[KATARIBE 30896] [HA06P] エピソード『卒業前のアンドロイド騒動 1〜亜美の憂鬱』

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Date: Tue, 13 Mar 2007 11:35:16 +0900
From: Subject: [KATARIBE 30896] [HA06P] エピソード『卒業前のアンドロイド騒動 1〜亜美の憂鬱』
To: KATARIBE ML <kataribe-ml@trpg.net>
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MOTOIです。

「卒業前のアンドロイド騒動」の構想がある程度固まってきたので、
これまでを振り返る意味で、ログをEP化して流します。
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エピソード『卒業前のアンドロイド騒動 1〜亜美の憂鬱』
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登場人物
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 坪井亜美(つぼい・あみ) http://kataribe.com/HA/06/C/0629/
 白神知佳(しらかみ・ちか) http://kataribe.com/HA/06/C/0453/
 橋本桃花(はしもと・ももか) http://kataribe.com/HA/06/C/0466/


昼休みの憂鬱
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 吹利学校初等部、6年3組の教室。

 亜美     :「……はぁ」 

 昼休みの時間となり、他の児童がこぞって外に遊びに行く中。
 亜美は、一人、教室にいた。

 亜美     :「もうすぐ1年……早いもんやなぁ」 

 誰に聞かれるでもなく、呟いては、

 亜美     :「……はぁ」 

 ため息を連発する。



 知佳     :「亜美ちゃん、元気ないけど、どうかしたの?」 

 不意に声をかけられ、驚いて振り向く。
 そこには、クラス一の巨漢少女、知佳が立っていた。
 小学生にして180cm以上(推定)という規格外の大きさに、編入から約1年
経過しても、亜美は未だに違和感を禁じえない。

 亜美     :「え、いや、なんもあらへんよ?」 
 知佳     :「そうなの? 絶対元気ないように見えたんだけどなぁ」

 この少女、巨体の割に神経は細かい。
 それは彼女の長所でもあり、臆病という短所の根源でもあり。
 亜美は、苦笑しながら答える。

 亜美     :「ウチのどこが元気あらへんて? ウチはいつも元気満点
        :やでっ」
 知佳     :「うーん、思い過ごしかなぁ」 
 亜美     :「あんまし人の心配すんなや。体に悪いで」 
 知佳     :「うん、わかったよ」 

 明らかに無理をした笑顔で答える亜美だったが、それ以上の詮索は失礼と感
じたか、知佳はそれ以上触れずに教室を立ち去った。

 亜美     :「……やっぱ言えへんなぁ」

 再び、呟きを繰り返す。

 亜美     :「中学……行きたかったわ……」 

 結局、昼休みの最後まで、亜美が教室から出ることはなかった。


放課後の憂鬱
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 それから、およそ2時間後。

 亜美     :「はぁ……」 

 HRが終了しても、亜美のため息は止まらない。

 亜美     :「……みんなとお別れ、寂しいわ」 

 呟きも止まらない。


 桃花     :「どーしたの、亜美ちゃん」 

 昼休みに続けて、不意に声をかけられた亜美。
 今度の相手は、学級委員長を務める桃花だった。
 さっきの知佳といい、この桃花といい、「我関せず」な児童が多いこのクラ
スにおいて、この二人は特によく他人にお節介を焼いてくる。

 亜美     :「うを、桃花っ」 

 そんな桃花の言葉に、やはり驚く亜美だったが、

 亜美     :「なんもせーへんよ、なーんも」 

 無難な言葉を返し、笑ってごまかす。

 桃花     :「そお?」

 桃花からそれ以上の詮索はない。
 どうやら、さっきの呟きは聞こえていなかったようだ。


 桃花     :「中学かあ」 

 不意に、話題を変える桃花。
 「中学」という言葉に、亜美は微妙に反応するが、桃花は気づかず続ける。

 桃花     :「……なんかまだあんまり実感わかないなあ」 
 亜美     :「中学生やな、もうすぐ」 

 一応、同調する。
 亜美は、心の中で『お前たちはな……』と思っていた。

 桃花     :「でも、みんな一緒だよね」 

 その桃花の言葉に、一瞬どきっとする亜美。
 桃花は続ける。

 桃花     :「なんか変わり映えしないけど、みんな一緒なら……また
        :遊べるし」 
 亜美     :「……」

 桃花の言葉は、偽りのまったくない本音であろう。
 亜美は、そんな桃花に、本当のことを言うことはできなかった。

 亜美     :「また遊べたら……ええな」 
 桃花     :「うん、遊べるよ」 

 偽りのない桃花の言葉に、偽りのない本音で返す亜美。
 たとえそれがかなわぬ夢であっても。

 亜美の視線は、遠くに向けられる。

 亜美     :「……なぁ、桃花」 
 桃花     :「どうしたの?」 
 亜美     :「ウチ、1年しかこのクラスいてへんけど」

 亜美の脳裏には、クラスに編入してから一年間の、様々な思い出が浮かんで
いた。

 亜美     :「みんな、クラスメイトって認めてくれたんかな」 
 桃花     :「当たり前だよ」 

 即答する桃花。

 桃花     :「みんな、なんだかんだいっても、悪い奴いないし」 
 亜美     :「……そっか」

 桃花の言葉には、自信が満ち溢れていた。
 自分よりずっと長くこのクラスでやってきたからこその自信であろう。

 その言葉だけで、自分の存在が無駄でなかったことを証明するのには十分だ。

 亜美     :「……変なこと聞いてごめんな、ほな、ぼちぼち帰るわ」
 桃花     :「ん?そお、じゃあまた明日ね」

 教室を出て、家路に着く亜美。

 亜美     :「ウチ、幸せなロボットや」

 悔いはないんだ、と自分に言い聞かせる亜美だったが、心の奥底にある哀し
みは、どうしてもデリートできなかった。

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