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Date: Mon, 19 Mar 2007 00:33:50 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30910] [HA21P] エピソード『還ってくる者 〜手繰る糸』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200703181533.AAA26526@www.mahoroba.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/21/P/
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2007年03月19日:00時33分50秒
Sub:[HA21P]エピソード『還ってくる者 〜手繰る糸』:
From:久志
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エピソード『還ってくる者 〜手繰る糸』
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登場人物
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片桐壮平(かたぎり・そうへい)
:吹利県警巡査。通称・世話焼きギリちゃん。捜査零課専任。
当麻漣(たいま・れん)
:フリーの退魔士。安西とは西生駒高校時代同級生。
真越誠太郎(まこし・せいたろう)
:西生駒高校、化学教諭。不治の病の息子を持つ。
手探り
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吹き付ける風が冷たく頬を撫でる。
漣 :「冷えますね」
片桐 :「まったくじゃな」
連れ立って歩きながら、待ち合わせの場の喫茶店にたどり着いた。
誠太郎 :「ああ、当麻くん。と……こちらは」
かっちり着込んだスーツ姿の男が少し遠慮がちに頭を下げる。
片桐 :「片桐と申します、はじめまして。こういうものです」
誠太郎 :「は、はい……」
心持ち落ち着かない様子で片桐の提示した身分証明を見て、漣に顔を向ける。
漣 :「話は通じてますから、先生」
誠太郎 :「ああ、うん、わかってる。すまないね、ちょっと緊張し
:てしまって。私は西生駒高校の化学教諭を務めております、
:真越誠太郎です」
何処か緊張した様子を隠せず、慌てたように背筋を正して頭を下げる。後ろ
暗いという意味ではなく、警察というものに対する緊張や畏怖というものを感
じている、一般人としてさほど珍しい反応ではないと片桐は感じていた。
片桐 :「安西さんから、お話は聞いています」
誠太郎 :「はい……」
視線を落として、少し苦悩を帯びた顔になる。
まるで長年苦しみを積み重ねてきたかのような表情は、一見穏やかで押しの
弱そうな誠太郎の中にある暗いものを感じさせた。
誠太郎 :「それで、あなた方が調べているという傷を持った人達に
:ついての、彼が関わっているかもしれない会がありまして」
漣 :「…………」
ちらりと漣が誠太郎の顔を見る、その会が何たるかを何処か察した風に。
片桐 :「ぜひ、お聞かせ願えませんかのう」
誠太郎 :「はい」
灯火
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時間流動障害。
片桐にとって、まったく聞き覚えの無い病名であることは確かだった。それ
程に、非常に珍しく……また普通ではないものだった。
そしてただ一つ確実なのは。
時間流動障害を発症した者は、ひとつの例外もなく時間老衰により若いうち
にその命を落すということ。
片桐 :「……灯火の会?」
誠太郎 :「はい……最初は、同じ時間流動障害を持つ親たちの会
:だったんですが」
静かな声、淡々と続ける。
喪うことを恐れる者達の集まり。それはいつしか似たような難病で子供を亡
くした親の会としてその人数を少しづつ増やしていった。
片桐 :「そこに、この中嶋が……はいっとったっちゅうことか」
誠太郎 :「ええ、私は……数度話に聞いただけでしたが」
片桐 :「接触しとるという可能性もあるっちゅうこっちゃな」
誠太郎 :「……ええ」
机の上にのせられたリストをちらりと見て、漣が顔を上げた。
漣 :「先生は、入会してたんですか?」
誠太郎 :「ああ、一年ほど前に脱会したけど」
漣 :「理由を聞いても?」
誠太郎 :「……」
一旦言葉を切って息をつく。
誠太郎 :「前に進めない気がしたんだ。彼らと居れば話せば、確か
:にその辛さを悲しみを共有することはできるけれど、そこ
:から動けなくなってしまうんだ。悲しみと辛さに浸るあま
:りに……そこから抜け出せなくなってしまう。私は、それ
:ではいけない気がしたんだ」
漣 :「そうですか」
片桐 :「……」
誠太郎 :「ああ、すいません、つい」
慌てて誤魔化すように冷えたコーヒーを啜る。
誠太郎の様子を眺めながら、手にしたリストに視線を落す。
抜け出せない苦しみ、癒えぬ悲しみ。
それこそが付け入る隙。
その想いを実現させることができるとしたら。
あるいは。
片桐 :「ご協力ありがとうございます、真越さん」
誠太郎 :「……はい」
時系列と舞台
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2007年2月初旬
解説
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還ってくる者 http://hiki.kataribe.jp/HA/?Revenant
片桐と漣、誠太郎に話を聞く。
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以上。
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