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Date: Tue, 20 Mar 2007 15:37:39 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30919] [HA21P] エピソード『強まる澱み』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2007年03月20日:15時37分38秒
Sub:[HA21P]エピソード『強まる澱み』:
From:久志
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エピソード『強まる澱み』
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登場人物
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蒼雅梓(そうが・あずさ)
:蒼雅家長女。御霞の巫女。西条の乱心により負傷。
穂波(ほなみ)
:蒼雅家の霊獣。三本尻尾の狐。蒼雅梓の対。結構好戦的。
安西志郎(あんざい・しろう)
:整体処・解し屋店主。触手使い。
未だ癒えず
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御霞神社、三月も半ば近く。
普段ならば常に浄化され清廉たるはずの社だが、巫女が動けぬことと吹利の
あちこちで起きている水の封の綻びの影響で、微かに空気に混じる澱みを拭い
去れずにいた。
梓 :「……ん」
ようやく起き上がれる程に回復した梓は、一日も早く任に戻るべく身体を慣
らしている最中だった。そっと肩に手を触れる。傷は塞がったもののまだ触れ
た先は熱を持って微かな疼きを感じる。
梓 :「なんとか、いけますかねえ」
背を伸ばして立ち、右手の人差し指と中指とで剣をかたどって、正眼に指を
構える。
息を吸って、止める。
すっと一歩足を踏み出して、同時に伸ばした手を斜めに斬る。
ふわりと、斬った箇所から霧散するように澱みが消し飛び波紋を広げるよう
に浄化が広がっていく、はずだった。
梓 :「……っ!」
軋むように痛む肩を押さえる。
梓 :「……まだ、厳しい……ですね」
その場にしゃがみこんで肩を押さえたまま息をつく。
御霞神社が正常にその浄化の機能を回復する為にはまだしばし時間がかかり
そうだった。
祓い
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御霞神社、境内にて。
動きやすい戦闘用装束に身を包み、穂波は傷を負った肩を軽く動かした。
魂を同じくする対である梓の傷は穂波の傷でもある。だが、かつて戦巫女と
して名を馳せた穂波にとっては多少の疼きは問題にならない。しかしだからと
いって無理をすれば梓の身によからぬことを忘れてはならないが。
穂波 :「……近いな」
すん、と。鼻を鳴らす。
夕暮れ時、黄昏の時。
風に混じって微かに感じる、濁った水を薄めたような……澱みの気配。
穂波 :「先日の件といい、この澱みの濃さはどういうことなのか」
両手で短刀を抜き、胸の前で小さく構える。
ほんの数日前、蒼雅家当主であり御霞神社の守護である巧を浚った者達。
自力で脱出した巧を保護した後、止められていたとはいえ密かに様子を伺い
に行った際。”水”の汚染により異形と化した者を滅することとなった。
穂波 :「なぜ、これほどまでに」
そこで言葉を切って、険しい顔で前を見据える。
ざわざわと風に混じった澱みがその濃さを増していく。
穂波 :「……くるか」
短刀を構えたまま集中する、ざわっと薄茶の髪が泳ぐ。
ふと地面が波立ち、そのまま湧き上がるように何かがでてくる。
穂波 :「小賢しい……」>両手に短刀構えて
ぼろぼろと崩れ落ちながら、おぼろげに人型を作った澱みの塊。緩慢な動き
だが、その腕はそこらのアヤカシとは段違いの力を秘めている。
ゆっくりと腕を振り上げ止める、そのままうって変わって素早い動きで穂波
めがけ手振り下ろす。
寸でのところでバックステップで腕をかわし、両手に持った短刀を胸の前で
構える。
穂波 :「……退けっ!」
刃に一瞬光を帯びて。
振りぬくと同時に白い炎が澱みの人型へと向かって放たれる。
低い呻き声のような音を立て、白い炎に包まれた澱みはその力を失い、元の
土くれへと還った。
穂波 :「ふん」
軽く両手で短刀を振って腰の鞘に納める。
澱みを退けたとはいえ、まだ本調子を取り戻せずにいるのを感じていた。
穂波 :「……梓さまが動けずにいるだけで、これほどに水の澱み
:が活性化するとは」
ふと、背後に感じる気配。
穂波 :「!」
不快な……澱みの匂い。
穂波 :「……おのれ、まだ」
蝶妖 :(ひらひら)
穂波 :「っ!?」
刀を抜こうとした穂波の目の前をよぎる、一羽の蝶。
ふわりと穂波の目の前を通り過ぎ、湧き上がった澱みへとふわっと近づいて。
その長い口を伸ばす。
穂波 :「……あ」
澱み眉間に止まったまま羽根を静かに開閉させながら、吸っている。
穂波 :「…………安西」
蟲を操る技。
使い手の顔を思い出して、何故かわからないがホッとする穂波。
蝶妖 :(ひらひら)
穂波 :「……安西殿、か」
周りに関心などないといった風情で羽ばたきをしながら澱みを吸い尽くし、
土くれに戻った塊に止まったまま動かない。
しばし躊躇したが、例を言うべきと判断し短刀を腰にしまうと止まった蝶に
語りかける。
穂波 :「……安西殿、いるのだろう」
ふわり、と。蝶が舞い上がって穂波の目の前でひらひらと飛ぶ。
そのままふわっと飛び上がると、ひらひら社務所のほうへと飛び去ってゆく。
まるで気まぐれだ、と。普段のなんとも無い表情で答えるかのように。
穂波 :「……あの、男はっ」
感謝しているはずなのに、何故か反発心を覚えてふいと横を向く。
穂波 :「……不可解な、男だ」
飛び去った蝶を見送り、ふと境内を見回す。
穂波 :「……でも、おかしい……梓さまが動けないということも
:あるが、これほどまでに澱みが増えるというのは……どう
:いうことなんだ」
胸によぎる一抹の不安。
その原因を穂波は知る由もなかった。
時系列と舞台
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2007年3月上旬。
解説
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http://kataribe.com/IRC/HA21/2007/03/20070308.html#210000
医院の悲劇の後。澱みを祓う穂波、気まぐれに手伝う安西
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以上
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