[KATARIBE 30870] [HA06P] エピソード『つんで霊がやってきた!』(修正版)

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Mon, 05 Mar 2007 10:23:55 +0900
From: Subject: [KATARIBE 30870] [HA06P] エピソード『つんで霊がやってきた!』(修正版)
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20070305102324.B277.GANDALF@petmail.net>
In-Reply-To: <200703011300.WAA03306@www.mahoroba.ne.jp>
References: <20070228170912.A911.GANDALF@petmail.net> <200703011300.WAA03306@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 30870

Web:	http://kataribe.com/HA/06/P/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30800/30870.html

こんにちは葵でっす。

手直しいただいたのでちょっと修正。
ありがとー、久志さー
************************************************************************
エピソード『つんで霊がやってきた!』
====================================

登場人物
--------

 本宮史久(もとみや・ふみひさ):「昼行灯」、「カミソリ本宮」、「人間重
                 戦車」など数々の異名を持つ刑事。
                 でも、自宅に帰れば1児のパパ。
 http://hiki.kataribe.jp/HA06/?Motomiyafumihisa

 本宮和久(もとみや・かずひさ):朴念仁だがどういうわけかそういう事件に
                 事欠かない不幸弄られ属性を持つ男。
                 花屋店長 如月尊とは告白して正式に付き合い
                 始めた。
 http://hiki.kataribe.jp/HA06/?Motomiyakazuhisa


暑い時期にはコレが憑き物?
--------------------------

 これはまだ和久君と尊が深い中になる前のお話。
 ちょうど暑くなり始めた7月中旬、和久君が研修から帰ってきて落ち着いた頃。

 史久     :「和久、ちょっと」
 和久     :「え、あ、はい」

 デスクで報告書を書いていた和久の肩をつついて目顔で促す。
 史久がこうやって和久を呼び出すときは大抵あまり良いお話ではなかったりす
る。

 和久     :「なんか……あったんですか?」
 史久     :「交通課からの報告でね、まだ曖昧ではっきりと言えない
        :んだけど……どうも何か『出た』らしい」

 休憩室のカップコーヒーを手に並んで腰掛てぼそぼそと。
 午後のパトロールの時間の為か広い休憩室に人影はほとんど無い。

 和久     :「交通課からの報告……?」
 史久     :「ああ、市街地を抜けた国道沿いのバス停横の交差点……
        :覚えないかな?」
 和久     :「バス停横……あ、もしかして」

 ようやく、史久の言わんとしている事を思い出した。
 そう、それはちょうど一年前の今頃。

 キキーッ! ドンッ。
 ――鋭いブレーキ音と重く鈍い打撃音。
 そして、数瞬の後に響くホイルスピンの音。
 降りしきる雨に洗い流される……血。

 和久     :「そういえば轢き逃げ犯人まだ捕まってないんでしたっけ……」
 史久     :「そう、刑事部でも人数を裂いて継続走査してるんだけど、
        :いかんせん物証が少なすぎて難航してるのが正直な所なんだ」
 和久     :「ひき逃げじゃ、化けて出たくもなるよな」
 史久     :「確かに……でも、それで無関係の人が事故を起したりし
        :たら、またそれは困るからね……非番の所、申し訳ないけ
        :ど調査を頼むよ」
 和久     :「判りました、今夜行って見ます」

 で。


生暖かく生臭い風が吹く交差点
----------------------------


 和久     :「たしか、この交差点だな……」

 草木も眠る丑三つ時。
 幽霊と会うには御約束の午前二時。
 繁華街、住宅街を抜けた国道に設けられた交差点。
 元々主要幹線ではないので車の通りも少ないのだが。

 和久     :「ちょっと……静かすぎる……よな」

 車の通りも絶え、不気味に点滅を繰り返す黄色信号と、時折聞こえる虫の鳴き
声以外は静まり返る暗闇の道路。
 和久は来る前に見てきた事故履歴簿を思い返していた。

 一年前の事故当日は雨。
 被害者は部活で通りかかった女子高二年生、幾田桃子さん。
 部活で遅くなった彼女は交差点で何者かに轢き逃げされ、約二時間後に発見。
 雨の日で、しかも夜遅くだったために手当てが遅れ、懸命の手当てもむなしく。

 和久     :「こんな道路で轢かれたんだ……可愛そうに……」
 ??     :「そうよ、痛かったんだから……」
 和久     :「そうだよね、痛かっ……どうぇああっ!?」

 突然、耳元で囁かれた声に思わず3メートルばかりとびづさる。
 あたりに人の気配は無かったはず。
 だが。

 ??     :「あれ? お兄さん、あたしの声聞こえるの?」

 聞こえるのも何も。
 とびづさった和久の目には、紺スカートに白いセーラー服の少女が飛び込んだ。
 クリクリと動く眼と細いながらもキリッと吊りあがった眉、ジャギーの入った
ショートカットが活発そうな印象を受ける。
 その顔立ちはまさしく。

 和久     :「……び、ビックリした……もしかして、幾田……桃子さん?」
 桃子     :「え? も、もしかして、もしかして見えたりもする?」

 あたしが? と自分を指差す少女、桃子ちゃんに和久は頷いて見せる。
 和久の答えに途端に嬉しそうな笑顔が浮かびかかったが、慌てて顔を引き締めて。

 桃子     :「コホン……うーらーめーしーやー」

 一応、精一杯恨めしそうな怖そうな表情を作るのだが。
 なんと言うか、先に驚いちゃったので怖がるタイミングを逸してしまって。

 桃子     :「……」
 和久     :「……えっと……」

 見詰め合う二人の間にビミョーに気まづい空気が流れる。
 で。
 じわっと、眼に涙が浮かんできたと思ったら。

 桃子     :「な、なにようっ! ちゃんと怖がってくれなきゃダメじゃ
        :ないっ! せっかく一年間雨の日も風の日も我慢して、やっと
        :化けて出られるようになったから、脅かしまくってウラミ晴
        :らそうと思ったのにっ この間初めて脅かした人なんか、あ
        :たしが『うらめしや』ってせっかく言ったのに聞こえないのか
        :見当違いの方みてるし、その次の人なんかあたしを見ただけ
        :で逃げちゃうし……
        :なによ! なによっ! 見ただけで逃げるなんて、そんなに
        :あたしの見た目が酷いって言うのっ!?」

 いや、だんだん話しが変わってるし。
 うーっ、と眼に一杯涙ためながらマシンガンのように喋り捲る桃子ちゃん。
 元気な幽霊である。

 桃子     :「どうせ……どうせ……あたしは半人前の幽霊ですよ、見た
        :だけで逃げられちゃうような……」

 一方的に喋り捲った挙句、あーあ泣き出しちゃった。
 でも、見ただけで逃げられちゃうのは一人前だと思うんだが。
 それはさておき。

 和久     :「わっ、ごめ、ちょ、弱ったな……その、あのね……」
 桃子     :「なによう(じろ)」

 涙目で、見上げ目線で。
 ちょっと拗ねた顔は反則で。

 和久     :「(どきっ)その、なんだ……十分、可愛いと思うよ?」
 桃子     :「え?(きょとん)」

 一瞬、何を言われたかわかんなくてボーっと和久の顔を眺めていたが。
 理解した瞬間。

 桃子     :「な、なによっ、そんなこと言ったって、誤魔化されないん
        :だからっ」

 わたわたわたと、それでも嬉しそうなのは隠せなくて。

 和久     :「とにかく、手当たり次第に通りかかる車をおどかすのは止
        :めてもらえないかな」
 桃子     :「いや」

 アッサリ即答。

 和久     :「轢き逃げされて恨みがあるのは判るんだけど、関係ない人
        :達だし、ね?」
 桃子     :「いーや、ぜったい嫌、だってそれじゃあたし轢かれ損じゃ
        :ない、それともなに? お兄さんが身代わりになってくれる
        :とでも言うの?」
 和久     :「え?(汗)」
 桃子     :「あ、それいい! そーしよ、あたしお兄さんに取り憑いて
        :取り殺してアゲル」

 いや、それ微かに頬染めて、ニコニコ笑いながら言う話じゃないんですが。

 和久     :「ちょっ、それはっ(後ずさり)」
 桃子     :「ふふふふふ……覚悟して頂戴」
 和久     :「わーーーーっ(汗)」

 で。

 和久     :「ええと、いつまで肩にのってるのかな(汗)」
 桃子     :「ふん、そんなのあたしの勝手でしょ? お兄さんに取り付
        :いたんだから一緒に行くのは当たり前、だったら移動は楽な
        :ほうがいいに決まってるじゃない」

 結局、和久の説得には応じてもらえず、一旦帰るという和久の肩に『取り憑く
』という名目の元、ちょこんと腰掛けてたり。

 和久     :「ええと、うん。 とりあえず俺は帰宅するんだけど……(汗)」
 桃子     :「帰れば良いじゃない、あたしはお兄さん取り殺すんだから、
        :くっついて行くわよ。 別にお兄さんの部屋に行きたいなん
        :てこれっぽっちも思ってないんだからっ勘違いしないでよねっ
        :あたしは……このままずーっと取り憑いて取り殺してあげる
        :んだからっ、朝から晩までずーっと傍で祟ってあげるんだか
        :らっ(怖くない顔で精一杯凄んでみせる)」
 和久     :「……うーん(あまり怖くないんだけど)」

 そりゃそうである。
 和久の肩にちょんと腰掛けて、聞こえないと思ってるのか小さな声で「おっで
かっけっ♪おっでかっけっ♪」なんて鼻歌歌ってりゃ。

 桃子     :「見てなさいよぉ……あたしが憑いてたら飛んでもないこと
        :起きるんだからっ」

 さも怖そうに凄んで見せるが。
 元が可愛いだけに。
 迫力が……微塵も無かったり。

 桃子     :「まず、お茶を入れたら茶柱が立たなくなるでしょ(指折り)
        :電車に乗ろうとしたら寸前でドアが閉まるでしょ(指折り)
        :閉めようとしたドアに足の小指ぶつけるでしょ(指折り)
        :他にも……(えーとえーと)」
 和久     :「……随分微妙なラインだと思うんだけど……」

 取り殺すってレベルでは無い事は確か。

 桃子     :「なっ、なによー怖くないっていうのっ(真っ赤な顔で目に涙一杯)」
 和久     :「あ、ええと、うん、怖いよ。 そんな顔しなくても(汗)」
 桃子     :「(ぐすっ)……ほんと?(上目使いでぢっと)」
 和久     :「うん、ほら泣かないで(汗)」
 桃子     :「ぅぅ……(赤面)……ぜったいっ祟ってあげるんだからっ
        :(精一杯恨めしげな顔)」
 和久     :(これは、未練がなくなるまで、この世に置いておいてあげるほうが
        :いいのかなぁ……実害は無いみたいだし)

 何となく、先ほどからの会話で無理に成仏させたり除霊するのはちょっと……
と思い始めた和久君。
 情が移ってきたようである。
 だが、和久はこの時すっぱりこんと忘れていたが、一つあったのである。
 『大きな実害』が。

時系列
------

 2006年7月中旬。

解説
----

 やっちまったw。
 単発ログで埋もれさせるにはあまりにも惜しかったのでつい。

$$
************************************************************************

---
葵 一<gandalf@petmail.net>


 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30800/30870.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage