[KATARIBE 30911] Re: [HA21P] エピソード『還ってくる者 〜手繰る糸』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Mon, 19 Mar 2007 01:29:32 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30911] Re: [HA21P] エピソード『還ってくる者 〜手繰る糸』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200703181629.BAA27568@www.mahoroba.ne.jp>
In-Reply-To: <200703181533.AAA26526@www.mahoroba.ne.jp>
References: <200703181533.AAA26526@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 30911

Web:	http://kataribe.com/HA/21/P/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30900/30911.html

2007年03月19日:01時29分31秒
Sub:Re:  [HA21P] エピソード『還ってくる者 〜手繰る糸』:
From:みぶろ


ちょいいじり。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
エピソード『還ってくる者 〜手繰る糸』 
====================================== 

登場人物 
-------- 
 片桐壮平(かたぎり・そうへい) 
     :吹利県警巡査。通称・世話焼きギリちゃん。捜査零課専任。 
 当麻漣(たいま・れん) 
     :フリーの退魔士。安西とは西生駒高校時代同級生。 
 真越誠太郎(まこし・せいたろう) 
     :西生駒高校、化学教諭。不治の病の息子を持つ。 

手探り 
------ 

 吹き付ける風が冷たく頬を撫でる。 

 漣      :「冷えますな」 
 片桐     :「まったくじゃな」 

 連れ立って歩きながら、待ち合わせの場の喫茶店にたどり着いた。 

 誠太郎    :「ああ、当麻くん。と……こちらは」 

 かっちり着込んだスーツ姿の男が少し遠慮がちに頭を下げる。 

 片桐     :「片桐と申します、はじめまして。こういうものです」 
 誠太郎    :「は、はい……」 

 心持ち落ち着かない様子で片桐の提示した身分証明を見て、漣に顔を向ける。 

 漣      :「話は通じてますから、先生」 
 誠太郎    :「ああ、うん、わかってる。すまないね、ちょっと緊張し 
        :てしまって。私は西生駒高校の化学教諭を務めております、 
        :真越誠太郎です」 

 何処か緊張した様子を隠せず、慌てたように背筋を正して頭を下げる。後ろ 
暗いという意味ではなく、警察というものに対する緊張や畏怖というものを感 
じている、一般人としてさほど珍しい反応ではないと片桐は感じていた。 

 片桐     :「安西さんから、お話は聞いています」 
 誠太郎    :「はい……」 

 視線を落として、少し苦悩を帯びた顔になる。 
 まるで長年苦しみを積み重ねてきたかのような表情は、一見穏やかで押しの 
弱そうな誠太郎の中にある暗いものを感じさせた。 

 誠太郎    :「それで、あなた方が調べているという傷を持った人達に 
        :ついての、彼が関わっているかもしれない会がありまして」 
 漣      :「…………」 

 ちらりと漣が誠太郎の顔を見る、その会が何たるかを何処か察した風に。 

 片桐     :「ぜひ、お聞かせ願えませんかのう」 
 誠太郎    :「はい」 


灯火 
---- 

 時間流動障害。 
 片桐にとって、まったく聞き覚えの無い病名であることは確かだった。それ 
程に、非常に珍しく……また普通ではないものだった。 

 そしてただ一つ確実なのは。 
 時間流動障害を発症した者は、ひとつの例外もなく時間老衰により若いうち 
にその命を落すということ。 
  
 片桐     :「……灯火の会?」 
 誠太郎    :「はい……最初は、同じ時間流動障害を持つ親たちの会 
        :だったんですが」 

 静かな声、淡々と続ける。 
 喪うことを恐れる者達の集まり。それはいつしか似たような難病で子供を亡 
くした親の会としてその人数を少しづつ増やしていった。 

 片桐     :「そこに、この中嶋が……はいっとったっちゅうことか」 
 誠太郎    :「ええ、私は……数度話に聞いただけでしたが」 
 片桐     :「接触しとるという可能性もあるっちゅうこっちゃな」 
 誠太郎    :「……ええ」 

 机の上にのせられたリストをちらりと見て、漣が顔を上げた。 

 漣      :「先生が脱会してたのはいつです?」 
 誠太郎    :「ああ、一年ほど前に脱会したけど」 
 漣      :「飽きましたか」 
 誠太郎    :「……」 

 一旦言葉を切って息をつく。 

 誠太郎    :「前に進めない気がしたんだ。彼らと居れば話せば、確か 
        :にその辛さを悲しみを共有することはできるけれど、そこ 
        :から動けなくなってしまうんだ。悲しみと辛さに浸るあま 
        :りに……そこから抜け出せなくなってしまう。私は、それ 
        :ではいけない気がしたんだ」  
 片桐     :「……」 
 誠太郎    :「ああ、すいません、つい」 

 慌てて誤魔化すように冷えたコーヒーを啜る。 
 誠太郎の様子を眺めながら、手にしたリストに視線を落す。 

 抜け出せない苦しみ、癒えぬ悲しみ。 
 それこそが付け入る隙。 

 その想いを実現させることができるとしたら。 

 あるいは。 

 片桐     :「ご協力ありがとうございます、真越さん」 
 誠太郎    :「……はい」 


時系列と舞台 
------------ 
 2007年2月初旬 
解説 
---- 
 還ってくる者 http://hiki.kataribe.jp/HA/?Revenant 
 片桐と漣、誠太郎に話を聞く。 
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上。 


 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30900/30911.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage