[KATARIBE 30720] [HA21N] 小説『ソラソラとの遭遇・後編』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Fri, 2 Feb 2007 00:45:11 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30720] [HA21N] 小説『ソラソラとの遭遇・後編』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200702011545.AAA17670@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 30720

Web:	http://kataribe.com/HA/21/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30700/30720.html

2007年02月02日:00時45分11秒
Sub:[HA21N]小説『ソラソラとの遭遇・後編』:
From:久志


-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
小説『ソラソラとの遭遇・後編』
==============================

登場人物
--------
 佐柄夢希(さがら・ゆめき)
     :図書館司書。『楽園』に狙われている。超能力者。
 月光線宙空(げっこうせん・そらそら)
     :地雷踏み体質な記者。結構命知らず。

帰りに
------

 時計の針が回る、終業時間を過ぎ。
「……はあ」
「お疲れさま、佐柄さん」
「はい、お先に失礼します」
「無茶しないでちゃんと帰って休むんだよ」
「ええ、ご心配かけてすみません」

 仕事を終えて。
 ロッカーからこげ茶のコートを引っ張り出して羽織り、白のマフラーを首に
巻く。携帯の時計を確認して鞄を肩にかけると、同僚に一礼して更衣室から出
て行く。
 外に出て、閉館時間に先に外にでた宙空の姿を探す。
「あの人、どこかしら?」
 辺りを見回す夢希に向かって駆け寄ってくる姿。
「どうも!待ってました」
「すみません、お待たせしてしまって」
「ハハハ、いいえ〜お話聞かせてもらえるんですから。どこかお店入ります?
もちろんオゴりますよ」
「はい……」

『わたしたちは楽園の転生者。
    生命の世界樹を蘇らせ、楽園に還ろう』

 宙空と並んで歩きながら、夢希の脳裏に浮かぶ、白衣を着込んだ謎の男。
どこか人をこ馬鹿にしたような、それでいてその目の奥に得体の知れない何か
を含んだ、どこか心を不安にさせる男。

『なに、焦ってはいませんよ。まだ『巫女』も『騎士』も揃ってはいない。
 貴方が役目に目覚めるまでにはまだ十分時間はあります』

 巫女、騎士、そして星見。
 夢の中で見た、水の中をたゆたう謎の少女。
 頻発する眩暈と目に浮かぶ断片的な光景。

(一体、何が?)

「どこか行きたいお店あります、佐柄さん……佐柄さん?」
「え?」
 腕をつかまれて足を止めた夢希の顔を見上げる宙空。
「大丈夫ですか?」
「あ、すみません。考え事をしてて、ごめんなさい」

 腕を掴んで見上げる姿。
 浮かんだ映像そのままに。

「帰りにたまにいく喫茶店があるんです、そこにいきましょう」
「はい、じゃあそこで決定〜」

 にっと笑って視線をこちらに向けながら歩く姿。
 どれもこれも、寸分の狂いもない。

(やっぱり、見えているのは……未来)


お茶でも飲みながら
------------------

 夕暮れも大分過ぎた店内は、多少賑わっているものの混雑というほどではな
かった。
「お二人様ですか?」
「はい」
「お煙草はお吸いになられますか?」
「佐柄さん吸います?」
「いえ、私は。月光線さんは?」
「んー私も吸わないです。禁煙で」
「かしこまりました、お席にご案内します」

 席に座り、注文を済ませて向き合う。
「で」
「はい」
 とん、とテーブルに両腕をついて身を乗り出す宙空。
「楽園、について。詳しく教えていただけます?」
 まさしくキラキラと目を輝かせて。
「詳しく、というか。私も細かいこと知らないのですが……」

 ぽつぽつ、と。話しはじめる。

「それって、白衣を着たちょっとむっつりスケベそうな人?」
「ええ」
「やっぱり……ふむ」
 しばし考え込む宙空。
「泉の巫女に鳳の騎士、それと水鏡の巫女、かあ」
「はい、それ以上のことは、私も」
「そして、佐柄さんは付きまとわれて迷惑してる」
「……ええ」
 頷く夢希の顔を見て。
「よし!」
 勢いよくテーブルを叩く。

「夢希さん、私と真実を見つけに行こう」
「は?」
 突拍子もない言葉に思わず目を丸くする。
「真実って、あの、一体」
「楽園が何を狙って、どうして人を集めてるか、何をしようとしてるのか。
失踪してしまった人はどうなったのか、すっごく気にならない?」
「それは……確かに気になりますけど」
「それに夢希さんは狙われているんだし、ここは一つ運命共同体で!」
「はい?」
 あまりに話が飛びすぎて咄嗟についていけない。
「でも、月光線さんも危険なんじゃないんですか?」
「大丈夫、もう二回洗脳されかけて尾行されたこともあるから」
「それは大丈夫じゃないと思います」
「ほら、敵は増やしたくないし、一人より二人の方が危なくないでしょ? 
正直ちょっと色々あって不安だったし」
「月光線さん……」
 ちょっと心なしか宙空の語尾が小さくなるのを夢希は聞き逃さなかった。
「私も不安だったんです。おかしな人につけまわされて……ずっと一人で悩ん
でて。でも大丈夫です、頼れる知り合いができて安心できましたし。月光線さ
んもきっと頼れると思います」
「本当ですか?」
 がばっと顔をあげて夢希の手を掴む。
「やった! なんかやる気出てきたわ! ありがとう、夢希さん」
「……え、ええ」
 夢気の手を握ったまま元気よく咆える宙空に、一瞬なにか早まってしまった
ような感覚を覚えた。


時系列と舞台
------------
 2007年1月頃。
解説 
----
 夢希、ソラソラと運命共同体になるのこと。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。



 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30700/30720.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage