[KATARIBE 30973] [HA21N] ハントサークル 3

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Date: Mon, 23 Apr 2007 15:12:38 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30973] [HA21N] ハントサークル 3
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2007年04月23日:15時12分37秒
Sub:[HA21N] ハントサークル 3:
From:Toyolina


[HA21N] ハントサークル 3
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登場人物
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 部長
 真緒
 巧太郎
 バスカヴィル

 少女


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「使い方はさっき言った通り」

 宮島希愛から"水"を受け取った翌日。三人のたまり場であるサークル室で、
それぞれ一本ずつ。ペットボトルを渡しながら、部長が言いなおした。

「副作用は?」
「一瓶くらいならでないらしい」

 巧太郎の問いに、確信を持って部長が答える。無論、彼は知るよしもないの
だが、副作用──むしろ、本来の作用だ──はある。むしろ、彼らが望む効果
こそが、副作用と言えるものなのだ。
 この水を渡した当人である、宮島希愛はそれを黙っている。知ればこの水を
使おうなどとは、通常は考えないだろうから。いくら彼ら三人が、憐憫を催す
ほどに考えが至らないとしても。

「ふーん、んじゃ早速ためしてみよっか」

 登校前に、ホームセンターで買ってきたばかりの鋸をトートバッグに無造作
につっこんで、真緒が席を立つ。部長と巧太郎が同時に制止した。
 不満そうに真緒が、二人を睨む。

「何すか」
「ノコギリは隠せ」
「っていうかどいつで試すんだ」
「え、今からあの写真の子やりにいくんじゃないの」

 リハーサルが本番に、いつの間にか真緒の中ですり替わっていた。

「いやだからおまえ聞いてなかっただろ。そもそも接近出来ないんだって。
普通に行ったら見失うんだっての」
「……えー、でもぶっつけ本番はやばいっしょ」
「確かに」
「……しょうがない」

 真緒の中で、再度すり替わる。当人も、部長も、巧太郎もそれには気づいて
いない。部長は鞄からw-zero3を取り出す。真緒と巧太郎、二人の間ではでかい
携帯みたいな何か、と呼ばれているが、部長は気づいていない。
 部長自身はw-zero3をそれなりに使いこなしていた。電話としても、PDAとし
ても。中には、秘密のオカルト系SNSで仕入れた、「吸血鬼リスト」が入って
いた。これは、近寄ると危ないという意味合いで、特定メンバーにだけ公開さ
れているものだ。しかし、部長はめぼしい獲物をピックアップするために使っ
ている。

「こいつにすっか。小学生だけど」

 そのページには、それなりに写りの良い写真が添付されていた。ゆるい天然
パーマで、黒目がちのかわいらしい女の子だった。顔立ちが少し異国的で、ハー
フとして通しているらしい。外観年齢にあわせて、小学校に在籍している、と
あった。

「部長、頼むから在学中は捕まんなよ」
「そんときはおまえらも道連れ」
「9歳? それはなんかやる気出てきたよ」

 目を輝かせる真緒。
 あまり小さすぎても泣き叫んでうるさいし、あまり大きくても抵抗されるの
が面倒だ。彼女としては、小学校高学年くらいまでが、獲物としては最適らしい。
 巧太郎としても、小学生というのがひっかかりはしたが、さして考えること
もなく、実行に賛成することにした。

「今1時か……ちょうど下校で捕まえられそうだ」
「じゃ、早速行こう。タクんとこの犬、連れてきてよ」
「またうちの犬使うわけ?」
「バスカヴィルとかそれっぽい名前つけてんだから、いいだろ」

 空恐ろしい名前とは裏腹に、ただの雑種犬なのだが、それなりに利口で、何
度か役に立っている。

「わかったよ、ジャーキーくらい買ってやってよ? 一人一袋な」

 散歩に連れ出す面倒さを思って、巧太郎は不満そうに呟いた。


「アレじゃね」

 少し離れたところに停めた車の中から、真緒が携帯を向ける。
 ゆるやかなウェーブのかかった黒髪、セーラーカラーのワンピースにランド
セルを背負って、女の子が歩いている。掛け値なしの美少女で、十年後が楽し
みだ。軽く鼻歌を歌って、軽やかに歩いている。

「たぶん間違いないな」
「んじゃ、はい。俺とか部長がいくと、それだけで通報されっから」
「イヤ、それはおまえだけだろ、俺はそんなことされるほどうさんくさくは」

 真緒にバスカヴィルのリードを渡す巧太郎。
 バスカヴィルに引っ張られるように、真緒が路地を回り込んでいく。


 三人のたてた作戦は非常にシンプルだった。路地に入ったところで、前方か
ら犬をけしかけ、後方から巧太郎が挟み撃ちにする。それだけだ。声をあげら
れたり、防犯ブザーを鳴らされたら、逃げればいい。

「バウバウバウバウバウバウ!!」
「え?」

 背後から、犬の鳴き声が近づいてくる。
 少女が振り返ると、リードの外れた犬が、全速力で向かってくるところだっ
た。しっぽを大きく左右に振り回し、一直線に。その顔は、テリアの顔で、ど
こか髭をたくわえているようにも見え、ユーモラスにも見えた。実際、周囲か
ら見ても、犬が喜んで子供に走り寄っているように見えるだろう。

「え、あ、わっ」

 牙をむいてはいないから、喜んで走ってきているのは、なんとなくわかった。
しかし、その勢いに、少女はその場で立ちすくむ。

「こらーっ、バカヴィルー!!」

 犬の後方から、飼い主らしい女の人が、かつかつと足音を立てながら、小走
りで追いかけてきている。
 犬は、少女の数メートル手前で跳躍し、少女に飛びかかった。


時系列と舞台
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2の翌日。


解説
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3バカが早速"水"をお試しに。

ハントサークル
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Toyolina 



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