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Date: Tue, 13 Mar 2007 10:40:18 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30894] [HA21P] エピソード『冒涜されし魂』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2007年03月13日:10時40分18秒
Sub:[HA21P]エピソード『冒涜されし魂』:
From:久志
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エピソード『冒涜されし魂』
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登場人物
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宇流盃(うるはい)
:中年。蒼雅を使役するものの一人。
蒼雅西条(そうが・さいじょう)
:霊獣使いの蒼雅家の傍流。精神を病み、乱心し殺された。
逃れられぬ魂
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他界、とも呼ばれる現と理を違える異界。
どっしりした昔風の建物の雰囲気を残しつつも、のっぺりした無機質の素材
とがアンバランスな部屋。
ここに住まう使役者達曰く、『統制室』と呼ばれる一室にて。
うるはい :「……ふん」
自らを使役者と名乗る古き者達の生き残り・宇流盃の手に握られた透明な小
さなビン、中には青白く光る何かが収められている。よく見ると細い紐のよう
なものが絡みつき、微かに痙攣するように蠢いている。
それはかつて蒼雅西条と呼ばれた男の魂。
幼少に負った心の傷から精神を病み、うるはいら使役者による度重なる強引
な調整により精神崩壊寸前まで陥り、挙句に外部の間者に篭絡され主筋である
蒼雅に牙を剥いた、うるはいにとっては唾棄すべき失敗作。
うるはい :「使い道は、なくはないな」
目の前の台にのったものに目をやる。
広い台の上に載った歪な人型。全身干からびたミイラのような体、異様に手
が長くその先端は鋭い爪が伸び、背中から脇にかけて人為的にとりつけられた
ような歪な羽のようなものがはみだしている。
それはかつて霞ヶ池文明と呼ばれたはるか過去の時代に行われた、人体実験
の失敗作の亡骸。うるはいの目の前の台だけでなく、部屋にずらりと並んだ棚
のあちこちに似た様な異形の屍骸がところ狭しと収められている。
うるはい :「さて」
ビンに貼られた札を剥がしてふたを開け、ふわりと浮かび上がるように出て
きた魂を手に乗せる。そのまますっと目の前の亡骸の胸の上に置く。
しわがれ声で、人の言葉では聞き取れない呻きのような音が響く。同時に手
にした魂が淡い光を帯び、亡骸に吸い込まれていく。
落ち窪み暗い空洞があるのみの亡骸の目の奥が光を帯びて、渇ききった身体
が微かに痙攣した。
うるはい :「目覚めよ、西条」
薄ら笑いを浮かべるうるはいが見守る中、全身を震わせながら乾いた音を立
てて亡骸が身体を起こす。
うるはい :「ふむ、まあ、使えなくはない」
軋む音を立てて台から起き上がる亡骸を満足げに眺める。
うるはい :「……把握を急がねばならん。手間をかけさせた分、せい
:ぜい我が僕として働いてもらおう」
生ける屍、再び呼び起こされた西条。その落ち窪んだ目の奥には意識の欠片
も無く。
うるはい :「我が作り上げし蒼雅、手放すものか……決して」
歪んだ笑みを浮かべて、歯軋りを立てる。
時系列と舞台
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2007年3月上旬。
解説
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http://kataribe.com/IRC/KA-06/2007/03/20070307.html#000000
西条の乱の後、巧が戻る前。西条死してなお自由なし。
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以上
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