[KATARIBE 31186] [HA06P] おたがいに信じ合って

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Date: Sat, 30 Jun 2007 22:49:49 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31186] [HA06P] おたがいに信じ合って
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2007年06月30日:22時49分49秒
Sub:[HA06P] おたがいに信じ合って:
From:Toyolina


[HA06P] おたがいに信じ合って
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登場人物
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 蒼雅紫
 品咲渚


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 今まで、色々とこらえていた感情を爆発させて。
 正樹の家を出てから数十分。
 渚の家に着いても、しばらく紫は嗚咽していた。

 紫      :「……」

 時折目元をこすりながら。
 少し待っててね、と声をかけて、渚はハーブティを用意した。
 あまり詳しくはないけれど、カモミールとレモングラスを同量で入れるのが
良いらしい。

 渚      :「うん、もうちょっと落ち着いたら、これ飲んで」

 紫の髪を撫でながら、カップを置く。
 そろそろと、カップに手を伸ばすの待って、渚は口を開いた。

 渚      :「……やっと……やっとあいつ、本音言ったよね」
 紫      :「……はい」

 両手でカップを持って、紫は小さく応えた。

 渚      :「まだ、正樹のことは許されへん? まだ怒ってる?」
 紫      :「……悲しかった、です。ひどいと思いました……でも、
        :怒ってなんか、いないのに」

 渚は自分の勘違いに気づいた。
 紫は怒ってなどいなかったのだ。ただ、傷ついていただけ。

 渚      :「うん、そやね、怒ってたのはうちの方……さっきあいつの
        :部屋で言ったの、全部本当……」


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 一度は、二人の間に立って、取りなすことを考えた。
 しかし。
 紫と一緒に過ごす時間が増えるにつれ、しまい込んでいた思いを、抑えられ
なくなっていった。

 渚      :「……でも、本音ぶちまけたら……ちょっと……これくらい?
        :は、前よりは、許してあげてもええかな、って思ったの」
 紫      :「……はい」

 一センチほど、親指と人差し指の間で隙間を作ってみせる。
 
 紫      :「……にらみあいたくなんかない、です」
 渚      :「うん。それに……やっぱり、うちは……紫が辛そうにして
        :たり、泣いたりしてるのって、見たくないの。そういう原因
        :とか、全部うちが……なくしたるって思ってるから」
 紫      :「……大丈夫、です」

 そうすることで、紫の笑顔がより多く見られるのなら。
 紫は、まだ少し目元が赤いまま、にこっと笑う。
 その目元に指先を伸ばして、軽く拭って。

 紫      :「……仲直り、したかったです。みんな一緒の頃は……
        :すごく、楽しかったから」
 渚      :「うん。楽しい方が絶対ええよね。今でも楽しいけど……
        :楽しいの増えるんやったら、絶対増やしたいし……」

 高校三年の一年間は、本当に楽しかった。
 最後の最後で、大変なトラブルがあったけれど……今なら、紫と一緒なら、
どんな状況でも、最後には笑っていられる、そう思える。

 渚      :「ホントに前みたいに出来るかどうかは自信ないけど……
        :ホントは、今でもうちは十分過ぎるくらいなんやけどね。
        :でも、こういうことって、ちょっとくらい欲張ってもええ
        :かな、って」
 紫      :「……はい、だから……少しつかえがとれました」
 渚      :「うん。じゃ、許してあげよっか。最初ぎくしゃくするかも
        :しれんけど……そんときは、うちがちゃんとフォローする
        :から」
 紫      :「はい」
 渚      :「……うん、やっぱり、紫は……笑ってるのが一番。一番
        :かわいい」

 泣き笑いの紫の顔は、まだ目の回りが赤かったけれど、それでも。
 渚は紫を包むように抱きしめる。
 紫もすぐに、渚の背中に腕を回して、抱きしめ返した。

 紫      :「渚さまが……いるからです……」
 渚      :「……っ……ありがとう、紫」
 紫      :「はい……こちらこそ……これからも、一緒です……」


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 二人は、エレベータが来るのを待っていた。
 正樹に会って話してくる。
 そう言った紫は、とてもまっすぐで、しっかりと立っている、そんな印象を
渚に与えた。だから、渚も、ついていく、とは言わなかった。

 渚      :「美味しいカレーのレシピ、この前本で読んだから、カレー
        :作って待ってる。晩ご飯、一緒に食べよ」
 紫      :「はい、もう、大丈夫ですから」

 そういって笑う紫の姿は、先ほど泣いていた時とはまるで違って、とても強
い、芯を感じさせた。

 渚      :「……紫、強くなったね」
 紫      :「いえ、渚さまもです……二人で、二人だから強くなれたん
        :です」
 渚      :「うん……じゃ、行ってらっしゃい、紫」
 紫      :「はい、行って参ります」

 一歩、歩き出して、紫が振り返る。

 渚      :「ん、忘れ物?」
 紫      :「は、はい。うっかりしてまして……」

 とんとん、と歩み寄って、紫が顔を近づける。
 渚も小さく笑って、少し顔を近づける。
 心臓が、五回ほど打ったあたりで、くちびるが離れた。

 紫      :「……行ってきます」
 渚      :「うん、行ってらっしゃい」

 少しはにかんで、手を振る紫。
 渚は、不思議と穏やかな気持ちで、エレベータの閉じる扉を見送っていた。

 寂しくない。
 帰ってくるから、ここに。
 大好きな人が、自分の元に。



時系列と舞台
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 2007年6月


解説
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 全てを信じて委ねられる相手と、一緒にいることが出来るようになりました。


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Toyolina 






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