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Date: Tue, 27 Feb 2007 00:20:59 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30853] [HA21P] エピソード『静かなる動き』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2007年02月27日:00時20分59秒
Sub:[HA21P] エピソード『静かなる動き』:
From:久志
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エピソード『静かなる動き』
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登場人物
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飛遊(ひゆう)
:蒼雅家の霊獣。モモンガ。蒼雅西条の対。
穂波(ほなみ)
:蒼雅家の霊獣。三本尻尾の狐。蒼雅梓の対。結構好戦的。
スサビ :摺ヶ岳の主「黒耳道主神」の眷属。
飛遊の苦しみ
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吹利県、御霞神社。
かつて霞ヶ池を封じた際に使われたという遺物が眠る、霞ヶ池封印のかなめ
石たるひとつでもある。
この封印を守るべく使わされたのが霊獣使い一族・蒼雅家の若き当主巧と、
鎮めの巫女として姉の梓が任についていた。
霊獣使い、蒼雅一族。
吹利の地鎮を行う古い家にして、それぞれに霊獣という魂を同じくする対を
持つ者達。
そして今。蒼雅家の縁者でありながら、愛執ゆえに巫女を狙う裏切り者であ
る男、蒼雅西条。梓を手に入れる為、邪魔になる梓の対・穂波を封じようと目
論む西条の命に従い、対である飛遊は御霞神社にて行動を開始していた。
飛遊 :「……」
唇をかんで、思いつめた顔で社務所を見上げる年の頃十歳ほどの少年。
蒼雅西条の対にあたるモモンガの霊獣、飛遊。
飛遊 :『失礼いたします』
穂波 :「おや、飛遊」
飛遊を出迎えたのは十代後半ほどの少女の姿。
梓の対の霊獣・穂波。本来の姿は金色の毛皮を持つ三本の尻尾の狐。非常に
自我が強く力も強力で、蒼雅最強の霊獣とも呼ばれる存在。
三身分身それぞれが梓の護衛、侵入者警戒、探索とそれぞれ単独で行動する
こともできる飛遊にとっては雲の上のような存在でもある。
飛遊 :『……あの』
穂波 :「どうした、飛遊。梓さまはただ今お休みになられている
:ところだ」
うつむいたまま言葉につまる飛遊の前で、ひょいと身をかがめて頭を撫でる。
飛遊 :『……はい(消え入りそうな声)』
穂波 :「どうしたのだ? 疲れているのか飛遊、元気がないぞ」
指先で飛遊の頬を撫でる。
飛遊 :(うぅ)
蒼雅の霊獣としての使命、対と共に吹利の地を護ること。
対の西条の命、穂波を罠にかけ巫女の梓をその手に入れること。
相反する霊獣としての使命と西条の命令とが飛遊の中でせめぎあう。
飛遊 :『……穂波さま……』
穂波 :「飛遊?疲れているのか?……辛いのか?」
泣き出しそうな飛遊の顔を見て、心配そうに穂波が両手で頬を覆う。
穂波 :「……西条さまが無理をなさっておいでなのか? ほら、
:言わねばわからないぞ?我らは同胞ではないか」
飛遊 :『……あぅ』
じわ、と。飛遊の大きな目に涙が浮かんだ。
穂波 :「飛遊……」
飛遊 :『……ほなみ、さま』
頬を伝った涙を穂波の指先が拭う。
飛遊 :『ほなみさまっ』
しがみつくように穂波の胸に縋りつく。
穂波 :「……お前にはお役目は辛いのかもしれないな、我や秋芳
:さまとは違うのだったな」
蒼雅最強とも呼ばれる霊獣・穂波。
当主の対にして当主と共に一族を束ねる霊獣・秋芳。
同じく霊獣の身ではあるが傍流の対たる飛遊はその力は足元にも及ばない。
飛遊 :『うう……(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
:……穂波さま)』
穂波 :「いい子だ、飛遊」
そっと穂波の手が頭を撫でる。
穂波の目に届かぬように飛遊は懐から小さな札を取り出した。
飛遊 :(……穂波さま……)
そのまま縋りついた穂波の体にそっと札を貼り付ける。
穂波 :「辛かったら、ちゃんとそう言わねば。お役目とはいえ、
:お前や西条さまがお倒れになってしまっては元も子もない
:のだぞ?」
飛遊 :『……はい』
弱弱しく答える。
貼り付けた札はそのまま吸い込まれるように穂波の体に溶けて消えた。
飛遊 :『……(まず、一枚)』
穂波 :「いい子だ」
顔を上げた飛遊に笑いかけて、頬を伝った涙を指先で拭う。
飛遊 :『……』>ぎゅっと手を握り閉めて
胸の奥から突き上げるような衝動。
言いたい、伝えたい、主の過ちを残らず吐き出したい。
だが、その想いを言葉にすることができない。
飛遊 :(うつむいて)
穂波 :「よし、飛遊。先日さつき殿から分けていただいたぷりん
:が台所の冷蔵庫にある、おいしいぞ」
顔を覗き込むように額をつけて笑いかける。
飛遊 :『……はい』
水面下で動き始めている。
愛執ゆえの迷走が。
長年続いてきた古き家の歪みが。
使役する者との確執が。
先行きを覆う不安と恐れに飛遊は小さな体を震わせた。
匂い
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御霞神社、夜半。
飛遊が戻り、客人の世話へと戻る穂波。
スサビ@獣本体:「おお、穂波殿」
廊下を歩いてきたのは堂々とした山狗の姿。
山狗の神霊であり、依巫の巫女と共に御霞の客人として間借りしている。
スサビ@獣本体:(すん、と鼻を)「今、飛遊殿が来ていたかな?」
穂波 :「これはスサビ殿。ええ、先ほど飛遊と一緒に」
スサビ@獣本体:「ふむ……他には誰か人が?」
穂波 :「む?私と飛遊の二人だけだったが」
不思議そうに首をかしげる。
スサビ@獣本体:(すん、と再度)
:「ふむ……いや、そのような気がしたのでな」
穂波とも飛遊とも違う、他人の残り香を感じたように小さく鼻を鳴らす。
スサビ@獣本体:「まあ気にせんでくれ、誰か儂のまだ会わぬ誰かが出入り
:でもしたニオイが残っていたのだろう」
穂波 :「そうかもしれないな、先日も草薙のお家の縁者が挨拶に
:こられたこともあることであるし」
スサビ@獣本体:「なるほど。またさつきも居るときに教えてもらわねばな。
:……邪魔をした」
穂波 :「ああ、こちらこそ。さつき殿に色々と教わることが多く
:て助かっているのだから」
スサビ@獣本体:「なに、穂波殿のおかげでさつきもよい気分転換ができて
:助かっている」
穂波 :「それはようございました、では失礼いたします」
その身に仕込まれた札に気づくこともなく。
一礼して穂波は部屋を後にした。
時系列と舞台
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http://kataribe.com/IRC/KA-06/2007/02/20070223.html#000000
2007年2月。
解説
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飛遊、主である西条の命により、穂波を罠にかけるべく行動する。
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以上。
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