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Date: Tue, 19 Jun 2007 10:45:25 +0900
From: Subject: [KATARIBE 31110] [BZ01P]エピソード『気の弱い鍛冶屋』
To: 語り部 <kataribe-ml@trpg.net>
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液体窒素です。
前のエピソードで名前だけ少し出てきたマサムラさんと叶で書いてみました。
多少長めなくせに文章力のなさは相変わらずですが、読んでもらえれば幸いです。
登場人物
水夜叶:自称・最高にキュートに掃除屋
八郎丸静:98代目正村
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マサムラカッターとの出会いから1週間後。
相変わらず仕事はなかった。
いや、あったにはあったのだが、未だ実力のない彼女のところにはたいした仕事はこない。
そもそも自称・掃除屋。未だ正式な掃除屋でもないのだ。
叶: 「う〜 お金ない〜 でもあのカッターが夢に出てきて、アタシを誘惑するぅ〜」
自室のソファでクッションを抱きつつゴロゴロする叶。
あの文具店はまず、まけてくれない。
常連である叶すら例外ではない。取るものはきっちり取るお店である。
この気持ちをどーしよー、とさらにゴロゴロを続けていたらソファから転落。
ゴツンと頭を打ったそのとき、天啓のごとく一つの考えが頭に浮かんだ。
叶: 「そだ、実際にマサムラさんに会って、アタシ専用のカッターの刃を作ってもらうように頼んでみればいいんだ!
わ〜 今日のアタシってばカシコイ!」
それでもお金は等しくかかるだろう。
そもそも交通費を考えればよりお金がかかるということは全く考えていない様子である。
が、思い立ったら即行動が信条の叶。
マサムラの名は掃除屋の間では結構知られているおかげで、所在地を探すに苦労はなかった。
叶: 「よし、いざ、行ってみよー」
いつものカバンを下げ、いつもの制服を着た彼女は勇み出陣。
なお、ミキくんがまた嫉妬するといけないで今回は召喚していない。
そうしてあれこれ電車を乗り継ぎ1時間。
叶: 「……ここ?」
叶は人通りの少なそうな小道にそっそりと建っている、どう見ても掘っ立て小屋にしか見えない建物の前に立っていた。
しかし入り口にかかっている看板にはうっすらと「鍛冶・正村」と書いてある。
このまま立っていても仕方がない。
意を決して彼女は玄関の扉を開けた。
中に入るとよく分からないものがあちこちに散乱しており、これまた汚い。
しかし人の姿は見えなかった。
叶: 「あの〜 誰かいませんかー?」
少し大きめの声で呼んでみると、奥の扉が開いて、一人の男性が出てきた。
静: 「す、すいません… ちょっと寝ていたもので…」
第一印象はひょろい人だなー、というもの。
たぶんマサムラさんのお弟子さんか何かに違いない。
叶: 「えと、マサムラさんっていますか?」
静: 「あ、それなら僕です。98代目正村・八郎丸静です」
驚く叶。
鍛冶屋というともっとゴツイ人を想像していたのだけど、98代目正村を名乗った人物は風が吹けば飛んでいきそうな感じである。
しかし正村と名乗ったからには作業を始めると豹変するのかもしれない。
しげしげと眺めていると、静は困ったような曖昧な笑顔を浮かべて
静: 「そ、それで何か用があってきたんですよね?」
叶: 「……あ、そうですそうです。実はこれを作ってもらいたくて」
そう言って、一枚の紙を取り出した。マサムラカッターのチラシである。
静: 「ああ、これは…」
いつかは忘れたが、どこかの文房具屋の店主に新商品の開発に力を貸してくれ! と頼まれて打った記憶ある。
静: 「…これと同じ物を僕に打ってほしいと…?」
叶: 「はいっ! お店に売っていたのは高くて、苦学生には手が出ないんですよぅ〜」
静: 「……ええと、言いにくいんですけど、僕が作るわけですから同じようにお代をいただきますよ…?」
叶: 「ええっ!?」
ごもっとも。
そのことを考えていなかったは彼女の落ち度である。
叶: 「そ、そんな! そこは、そこは何とかなりませんか!?(ずいずい」
静: 「うわっ、ごめんなさい、ごめんなさいっ!」
もっともなことを言ったのに謝ってしまう静。気の弱い性格なのである。
叶:「うぅ… せっかく電車乗り継いでここまで来たのに…」
うなだれる叶。
そんな様子を見た彼は、自分はとても悪いこをしてしまっているのではないか? という錯覚を覚えてしまい、お人よしでもある彼は
静: 「あ… ええと… じゃ、じゃあ特別に打ちましょうか…? せっかく来てくださったんですし、お代はいただきませんので…
で、でもたいしたものにはならないかもしれませんけど…」
叶: 「ほ、ほんとですか!? ありがとうございます! はるばる1時間、ここまでやって来た甲斐がありました!(ずいずい」
静: 「ごめんなさい、ごめんなさいっ!」
感謝されているのに詰め寄られたせいで反射的に謝ってしまう静。どこまで気が弱いのだろう。
彼には叶のキュートな笑顔が効かない、というか見る余裕はないらしい。
対して叶はぴょんぴょん跳ね回って、うっしゃー 、などとガッツポーズまで決めている。
静: 「(ああ、どうして僕はこんなに気が弱くてお人よしなんだろう… お代もいただかずに仕事を引き受けてしまった…
ゲンさんにまた叱られちゃうかな… でも引き受けた手前もう断れないし… うぅ、胃が痛い…)」
胃の辺りを手でさする静。
しかし一応プロらしさをアピールしようとして、痛みをぐっとこらえつつ話を進める。
静: 「それでは一応刃こぼれ等はおこさないと起きますが、念のため刃は2枚打っておきます。
完成には1〜2週間かかると思いますので、住所を教えていただければ送りますが…?」
叶: 「いえ、出来上がったら電話ください。そしたら万難を排して取りにきますからっ!」
静: 「わかりました。それではそのように」
あれこれ話し合った後、叶は満足そうに帰って行った。
なお、彼の予想通りゲンさんに叱られおまけで拳骨ももらうことになるのは、彼が仕事を始めるためにゲンさんを召喚したすぐ後のことである。
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