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Date: Thu, 8 Mar 2007 10:22:04 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30882] [HA06P] パソコン売り場でゆかりん悩む
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200703080122.KAA18275@www.mahoroba.ne.jp>
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2007年03月08日:10時22分04秒
Sub:[HA06P] パソコン売り場でゆかりん悩む:
From:Toyolina
[HA06P] パソコン売り場でゆかりん悩む
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登場人物
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蒼雅紫
品咲渚
パソコン売り場でゆかりん悩む
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吹利市内、とある家電量販店。
二人の女の子が、パソコン売り場をうろうろしている。
渚 :「大学始まったら、毎日パソコン持って歩かなあかんって
:だるい」
紫 :「ぱそこんをもってあるくんですか!?」
四月から晴れて大学生になる、蒼雅紫と品咲渚の仲良しコンビだった。
少々──時折手がつけられないほど──天然の気配がある紫は、パソコン=
デスクトップ機という公式が脳内で成立しているようで、さすがに驚いた表情
を見せた。おそらく、本体を背中に背負って、モニターを目の前に持って、更に
キーボードを首から提げているくらいの想像。
渚 :「うん、レポートとか全部ワードとかエクセルで提出って、
:入学のしおりに書いてあったし」
紫 :「体力がいりそうですね」
渚 :「うん、軽いヤツでも1キロくらいあるし」
紫 :「そんなに軽いんですか?」
軽く驚く紫。
至って一般人の渚にとっては、1キロでも日頃持ち歩くとなると重たいな、
などと考えていたのだが、前述のような想像をしていた紫にとっては、とても
軽いものに思えたらしい。確かに、相対的にはかなりの軽量化を達成している。
渚 :「……って、店員さんがゆってた」
紫 :「でも……全てを持ち歩くのは大変そうですね」
指折り数える紫。渚はまだ彼女のずれた想像に気づいていない。
ノートパソコンなら、本体以外だとACアダプタとマウス(これは人による)
くらいの全3点といったところだが、デスクトップだと、本体、モニタ、キー
ボード、マウス、電源ケーブル2本、の合計5種6個くらいは持ち歩かないと
いけないだろう。
渚 :「あ、うん、結構かさばるっぽい。アダプタとか持ち歩い
:たら」
紫 :「でも……私……ぱそこんをもっていません」
渚 :「うちも持ってへん。買わなあかんみたいよ」
正確には、必須ではなく推奨といったところのニュアンスの文面だったが、
あった方が便利なのは間違いないところ。大学構内は全域無線LANがカバーし
ているし、アカウント自体も当然個人に発行されている。教授や学生課からの
連絡も全てメールもしくはグループウェアでなされるから、それを確認するの
に、いちいち公共端末を使うのは、最初はいいかもしれないが、億劫になるの
は目に見えていた。
紫 :「……どうしましょう、高いのでしょうか」
渚 :「……うわ、高ッ」
二人して値札をみる。
安いもので7万円を少々上回る程度のものから、高いものは40万円近い値札
がついている。
軽量!!などと書かれている小ぶりなノートPCの値段を見て、渚が驚く。
紫はというと。それが高いのかどうか、すこし判断出来かねている様子だっ
た。いかんせんこのお嬢さんは、世間知らずでいらっしゃる。
渚 :「それになんか可愛くない。もっと可愛いのがいい」
紫 :「え? これもぱそこんなんですか?」
渚 :「うん、パソコン。ワークくん……紫ってアレ、ごっついの
:しか見たことない? もしかして。テレビみたいなやつ」
紫 :「はい、学校においてあるぱそこんとは違うのですか?」
渚 :「違う……んかな? 見た目は違うよね、あれは普通置いて
:使うねん」
もっともらしく当たり前のことを語る渚。しかし、紫は真剣にその言葉を聞い
ている。
渚 :「あれ持って歩いてたら、罰ゲームやで」
紫 :「そうでしたか……もって歩くのは大変そうですし」
渚 :「うん、紫やったら平気かもしれんけど、かさばるし、セッ
:トすんの大変。そやでこういうのがいいみたい」
紫 :「……パソコン……できれば丈夫なものが望ましいですね」
真剣な表情で考え込む紫。確かに、壊れやすいものだから、頑丈な方がいい。
渚 :「うん、そやね。壊れるのとか論外。高いし……これ頑丈
:そう」
なぜか店頭展示されている、アタッシュケースのようなノートPCを指さす。
http://panasonic.biz/pc/prod/note/toughbook/index.html
渚 :「取っ手までついてる」
紫 :「わあ、すごいですね」
アタッシュケースを開くと一体化したパソコンが出てきました、くらいのイ
メージで、見るからに頑丈そうに見えた。かなりごつくて、女の子が持ち歩く
ようなものにはとても見えないが。
わあすごいすごい、と物珍しげに観察している紫。渚はパンフレットを手に
とって、まず重量を確かめる。
渚 :「重さ4キロもあるけど……」
紫 :「十分ですね」
あっさり。
なにせ比較対象がデスクトップだし、その容姿とは裏腹に、紫は結構な腕力
の持ち主でもいらっしゃる。4キロくらいは、平気の範疇に入るのだろう。
渚 :「十分? え、めっさ重たいよコレ」
紫 :「でも持ち運びしやすそうですよ」
渚 :「……う、うん、そうやな、取っ手ついてるし」
確かに紫の比較対象からすると十分軽いし、説明してもしょうがないな、と
渚は考えて、取っ手がついていることを理由に無理矢理納得した。
紫 :「がんばってお金を貯めないといけませんね」
渚 :「そやね、それまでは適当に大学のパソコン使ってなんと
:かせんと」
紫 :「……渚さま……その……ぱそこんの使い方を教えてくだ
:さいませんか?」
渚 :「うん、おっけ、ちゃんと教える。安心して」
マウスをモニタに押しつけたり、両手で持って操作していたのを思い出す。
なにより、紫のお願い事を断る理由は、渚には存在しないし、発生もしない。
紫 :「……覚えることが、たくさん、ですね」
少ししみじみとして。
紫 :「慌しいけど、楽しいです」
渚 :「うん、楽しい。校舎もうちょっと違う場所やったら最高
:やったんやけど」
高校とは、道を挟んで向かいに位置している関係上、気分的に一新、という
には少し物足りない感がするのも確かだった。どこか延長線上にあるようで、
それもあって半ば意図的に、新生活の準備をしているのだった。
紫 :「でも、高校とはすごくちがいますね」
渚 :「うん、うちもすっごいワクワクしとる。遠足とか旅行行く
:前みたいなかんじ」
紫 :「はい、渚さまと一緒に」
一緒に、そう言ったところで、誰かのことが頭をよぎる。
振り払うように首を振る紫。
紫 :「……本当、楽しみです」
うなずいて、再確認するように言う紫。
渚はそんな彼女の仕草を見て、気づいてない振りをする。
渚 :「うん、4年間、また一緒やもんね」
紫 :「はいっ」
笑って答える紫。しかし、その笑顔は、普段見慣れた無邪気なものではない。
渚は内心で、その原因についていろいろな怒りを覚えつつ、紫の手をとって、
パソコン売り場を離れるのだった。
時系列と舞台
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2007年3月中旬。
解説
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大学デビューを控えて、準備に余念のないみぎゆか。
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Toyolina
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