[KATARIBE 30730] [HA21P] エピソード: 清虎と幸紀

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Date: Sat, 03 Feb 2007 01:27:27 +0900
From: Subject: [KATARIBE 30730] [HA21P] エピソード: 清虎と幸紀
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こんばんは、Catshop/桜井@猫丸屋です。

 渋ボケの大男と、愛情ありあまる優男のコントラストをお楽しみください
──なんちて(笑)。

 ではでは。

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[HA21P] エピソード: 清虎と幸紀
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吹利布津主神社、境内
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 吹利布津主神社の境内に、大男と優男の二人。
 緊張感を漂わせて向き合い──大男は構えもなく足を跳ね上げた。


199戦、99勝100敗
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 ぶぉんっ。

 清虎の回し蹴りが空を裂き弧を描く。
 相変わらず、早く、重く、鋭い。だが呼吸は馴染んでいる。
 するりと、かわす。

 かわせば間合いを離されて、突き、蹴り、肘、手刀、果ては体当たりまで。す
べてを巻き込み、休むことなく暴れる嵐のような清虎の攻撃も、全て馴染ん
だ呼吸の通りだ。心を沿わせ、逆らわず、殺気さえ優しく包み込めば身体は
自然するりするりとすりぬける。

 ざんっ。

 大地から蒼天へ跳ね上がるように。
 清虎は玉石を踏み砕き右足を蹴り上げた。
 何があったか知らないが、今日の清虎は勝ちを焦っている。ぴったりと呼吸
を沿わせたまま大技を仕掛けたところで──
 してやったりという顔で笑いながら、するりと懐に入り込み、清虎の喉元に
白く細い指をおしあてる。
 やんわりと柔らかく、しかし全身で一歩、押し込む。

 ずだんっ。

 清虎の長躯が玉石に沈んだ。

 清虎     :「100勝98敗」
 幸紀     :「勝ちを焦っちゃダメだぜー? ほら、いっつも言ってん
        :じゃんよ。優しい力には誰も逆らえない、まして愛する
        :力には自ずから沿うってさー」

 にーっと笑いながら、右手を差し出した。

 清虎     :「合気の理合いか」

 身を起こし、差し出された手を取った清虎の長躯が再び宙を舞う。
 騙まし討ちのしがいもない──ってコトは、つまり面倒くさい案件を抱えて
いるってコトだ。

 幸紀     :「これで99勝100敗。あと2勝で勝ち越し」

 またしてやったりと笑う。

 清虎     :「──愛する力が聞いて呆れる」

 憮然とした顔で立ち上がり、清虎は服についた砂埃を払った。

 幸紀     :「ほら、そこで虎っちが布津主下ろしたらボクの手なんか
        :ズタズタじゃん? 信じることも愛の形さー」

 悪びれもせず、にこにこと笑って応えてやる。
 さて、どこで切り出してくるかな。

 清虎     :「薄っぺらな愛だな」
 幸紀     :「出稼ぎのお姉さんたちにいっつも言われてますー」

 斬って捨てる清虎の言葉にも、堪えない。
 中国、台湾、フィリピン、タイ。最近はロシアにウクライナにスロバキア
まで。夜の街には出稼ぎのお姉さんたちがいっぱいだ。
 人それぞれに思い思い、重い物語を背負っちゃいるけど、愛する力には誰も
が自ずから沿う──なるたけ深入りはしない主義ではあるけれど。

 幸紀     :「で、なんの用事さ? どうせなんかメンドくさい話なん
        :だろ」

 耳元のピアスに軽く触れながら。
 清虎はメンドウクサイ話ほど自分からは切り出さない。じっとこちらから水
を向けるのを待つ。堅物のクセにズルいヤツだ。

 清虎     :「そうだ」
 幸紀     :「うへ。ちっとは否定しろよなぁ。もしかして払いも悪い
        :んだろ?」
 清虎     :「そうだ」
 幸紀     :「──ったく」

 呆れて肩をすくめ、ブルーダイアに触れる。

 幸紀     :「幼馴染だからって遠慮なさすぎじゃね?」
 清虎     :「諦めろ」
 幸紀     :「────」

 流石に、渋面。まぁ、これもいつもの事だが。
 今度はいったい何を頼まれるのか──

登場キャラクター
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 鹿島清虎 (かしま・きよとら):http://kataribe.com/HA/21/C/0035/
  吹利布津主神社の神職。渋ボケの大男。

 白馬幸紀 (あおうま・こうき):http://kataribe.com/HA/21/C/0049/
  フリーランスのネゴ屋。愛情ありあまる優男。
 

解説
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 白馬幸紀の登場。
 さて、これからどんな役回りを演じることになるのやら。

 ちょろちょろとモノローグを入れてみると「コイツどんなヤツなんかな?」
ってのが少し分かったような気がします。


関連リンク
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   語り部IRCログ #HA21 20070202
   http://kataribe.com/IRC/HA21/2007/02/20070202.html#010000


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