お布団かぶって寝よう
        :よ。どうせやったら。風邪引いちゃうかも……」
 紫      :「いーえ。今でも十分、暖かいですっ」

 腕をゆるめてくれそうにない。
 それどころか、ますますぎゅうっと抱きしめてくる。

 渚      :「……うん、じゃあ今日は、もうお休みしよっか。こうやっ
        :て……」

 紫の背中に腕を回して、抱きしめる。

 紫      :「はい……渚さま……」

 語尾と、紫の寝息が綺麗に重なった。
 こうしていると、紫の心臓も、早鐘になっているのが伝わってくる。

 渚      :「おやすみ。大好き、紫」

 紫を全身で受け止めたまま、渚も目を閉じる。
 紫の寝息に合わせて呼吸しているうちに、不思議と落ち着いて、穏やかな気
持ちになってくる。
 寝入る前に、渚は、もう一度おやすみ、と呟いて、紫のほほに口づけた。


時系列と舞台
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 2007年7月


解説
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 発掘ログを整形、書き足し。


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Toyolina 


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