[KATARIBE 31112] [BZ01P]エピソード『ツギハギ』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Tue, 19 Jun 2007 15:21:00 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31112] [BZ01P]エピソード『ツギハギ』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20070619152100.z0000.naggyfishuho@dj.pdx.ne.jp>
X-Mail-Count: 31112

Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/31100/31112.html

ども、W-zero3より初メールのナギィです。
無事に届くかなと心配しつつエピソード投下!

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
エピソード『ツギハギ』
----------------------
登場人物
--------
 鬼島歓子(きじま・かんこ):金欠掃除屋。小金稼ぎは欠かさない。 
 継剥屋(つぎはぎや):異形の縁結び屋。セールスは欠かさない。

縁結び屋「継剥屋」にて
----------------------
 東中州に古くから建つ映画館の隣。その店はひっそり営まれていた。
 店内に掲げられた無骨な武器、美麗な服、そして雑多な道具。
 中州で名の知られた縁結び屋は、屋号を「継剥屋」と言った。

 カンコ    :「おっす。開いてるか?」
 ツギハギ屋  :「ハアイ、イラシャイマセー」

 暖簾に付けられた鳴子が、カランと来客の存在を告げる。
 一見して古着らしいシャツを着たカンコを、店主が出迎えた。
 にまにま、と笑顔の店主。その顔に、幾筋もの傷跡が生々しく残る。

 カンコ    :「中古売りに来たぜ、ツギハギ屋」
 ツギハギ屋  :「オウ、ありがとですですニャーン」
 カンコ    :「は、はは。相っ変わらず壊れてんのな」

 百戦錬磨の閑古鳥が苦笑する。それほど、彼の要望は異様だ。
 四つに分割された顔、両の腕、脚、丸められた背中。
 その全てに共通するもの。それは、統一感の欠如だ。

 カンコ    :「ツギハギ男の継剥屋、か」
 ツギハギ屋  :「何かおっしゃいましたでゴワス?」
 カンコ    :「いいや。で、これ、幾らになりそうだ」

 どさりと置かれたビニール袋。その中に転がる鉄の槌。
 ふむ、と呟いた継剥男は、重厚な槌を軽々持ち上げ、見遣る。

 ツギハギ屋  :「これは……八千円てところですにょー」
 カンコ    :「ハア? いくら何でも安すぎだろ」
 ツギハギ屋  :「そう言われましても、これ元々当店の商品じゃよ」
 カンコ    :「ておいツギハギ屋、また怨主に縁具売ったのか!」

 声を荒らげるカンコに、彼は全く意に介した様子もない。
 縁結び屋にとって大事なのは、客の素性ではなく、商品の品質。
 その一点において、「継剥屋」は中州で一番の縁結び屋なのだった。

 カンコ    :「チッ、まあいいや。所で、ちょっと話あるんだが」
 ツギハギ屋  :「なんですにょん?」
 カンコ    :「はは……。いやな、服の縁具ないかなと思ってな」

 掃除の度に服を破損するのはキリがない。ならば縁具で代用しよう。
 しかし、それをツギハギ屋に相談するのには一抹の不安もあった。
 そして案の定。彼が奥から出して来た服の縁具とは……。

 カンコ    :「紐?」
 ツギハギ屋  :「いやいや、ちゃんとした服ですにゃん。ほら」
 カンコ    :「ほらって、ンな紐水着、人前で着れるか!」
 ツギハギ屋  :「性能は良いのですがにょー。ではでは」

 再び在庫を探す彼を見て、カンコは憶測が現実に変わった事を知る。
 ツギハギ屋にとって重要なのは、あくまで縁具の『性能』である。
 美的センスは三の次。それを覚悟した彼女の前に、二枚目の服が。

 ツギハギ屋  :「これはどないですか。浴衣でゴンス」
 カンコ    :「お、なかなか良いじゃん。能力はなんだ?」
 ツギハギ屋  :「艶踊といって、この浴衣のみを着て踊る事により」
 カンコ    :「却下」
 ツギハギ屋  :「さいですか。では次にゴー」

 ごそりと在庫を漁るツギハギ屋を見つつ、カンコは頭痛を感じていた。
 彼に足りないのはセンスではない。そもそもの常識が違うのだ。
 次は何を出されるのか。不安は、意外な形で払拭された。

 ツギハギ屋  :「こんなのどうでしょ」
 カンコ    :「お、皮ジャン? かっけーじゃん」
 ツギハギ屋  :「でしょうでしょう。買いますかにゃ?」
 カンコ    :「その前に聞いとこう。こいつの能力は?」
 ツギハギ屋  :「裾を振って、圧風を飛ばせるのですにゃー」
 カンコ    :「なんだ、普通のもあるじゃねえか、それじゃ」

 買う、と言いかけたカンコの脳裏に感じる違和感。
 今までの流れ、そしてこの商品。何かおかしい。出来すぎてる。
 小首を傾げたツギハギ屋の襟。よく見れば、そこに黒い突起物が。

 カンコ    :「ツギハギ屋、そこに何潜ませてやがる」
 ツギハギ屋  :「それは秘密クロスケ君デース!」
 クロスケ   :「初志貫徹しろよ! ……あ」

 気まずい沈黙。延びる手。捕まれる頭。
 引き出されたクロスケの頭が、ミシ、と音を立てた。

 クロスケ   :「ちょい待ち、ギブ、ギブ!」
 カンコ    :「洗いざらい話してくれたら考えるぜ」
 クロスケ   :「いや、マジであの縁具カッケーんだぜ、ただ」
 カンコ    :「ただ?」
 クロスケ   :「ちょっとだけ、胸太る」
 カンコ    :「ちょっとだけ?」
 クロスケ   :「ちょっと……かもしれないててててててて!」

 SE     :ごきゅ。

 沈黙したカラスを胸元に詰め込み、カンコは大きく溜息をつく。
 ちらり。視線を向けた先で、ツギハギ屋がジャンバーを手にしていた。
 オチは聞いた。しかし、確かに、その皮ジャンのデザインは格好良い。
 少し悩み、カンコはがしっと頭を掻いた。

 カンコ    :「とりあえず、取り置いといてくんない?」
 ツギハギ屋  :「了解でゴンス。はい、八千円」
 カンコ    :「あ、そか。ありがとよ」

 渡された千円札。とりあえず、今週の食事代にしようと決め。
 見送る異相に手を振って、カンコは凶相をゆるめるのあった。


時系列と舞台
------------
 昼過ぎ。東中州の縁結び屋『継剥屋』にて。

解説
----
 手に入れた縁具を売りに行ったカンコ。そこで勧められた縁具は……。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
 今回はエロはサブで、縁結び屋のサンプルを示すということで。
 キャラもけっこう出てきましたし、そろそろセッションしたいですね。時間つくろう(^^;
-----------------
sent from W-ZERO3

 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/31100/31112.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage