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Date: Sun, 24 Jun 2007 23:49:28 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31144] R:e:[BZ01P] エピソード『大小の黒翼』
To: 語り部 <kataribe-ml@trpg.net>
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輝士都です。
台詞などを修正しました。
まぁ、香はまだまだ未熟ということでw
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エピソード『大小の黒翼』
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登場人物
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永瀬香(ながせ・かおり):居合い少女。小さい掃除屋
鬼島歓子(きじま・かんこ):閑古鳥。大きい掃除屋
ぺったんで何が悪い
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縁主が掃除屋になる理由、それは様々である。
戦いを望む者、金が必要な者。縁主は様々な理由で掃除屋と成りうる。
だが、動機が様々というのは、縁主たちの意思もバラバラという訳で……。
香 :「(何か、やりにくいなあ)」
歓子 :(かち。すぅ。ふううううう)
煙草の煙が、中洲の空に舞い上がる。既に、路上には吸殻の山が出来ていた。
それを作ったのは、艶やかな髪を二つに結んだ少女。どう見ても未成年者だ。
同じく未成年者の香はそれを横目で見つつ、セーラーから伸びた腕を組む。
香 :「(止めたほうがいいのかなあ)」
歓子 :「アンタも吸う?」
香 :「え? いえ、遠慮しときます」
歓子 :「あ、そ」
再びの沈黙。降り注ぐ陽の光が、容赦なく少女二人の頭を焼く。
今回の仕事は、売人の捕縛。少女を薬で操り金を巻き上げるという。
香がこの仕事を請けたのは、義憤の為。少女の敵は、倒さなくてはならない。
だが、相方として現れたこの少女の目的は、全くそういう訳ではないらしく。
歓子 :「早く来ねえかなあ、金づる」
香 :「か、金づるってそんな」
歓子 :「売人退治はワリ良いんだぜ、へへ」
もう何本目になるか分からない吸殻を靴で踏みつけ、歓子はニヤリ笑う。
合わない。香にとって歓子という存在は、嫌なヤツ以外の何者でもない。
その理由は、態度と性格と、そして、決定的な一点。
歓子 :「あー、待ちくたびれたぜ畜生。腰固まっちまったよ」
ぐっ、と腕を伸ばし、歓子はぐるりと腰を回し。
SE :ぼいん。
香 :「(う)」
歓子 :「くう。ひと暴れする前に身体温めとかねえとな」
SE :ぼいんぼいん。
これだから、嫌なのだ。
歓子が身体を振る度、豊かな胸が縦横に、大きく、柔らかく揺れる。
黒のキャミソールに上着。そんな格好では、どうしても目が行ってしまい。
あの揺れは、もしや下着も付けていないのではないか。その余裕が憎らしい。
なぜならば、香は。
香 :「(う、うるさい。ぺったんこで何が悪い!)」
歓子 :「足疲れてきたなあ。ジャンプいっちにいっと」
SE :ぼいーんぼいーん。
香 :「(く、くうううううううううううううう!)」
許せない。何がとは言えないがとにかく許せない。
今にでも縁具を召喚して、この不逞の輩を成敗したい。本気でそう思う。
だが、今は仕事中だ。縁具を出せば売人は逃げる。それは避けねば。しかし。
未だ戦闘も始まっていない。だが、香の精神は追い詰められつつあった。
軽い足音が響いたのは、その時である。
売人 :「やあ彼女。“アイスクリーム”が欲しいって?」
歓子 :「おう。最近ちょっと倦怠でさあ、一発キメたいのよ」
売人 :「大丈夫、これさえあれば一気にイけるからさあ」
ニヤニヤ笑いの売人の視線は、キャミソールから除く胸元に注がれている。
ほら、と手を出す歓子。その手の平に、売人は小さなカップを乗せた。
次は売人が手を差し出す番。歓子はジーンズのポケットを探り、一言。
歓子 :「悪い、今ちょっと持ち合わせねえんだ」
売人 :「おいおーい。じゃあさ、身体で払ってよ」
歓子 :「まあ待てって。金はあいつが持ってるからさ」
売人 :「あいつ?」
香 :「あいつ……て、わ、わたしですか!?」
思わず後ずさる香の存在に、売人はやっと気づく。
売人の蛇のような目が、香のつま先からだんだんと視線を上げていき。
売人 :「チッ、ちっせえな」
たった一言。それが、香のタガを粉々に打ち砕いた。
香 :「……(ぷち)」
売人 :「ん、む?」
香 :「胸がなくて……悪いかああああ!」
裂迫の気合。たじろいた売人の前で、香は手を胸の前にかざす。
広げた掌。そこから勢いよく飛び出したのは、麗美な鞘の居合刀。
売人 :「やべ、掃除屋か!」
歓子 :「おおっと、逃げちゃあ困るなあ」
売人 :「うげ。ちょ、ちょっと待って」
歓子 :「いや、アタシは待ってもいいんだけど」
なあ? と目を向けた先。振り返った売人の目に映る、艶やかな黒い翼。
瞬間。売人の眼前に、白刃が煌いた。
香 :「凛!不逞の輩に制裁を!星火燎原の太刀!」
SE :ざしゅざしゅざしゅ!
売人 :「ぎゃああああああ!」
吹き上がる血。微妙に急所を避けているのがせめてもの幸い。
倒れた売人。その手足に、歓子が慣れた手つきで手錠をかけた。
仕事は終わった。しかし、香の頭は未だ煮えたままなのである。
香 :「男はみんなこんなのばっかりっ、このこの!」
歓子 :「落ち着けよ。世の中ナイチチ好きだってたんまり居るぜ」
香 :「ナイチチっていうなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
冷静さを失った香の刃が、光の速さで歓子へと迫る。
だが、血の代わりに散ったのは、黒々と光る羽根だった。
羽根に勢いを減らされ、逸れる剣筋。次の瞬間、香の額が小突かれた。
歓子 :「落ち着け」
香 :「あ……」
我に返り、香は刃を納める。それを見て、歓子は路上に落ちた上着を拾う。
露になった歓子の背中から生えるもの。それは、香と同じ黒い翼だった。
香 :「黒翼の悪魔、閑古鳥……」
歓子 :「おいおい、今回はアンタの方が暴れてただろ」
香 :「あ、う、ご、ごめんなさい、つい」
歓子 :「ま、羨ましいなら牛乳でも飲んどくんだなあ」
香 :「なッ、何でそうなるんですか!」
歓子 :「おっと、止めとこ。チチ削がれちゃたまんねえ、ウヒヒ」
香 :「(落ち着いて香、居合いは平常心)」
ニタリ。悪鬼の如く笑う歓子に、香はもはや怒る気力もなく。
売人を警察へ放り込んだ帰り、歓子が香に牛乳瓶一ダースを買い与えたのは、
また別の話である。
時系列と舞台
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昼の中洲。
解説
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掃除屋の仕事で共闘する事になった歓子と香。だが、二人には大きな溝が。
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