[KATARIBE 30696] [HA21N] 小説:『夢路』その3

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Date: Sun, 28 Jan 2007 16:50:06 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30696] [HA21N] 小説:『夢路』その3
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2007年01月28日:16時50分06秒
Sub:[HA21N] 小説:『夢路』その3:
From:みぶろ


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小説:『夢路』その3
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登場人物 
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 当麻漣(たいま・れん) 
   :怪異喰らいの霊能力者。マノマノに協力中。
 鹿神真乃(かがみ・まの)
   :予知夢を見る能力者。ちょっと体が悪い。

本文 
---- 

 病室に差し込む薄い光の中で、真乃はふんわりと笑った。
「久しぶりに夢を見たの」
 瞳の潤み。頬の上気。それは真乃の愛らしさをいや増してはいるものの、彼
女の病魔が健在であることの証左でもある。絆創膏を貼った首筋を掻きながら、
漣は真乃の肩にショールをかけた。
「起きていてもいいのか」
「大丈夫。明後日は儀式もあるし、この後、ちょっと外を歩くんだよ」
 そう言って、サイドテーブルに目をやる。たまご色のジャージがたたんで準
備されていた。
 霞ヶ池をめぐる騒動の活発化とリンクするかのように、真乃の体力は削られ
ていった。センミツたちもあせっているのか、時々嫌な噂を耳にする。
「それでね、聞いて。あたしとみんなで道場でお酒飲んでるの」
 照真教の教祖と幹部が酒盛り。それは確かにありえない構図だった。
「レンレンなんか、セーラー服着ててね」
「ちょっと待て。勘弁してくれ、まさかそれも実現するんじゃないだろうな」
 真乃は予知夢を見る能力者だ。真乃の語った夢は、現実に鏡写しのように反
映された。
「うふ。大丈夫。これは予知夢じゃないの。予知夢には、あたしは出てこない
から――だから、これは本当の夢なのぅ」
 夢というのは、記憶の整理や精神の安定に不可欠とも言う。予知夢のせいで
健全な夢を見ることもできず、眠ってからでさえ、「カガミさま」であること
を強要されるうちに、心が疲弊してもおかしくはない。
 漣はかつて真乃に問うた。体を回復させる可能性のために、人生を楽しむ可
能性を捨てていないのか? と。彼女は答えた。どうせ予知能力を持って生ま
れてきた以上、周りの人を幸せにするしか生きる道はないのだ、と。
「レンレンは今日、女子高生にちゅーされてたね。いけないよ」
「いや、そんなナイスな出来事はなかったんだが」
「そうだっけ? でも嬉しそうな顔じゃなかったよ。吸血鬼なのかも?」
「ふうん。まあ気をつけることにしよう」
 徐々に、夢と現実の境界が曖昧になっていく真乃。
 もう、手遅れなのではないのか?
 胃の中に、じんわりと冷たい水がたまるように、その言葉が広がっていく。
「じゃあ、レンレン、お見舞い待ってるから」
 冷たい水は体中に広がり、小さな波紋を奏でた。
「――!」
 目覚めた漣が見たのは、プリントされた木目調の天井。自分のアパートのベ
ッドだ。
「催促しなくても忘れやしないのに」
 さっき見た夢の記憶は急速に色あせ、もう何を話したか思い出せない。
 服を着替え、お見舞い用に買ったショールを持ち、部屋を出ると。
 女子高生が立っていた。

――夢路・終

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