[KATARIBE 30854] [HA21P] 滅んだ姉と守った姉

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Date: Tue, 27 Feb 2007 11:55:44 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30854] [HA21P] 滅んだ姉と守った姉
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2007年02月27日:11時55分44秒
Sub:[HA21P] 滅んだ姉と守った姉:
From:Toyolina


[HA21P] 滅んだ姉と守った姉
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登場人物
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 甚三紅   姉妹の三女。医院内ヒエラルキー最下位 つд`)
 焦香    姉妹の五女。医院内ヒエラルキー最上位。でも影薄い。
 白橡    姉妹の六女。医院内ヒエラルキー真ん中。

 淡蒲萄   姉妹の長女。医院には居ない。
 月白    姉妹の二女。滅んでいる。


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 半年ほど前。裏葉柳医院。
 まったくもって庶民的な、裏葉柳医院の食卓。
 普通のご家庭と特に変わったところはない。
 食後のお茶が輸血パックになってるくらいなもので。
 あと、おかずは何故か刺身が多い。それくらい。

 白橡     :「ねー、なんで淡蒲萄姉はここ住まないんだろうね」
 焦香     :「なんでって、あんたしらねーの?」
 白橡     :「いや、知ってるけどさあ。それとここ住む住まないって
        :別問題じゃんね」
 甚三紅    :「なに、お姉ちゃん二人だけじゃ不満?」

 黙って、甚三紅の皿から鮪を三切れもっていく白橡。子供扱いされたのが、
かんに障ったらしい。
 泣きそうな顔の姉に、焦香は自分の鮪を一切れわけてやる。

 白橡     :「不満とかじゃないけど、淡蒲萄姉だけズルい、ってたまに
        :思う」
 焦香     :「ズルいもなんもねーだろ、どこがズルいのか言ってみろよ」
 白橡     :「え、自分だけ一人暮らしだし、好き勝手出来るし」
 甚三紅    :「淡蒲萄は特別だからね、ガマンしなさい」

 最後の鮪を食べ終える甚三紅。

 白橡     :「それがなんか納得出来ないっていうの。淡蒲萄姉が特別
        :なのは解るけどぉ。じゃあなんで、あたしは特別じゃないん
        :だって」
 焦香     :「そんなこと、お父様に聞くことじゃね? あんまりお姉
        :ちゃんいじめんなよ」
 白橡     :「最初に特別だって言ったのモミ姉じゃん」

 そう言われてはかばいようもない。
 焦香も仕方なく甚三紅をみる。

 甚三紅    :「……事実を述べただけなんだけどなあ」

 ちゅるちゅる。B型RH-の血液をグラスにあけて、ストローで吸う。

 白橡     :「お父様の最初の娘ってだけで特別扱い?」
 焦香     :「そんな言い方はないだろバカ白」
 甚三紅    :「それだけじゃないって」
 白橡     :「じゃあ、ほかの理由ってなんなの」

 グラスを置いて、口元をナプキンで拭う。

 甚三紅    :「あたしらは、お父様の娘だよね。でも、淡蒲萄はそれだけ
        :じゃないから」
 白橡     :「意味わかんね」
 焦香     :「白はホントバカだな」
 白橡     :「バカにバカって言われたくねぇ」
 甚三紅    :「最初の娘だもの、お父様が淡蒲萄に求めたのは──あたしら
        :みたいに、娘としての役割だけじゃないってこと」

 甚三紅    :「一番大きいのはきっと、パートナーとしての役割じゃない
        :かな。次は──自分の代わり」
 白橡     :「……何ソレ、生まれたのが早いからってこと? それだっ
        :たら、どうしようもないじゃん」
 焦香     :「まだそんなこと言ってんの?」
 白橡     :「そんなの、淡蒲萄姉が特別扱いされる理由になんない」

 ふくれる白橡。
 特別扱い、ととれるかもしれない。
 確かに淡蒲萄は、父の持つ殆どの能力を与えられている。淡蒲萄とその他の
姉妹とは、その力の程度について、明確に違っているのだった。

 甚三紅    :「月白のこと、忘れた訳じゃないでしょ」

 二年ほど前に滅んだ、姉妹の二女の名を出す甚三紅。

 甚三紅    :「あのとき、お父様は不在で」
 白橡     :「……」
 甚三紅    :「淡蒲萄が居なかったら、あたしらもどうなってたことか」
 焦香     :「昼間の話だったしね」

 二女の滅びはあまりに突然の出来事だった。
 事態の収束も然り。これは淡蒲萄の反撃が素早かった所為でもあるが。

 甚三紅    :「淡蒲萄は一番上だから、なんかあった時に──お父様の
        :代わりをやんなきゃいけない。ま、性格の向き不向きもある
        :けど。あたしなんかはそういうの向いてないし」
 白橡     :「……」
 焦香     :「淡蒲萄姉ちゃんも結構いろいろ押しつけられてんだよ、
        :ああ見えて。性格あんなんだから、気にしてなさそうだけど」

 小さくうなずく白橡。
 長女の立場を理解したのか、性格について同意したのかは定かではない。

 甚三紅    :「特別でいたいって気持ちは解るけど、何もなかったら、
        :普通が一番だよ。あ、白、お代わり要る?」
 白橡     :「要らない」
 甚三紅    :「そ。納得したんならいいけど。あたしらは普通にこの病院
        :やってくのが仕事。淡蒲萄は外でいろいろやるのが仕事っ
        :てことで」
 白橡     :「はぁい、オネエサマ」

 ふてくされて部屋に戻っていく白橡。
 それを見送って、甚三紅は呟く。

 甚三紅    :「普通が一番なのにね、コガ」
 焦香     :「──そだね」

 二人は思い出していた。月白が滅んで、事態が収束したときの事を。
 一滴の返り血も浴びぬまま、六人分の肉片の中央に立っていた淡蒲萄の姿を。
 そして──泣きはらした顔で、振り返った姉の姿を。


時系列と舞台
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2006年7月頃

裏葉柳医院 http://hiki.kataribe.jp/HA/?UrahayanagiHospital


解説
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夏の日に、滅んだ姉と、姉妹を守った姉を思い出す。


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Toyolina 




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