[KATARIBE 31095] [BZ01P]エピソード『その少女、危険につき』

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Date: Sun, 17 Jun 2007 22:46:13 +0900
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うおおおギリギリ就寝時刻に間に合ったーッ。
ということでナギィです。百縁草子エピソード投下します。えい!

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エピソード『その少女、危険につき』
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登場人物
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鬼島歓子(きじま・かんこ):悪名高き『閑古鳥』。愉しんでる。
眼鏡の青年        :哀れな生贄。怯えてる。

悪魔の行進
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 午後七時。西中州の路地裏。
 域を切らした青年が、足をもつれさせる。

 眼鏡の青年  :「うわ。ひ、ひいい」

 地に伏せ、頭を抱えた青年。
 何をそこまで恐れているのか。その元凶が、影を差す。

 カンコ    :「おいおい、もう終わりかよ」
 眼鏡の青年  :「た、たすけて、タスケテ!」

 声を張り上げる青年に、少女はニタリと悪鬼のごとき笑みを見せる。
 振り挙げられた手。その先には、折れ跡も痛々しい道路標識が一つ。
 折れ歪んだ『通行禁止』の印が示すのは、はたして何の終焉なのか。

 カンコ    :「ちょこまか逃げやがって。もう逃がさねえ」
 眼鏡の青年  :「い、いや、いやだ」
 カンコ    :「ネタあ上がってんだよ。通り魔強盗さんよ」
 眼鏡の青年  :「ち、ちがう、ボクじゃない!」
 カンコ    :「ほう、じゃあ誰だってんだ」
 眼鏡の青年  :「それは、あ、あああああ」

 おかしい。少女が怪訝な顔をしたとき、変化は起こった。
 布の裂ける嫌な音。青年の背が、瘤のように盛り上がった。

 カンコ    :「うげ」
 眼鏡の青年  :「うご、ごぼ、おご、ごほ、う、ウグルゥアアアア!」

 肉が踊る。上半身のみ肥大化した歪な姿で、青年が振り返る。
 鎧のごとき胸板に走る、雷鳴の印。爪まで肉に覆われた手が、胸を叩く。

 眼鏡の青年  :「ウルゥアァァァァァァァア!」

 ずるり。青年の胸から引き出された、歪んだ鋼鉄で出来た槌。
 普通の人間ならば両手でも持ち上げる事叶わない大槌が、片手で浮く。

 カンコ    :「チッ、“崩主”か」
 眼鏡の青年  :「ウグルルルルルル」
 カンコ    :「焦んなよ、今ァ楽にしてやる、へへ。出でよ、羽衣!」

 打ち鳴らされる両の手。その迫力に、青年の動きが鈍った。
 隙を読み、一歩踏み出す少女。だが。

 カンコ    :「あり? 翼あ、出て、ねえ」
 眼鏡の青年  :「グル?」
 カンコ    :「あ、やべ。エロ鳥拾ってくんの忘れた」
 眼鏡の青年  :「グルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウ!」

 猛り叫ぶ青年。振り上げられた大槌が、空を押し潰す。
 瞬間、少女が飛び退く寸前に居た路面が、粉々に砕け散った。

 眼鏡の青年  :「グルァア!」
 カンコ    :「チッ。でもな、接近戦じゃアタシの方が上」

 顔を上げた少女の眼前に迫る、紫色の火花。
 とっさに顔をかばう。その程度の防御しか許されず、少女の足元が弾けた。

 眼鏡の青年  :「グア、グア!」
 カンコ    :「い、て……電撃とか、卑怯だぞ、クソ」

 尻餅をついた少女の羽織ったジャケットに、火の粉がまとわり付く。
 上着を脱ぎ捨て立ち上がった少女の服は黒く焦げ、服の機能を果たせない。

 カンコ    :「畜生、今回もこういうパターンかよ」
 眼鏡の青年  :「ウホ、ウホ!」
 カンコ    :「悦ぶなこの肉ダルマ! 万倍にして返してやる!」

 顔を赤くし、取り落とした道路標識を握ろうとする少女。
 しかし、熱を持った標識は、少女の手を虚しく否定するのだった。

 カンコ    :「うわっち。畜生、何かないか」
 眼鏡の青年  :「ウッホオオオオオオオオ!」
 カンコ    :「うわちょい待て鼻息荒!」

 負けるとヤバイ。そう直感しつつも、少女の腕に武器は無く。
 振り上げられた大槌が、空中で停止する。落下までの瞬間は僅かで。

 カンコ    :「ダメ、か」
 ???    :「ちょおおっと待ったあ!」

 風切音。路上に突き刺さる黒い羽根と共に、一羽の鳥が舞い降りる。
 転げ落ちるように着地した鳥は……まるで、ぬいぐるみのようだった。

 カンコ    :「クロスケ!」
 クロスケ   :「おうカンコ、随分と涼しい格好してるなあ、げへ」
 カンコ    :「う、うるせえ!」
 クロスケ   :「ま、操の危機も命の危機も、この俺様にかかりゃ」

 SE     :がし。
 SE     :ぎゅむむ。

 クロスケ   :「うごご」
 カンコ    :「早く戻れ、時間ねえんだ!」
 クロスケ   :「いやしかし、この谷間の柔らかさをもっと感じて」
 カンコ    :「このエロバカダメ鳥がああああああああああああ!」

 暢気な漫才は、飛来する影により中断される。
 鉄の重圧をもって振り下ろされる大槌。交差した腕が盾になる筈もなく。
 鋼の重圧が命を散らす、その時。

 闇夜の如き黒翼が、少女の身体を包み込んだ。

 眼鏡の青年  :「ヌ?」
 カンコ    :「ギリギリセーフだ、なあ!」

 黒百合が花開くように。槌を受け止めた翼が、それを押し返す。
 跳ねる槌、散り舞う羽。たたらを踏んだ青年に、明らかな隙が出来た。

 カンコ    :「うおら!」
 眼鏡の青年  :「グオ!?」

 青年の顔面に叩き付けられる翼。折れた眼鏡が、遠く飛んでいった。
 混乱する青年の腕を、翼の端が薙いだ。吹き出る血。こぼれ落ちる鉄槌。
 槌を拾おうと、青年は手を伸ばす。その腕が、スニーカーに押しつぶされた。

 眼鏡の青年 :「グアアアアアアアアア!」
 カンコ   :「ダメだなあ。己の縁具は腕が千切れても握ってるもんだぜ」

 ニタリ。再び去来する悪魔の笑み。
 肉に埋もれた青年の顔に浮かぶ恐怖の色。しかし、時既に遅く。

 カンコ   :「覚悟しな。万倍で返してやるぜぇぇぇぇぇぇぇい!」

 それから数十分。路地裏には、骨と肉の砕ける音が響いたという……。

時系列と舞台
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 『閑古鳥の鳴く店』の後。中州の路地裏。

解説
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 弱いものイジメ一直線の閑古鳥。しかし、彼女には決定的な誤算が……。
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というわけで、雷鳴の槌を持つ巨人(不完全体)との戦闘でした。
あんまエロくできなかった、無念(笑)
それでは、また〜。

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