[KATARIBE 30827] [HA21P] 怪異・六つ目お魚

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Date: Tue, 20 Feb 2007 16:02:09 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30827] [HA21P] 怪異・六つ目お魚
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2007年02月20日:16時02分09秒
Sub:[HA21P] 怪異・六つ目お魚:
From:Toyolina


[HA21P] 怪異・六つ目お魚
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登場人物
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 甚三紅  【じんざもみ】 三女、女医。
 焦香   【こがれこう】 五女、ナース。
 白橡   【しろつるばみ】六女、ナース。


 裏葉柳医院。
 表向きの顔は、かわいいナースとかわいい女医さんしか居ない、非現実的な
病院。今日もお客(患者)さんで大繁盛。
 裏の顔は……吸血鬼黄櫨染とその血族たちの居城でもある。
 今日もパパ(黄櫨染)の言いつけに従って、娘たちは生物実験を行っていた。

 セーラー服の上に白衣、さらにエプロンまでつけるという、倒錯しているのか
無頓着なのか、判断に難しい服装の甚三紅。この医院の医師でもある。
 その傍らで、まな板やら研ぎ石やらを準備しているのが、焦香。こちらも水色
のナース服の上に、エプロンをしている。

 手術台(まな板)の上には、一尾の鯖がぴちぴちと跳ねていた。その脳天に、
透明な液体が注射される、ぷすり。脳天に針を突き立てられる鯖。一際強く跳ね、
おとなしくなる鯖。やがて、鯖は目に見えて変貌を遂げ始めた。その顎は大き
く広がり、その一対の目玉は三対に。端的に言ってキモい外見になった。そして。

 六つ目お魚  :(ちゃぽん)
 焦香     :「にげたよ?」
 甚三紅    :「……」

 お魚はシンクのわずかな水たまりに潜り込んだ。どういう理屈かは解らない
が、水であればどこでも泳げるようになったようだ。

 甚三紅    :「……(ガクガクブルブル。折檻されゆ)」

 思わず、数時間後の我が身の惨状を思って身震いする、甚三紅。誰に、どの
ように折檻されるのかは、ここでは述べないことにして。
 気を取り直して、すぐ側にいた焦香に指示を出す。

 甚三紅    :「敷地から出さないで! 隠蔽します」
 焦香     :「いや、それは出さないつもりなんだけど、どこにいるのか
        :判る?」
 甚三紅    :「……アレ、元はなんだっけ」
 焦香     :「鯖」
 甚三紅    :「参考にならねぇ」

 ちなみに、今回の実験の目的は……きたるマグロ高騰に備えて、刺身で食べ
られる魚を増やそうというもの。ご存じの通り、鯖という魚は足が早くて、刺身
にはいろいろと不向き。しかし、これを刺身で食べられるように出来れば……
ご家庭の食卓は大助かり。
 そんな、世間の役に立つのかたたないのかわからない事情。
 一方その頃、給湯室では。
 受付担当のナース、白橡が、飽きもせず、ヤカンのお湯が沸くのを待っていた。

 白橡     :(回想)(焦香:「あんた、水道の栓ちゃんとしめなって
        :言ってんでしょ(クドクド)」)
 白橡     :「沸き終わったらしめるっつーの」

 そう呟きながら、軽やかに燃える青くうっすらとした炎を見つめる白橡。
 なぜマッチを擦ってもこの色で燃えないんだろう、ガスバーナーでも使えば、
いいんだけれど、それだと勢いが強すぎるし、何かいい方法はないかなあ。
 なんて他愛もない妄想に浸っている。その瞳は、どこか遠い旅路の最中。

 白橡     :「早くお湯わかねーかな。カップ豚汁うどん食べるんだ」

 そんな彼女の背後に……蛇口から滴る水から現れた、六つ目お魚が迫る。
 白橡は気づかない。炎に夢中。

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 焦香     :「患者さんは待合室に全員押し込んだけど」
 甚三紅    :「んじゃ、あとはアレ見つけるだけ。ちゃぽんって言った
        :から、きっと水気のあるところに。しらみつぶし」

 かっこつけた口調とは裏腹に、出てきた言葉が手当たり次第。

 焦香     :「アンタ賢いのにバカだよね」
 甚三紅    :「なんか代案出してから言えよな」
 焦香     :「その仮定が正しいとして、水道どんだけあると思って」
 甚三紅    :「下水はアンタのチュー太郎使えばいいでしょ。上水は
        :あたしが直に探す」
 焦香     :「てめぇ、いっつもそれだ」

 その頃給湯室では。
 背後から現れた六つ目魚に、白橡が襲われていた。

 六つ目お魚  :(がぶがぶ)
 白橡     :「……右腕とれた……」

 あっさりと言うが、実はすごく痛い。見た目にも、体感も。
 給湯室の灰色にくすんだ床は、真っ赤に染まっている。
 そんな血の海を跳ねながら、六つ目の魚(元は鯖)は、先ほど不意打ちで
食いちぎった、白橡の右腕を貪っている。
 なんともまあ、美味しそうに貪ること。ぐぁつぐぁつ。
 白橡は、そんな光景を和みながら見ている──わけもなく。
 しゅうしゅうと勢いよく湯気を立てるやかんを手に取ると、魚に思いっきり
ぶっかけた。

 白橡     :「……この野郎」

 煮えたぎる、百度に限りなく近いお湯。
 六つある目玉のうち五つが白濁している魚。
 脳天から背中にかけてごっそり湯引きにされて、跳ねては壁に激突、を繰り
返し、逃亡しようとする。まだ冷めやらないお湯が飛び散って、白橡の体に降
りかかる。

 白橡     :「熱ッ、この雑魚! 湯引きにしてやる」

 その頃、洗面所では。

 焦香     :「下水流れたんならほっときゃいいのに。そのうち処理所に
        :流れ着いて見つかるんじゃねーの」
チュー太郎28号:「ちゅっ」
 焦香     :「まあいっか、仕事してる振りしてサボってりゃ(ぼけー)」

 使い魔のネズミが、顔をあげて報告するが、主は遠い目をして体育座りで惚
けていた。ちなみに27号までは殉死しているのだがそれはさておき。

 再び場面は戻って、給湯室の入り口では。右腕を失った白橡と、奇っ怪な六つ
目魚との激闘が、なおも続いていた。

 白橡     :「にげるなこの深海魚!」

 ヤカンを投げる。すっぽ抜けて蛍光灯にヒット。いい音で割れる蛍光灯。

 白橡     :「ああもう。触りたくないのに!」

 右腕の傷口から骨が急激に伸びて、六つ目魚の真ん中の目玉を刺し貫く。
 そのまま、壁に串刺しで巨大目刺し完成。

 六つ目お魚  :(ピクピク)
 白橡     :(骨を戻して右腕再生)「さってと。テメエどっから来たのか
        :白状してもらおうか」

 そもそも魚が人語を解するのかどうか。魚人ならともかく。
 目刺しを見上げる視線は、恐ろしく据わっている。これから鱗を一枚一枚、
剥ぎそうな勢い。書いているこっちが痛々しい。
 尾びれ近くの鱗を一枚剥いだところで。早足で歩いてくる甚三紅。
 おそらく、物音を聞きつけてきたのだろう。

 甚三紅    :「あー、白、この辺で魚……」
 白橡     :「……コレ? 捜し物って」

 白橡が指さす先と、甚三紅の視線が交わったそこには。
 先ほどまで鯖だった巨大な目刺しが、ピクピクしている。

 甚三紅    :「う、うん、それ。まな板からハネてどっかいっちゃって
        :……」
 白橡     :「そうか、テメエか」

 だらり、と再生間もない右腕を垂らす白橡。
 その目はこの上なく据わっていて。

 甚三紅    :「ち、ちが、あれはコガが……」
 白橡     :「あのバカにそんな知恵あるわけねー!!」
 甚三紅    :「ま、待って、話せば。ほら、これだって元はといえば
        :お父様が」
 白橡     :「うっせー!! 死ねこの無免許医!!」

 甚三紅に向かって、右手を伸ばす白橡。
 その直後、甚三紅の視界は真っ白に包まれ──右、上、左、上、下。


 焦香     :「アンタらホント仲いいよな」

 両手を腰に当てた姿勢で見下ろす焦香。
 周囲の天井も床も壁も、甚三紅がたたきつけられた跡がくっきりとついている。
 そして甚三紅の顔面には、わしづかみにされた指の跡が、これまたくっきり。

 甚三紅    :「スイマセンデシタ(カクカク)」
 白橡     :「わかってんのか、このモミスケ」
 甚三紅    :「カンベンシテクダサイ(カクカク)」

 白橡に背中から馬乗りに乗られて、キャメルクラッチ状態。
 直角にかなり近づいているのは気のせい、ということになった。

 焦香     :「アンタ、ホントけんか弱いのな」
 甚三紅    :「わかってるなら助けて……ぐぇ」

 さらに締め上げられる甚三紅。
 この数秒後、彼女は機能停止し、棺桶に直行した。


 裏葉柳医院 http://hiki.kataribe.jp/HA/?UrahayanagiHospital


時系列と舞台 
------------ 
2007年2月頃 


解説 
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.rg HA21mission 実装記念。 
試しにやってみました。頭回ってなくてあまり面白くない。


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Toyolina 



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