[KATARIBE 31167] [BZ01P] エピソード:『受け継がれるもの』

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Date: Tue, 26 Jun 2007 19:04:51 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 31167] [BZ01P] エピソード:『受け継がれるもの』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2007年06月26日:19時04分51秒
Sub:[BZ01P] エピソード:『受け継がれるもの』:
From:ハリ=ハラ


ども、ハリ=ハラです。

ざくっと、縁具獲得のEPかいて見ました。

キャラシートも流さないとなぁ

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エピソード『受け継がれるもの』
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登場人物
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霧崎寂空(きりさき・じゃくくう):中洲の医者。
メアリ・アン:寂空の縁具。普段は、病院の看護婦。
老人:死病を患う老人。寂空の患者。


終わる命
--------
 回復魔術の公開は、世界に大きな恩恵をもたらした。
 救われなかった命が救われ、多くの命が繋がれた。
 だが、『多くの命』であり、『すべての命』ではない。
 繋ぐ術の無い命は、やはり確かに存在した。

 老人     :「先生……そろそろですか」
 寂空     :「まぁ、そろそろだね」

 苦しげな息遣いで尋ねる老人に、淡々と答える医者。
 老人は病人であり、繋ぐことの出来ない命であり、そして今まさに終わりを
迎えようという命だった。

 老人     :「……死にたく無い」
 寂空     :「そうかね……」

 老人はそれを知っていた。
 ベッドの脇に立つ医者からそう伝えられており、なにより自分の身体がそう
教えていた。

 老人     :「先生……聞いてくれませんか?」
 寂空     :「なにかね?」
 老人     :「昔話です……」

 老人には身寄りが無かった。
 父母は既に他界していた。
 母は、自分と同じ病だった

 家族は持たなかった。
 自身は病の因子を持つ血統だったから。
 子供にそれを継がせることは耐えられなかったから。

 医者になりたいと思った。
 自身に潜む病に怯えながら生きるのは辛かったから。
 開放され、普通に生きることを夢見たから。

 老人     :「でも、夢見るだけじゃ、どうにもならなかった」
 寂空     :「世知辛い世の中だからね」

 独学で勉強もしたが、勉強には金が必要だった。
 金と知識を縁具に求めたが、借り物の知識ではなにも出来なかった。
 縁具に宿るのは、『過去』だから。
 なにより、そういう縁具は『高価』で。
 自分が手に出来るのは、望むものとはかけ離れた縁具だけ。

 諦めと日々に暮らしに削られ、夢は夢のままで。
 ゆっくりと老人になっていった。

 老人     :「死にたく無いけど……しょうがないやね」
 寂空     :「私には治せないからね」

 入院してからの何度目かの昔話を終えて、ため息をつく。
 誰かに聞いてほしかったから。
 ただ話す。
 覚えて居てくれるかも知れないから。

 寂空     :「言っておくことはあるかね?」
 老人     :「……先生、頼みます」

 なにかを残したいと思った。

繋ぐ縁
------
 老人は死んだ。
 死後の手続き諸々は、病院が行った。
 病室も片付けられ、遺品の始末もついた。

 残ったのは小さな変化。

 寂空     :「メアリ君。その……お茶をお願いできる?」
 メアリ    :「…………」

 看護婦の目つきが鋭くなったこと。

 寂空     :「あ、いや、忙しければ後で良いよ」
 メアリ    :「いえ、すぐに」
 寂空     :(ホッ……まだ慣れないな(苦笑))

 医者のヒエラルキーが少し下がったこと。

 メアリ    :「先生。頂きもののケーキも如何ですか」
 寂空     :「ああ、良いね。少し大きめに……って、待て(汗)」
 メアリ    :「何かありましたか」
 寂空     :「何で何を切ろうとしている……」

 新しい縁具が増えたこと

 メアリ    :「手術刀ですね。切断刀と呼ばれる硬い部位を切除する際
          に使う手術器具です」
 寂空     :「いや、そういうことじゃなくて……」
 メアリ    :「洗浄済みですから問題ありません。切れ味も抜群です」
 寂空     :「食欲が無くなるだろう……」

 ナイフ同様に扱われて来たその縁具は、それでも老人の夢の名残だった。

 寂空     :「病院に来たからには、医療器具らしく扱いなさい。
          まぁ、長年の癖というのもあるかも知れないが……」
 メアリ    :「食欲が無いなら、小さくても構いませんね」
 寂空     :「いや、聞こうよ。話」

 縁具、Hanbury St.
 名前からして、ちょっと曰くありげな手術刀。
 マイペース。
 先代縁主の病死により、医者である現縁主に譲渡される。

老人の残していった、小さな変化。

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