[KATARIBE 30968] [HA06N] 小説『虎回し』

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Date: Mon, 16 Apr 2007 22:37:30 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30968] [HA06N] 小説『虎回し』
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2007年04月16日:22時37分30秒
Sub:[HA06N]小説『虎回し』:
From:久志


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小説『虎回し』
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登場キャラクター
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 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :吹利県警刑事課巡査。ヘンな先輩。おネエちゃんマスター
     :2003年当時、31歳
 寺脇虎雄(てらわき・とらお)
     :ヤクザに雇われてた凄腕用心棒、通り名は牙虎(きばとら)

相羽 〜企みごと
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 携帯を弄ぶ。
 あれから二ヶ月。
 そろそろ頃合、かねえ。怪我も大分よくなった頃だろうし。
 まあ、体の節々という節々にしばらく痛みが残るよう、徹底的に痛めつけて
ある所とかは流石は哂う悪魔の悪魔たる所以というところだろうけど。

「いよう虎ちゃん、元気?」
『貴様……相羽!?』
「調子どお?それにしても、こっぴどくやられたもんだねえ」
『……黙れ』
「ほら、そんな喧嘩腰なんないでよ、お医者さん連れてってあげたじゃん」
『俺に何の用だ、貴様』
「いやあ、なんとなく、ね。虎ちゃん、これからどう生きてくつもりなのかな、
なんてね」
『余計なお世話だ、俺は俺の思うように生きる』
「ほお、言うねえ。でもさ、意地や根性じゃご飯は食べてけないよ」
『……貴様何が言いたい』
「ちょっといいお話、してあげようかなとか思ってさあ」
『いい話だと?』
「あのさあ、虎ちゃん。今の地に落ちた自分の評判でさ、どやって職にありつ
く気?」
『……お前の知ったことか』
「俺、それなりにコネあるよ? 虎ちゃんがそこそこご飯にありつけるだけの
お仕事つけるようにお世話してあげてもいい」
『なん……だと?』
「その代わりさあ、たまに俺の仕事のお手伝いをするってのでどお?」
『貴様! 俺に、警察の犬になれというのか!』
「虎ちゃん、どこの世界はいったってさあ、みんな誰かしらの犬でしょ? 
トップにのぼりつめない限りは、ね。否定できる?」
『……それは』
「俺だってさあ、お国の犬だよ? ヤクザの犬か警察の犬かなんて、本質対し
てかわんないよ」
『……だがっ!』
「だったらさあ、賢く生きようよ。ねえ、虎ちゃん」
『…………』
「今時、警察ってヤクザより怖いよ?」
 電話の向こうでかすかに息をのむ音が聞こえる。
 おやおや、動揺まるわかりだよ。
「悪いこた言わない、長生きしたけりゃ怖いと思ったほうにつきな」
『……それは』
「俺らとヤクザ、どっちが怖い?」
『…………』
 その沈黙は雄弁な答えだね、わかってんじゃん。
「俺についたらさ、大っぴらな悪さしない限りは、少なくとも警察の追っ手は
多少食い止めてあげなくもないよ?」
『しかしっ!』
「……けどさ、ヤクザについたら。俺ら容赦しないよ?」
 また、黙り込んじゃったねえ。ホント素直だね、君。
 もう一押し、かな。
「そいえばさ、虎ちゃん。刀、大事にしてたよね」
『……ああ……俺の魂だ』
「あれ折ったの俺だよ」
『なっ!』
「奴と対峙してた時にさ、ズドンとね。あっけないもんだよ」
『貴様! 俺のっ! 魂をっ』
「たかだか人斬り包丁一本に収まる程度の魂なわけ? 安っぽいね」
『き、貴様!!』
 やれやれ単純さんだね、そんなんじゃどこの世界いったって体よく利用され
るだけだよ? 虎ちゃん。
「あのね、虎ちゃん」
 ゆっくりと優しく諭すように。
「どこの世界にだってね、必ず上には上がいる。俺だってヘボじゃない自信あ
るし、虎ちゃんだってそれなりに腕は立つ」
『…………』
「でも、上には上がいるもんだよ。どこにでもね?」
 これ長生きの秘訣だよ? よく覚えといたほうがいい。
「だからね、俺はさ。いつも慎重に狡猾にずるく卑怯に立ち回る。無謀じゃ、
ないからね」
 言葉を切る。
 電話の向こう、息を呑む音が微かに聞こえる。

 充分に間を取って、そっと囁く。

「虎ちゃん」
『……なんだ』
「よおく、考えな。どっちについた方がいいか」
『…………』
「もっかい言うけど、長生きしたいと思うなら怖いと思ったほうにつきな」
 まあ、もうわかってると思うけど。
「まあ気が向いたらでいいから連絡してよ。悪いようにゃしないから、さ」
『…………』
「いい答え、期待してるよ。じゃあね」

 さあて、後は答えをお待ちしますかね。

時系列と舞台 
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 2003年1月頃 
解説 
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 確実にヤクザよりタチが悪い相羽。
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