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Date: Sun, 28 Jan 2007 16:46:58 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30695] [HA21N] 小説:『夢路』その2
To: kataribe-ml@trpg.net
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2007年01月28日:16時46分58秒
Sub:[HA21N] 小説:『夢路』その2:
From:みぶろ
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小説:『夢路』その2
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登場人物
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当麻漣(たいま・れん)
:怪異喰らいの霊能力者。今回はつかいっぱ。
鹿神真乃(かがみ・まの)
:予知能力者。新興宗教団体照真教の教主。
仙道光成(せんどう・みつなり)
:照真教の広報担当。
本文
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「こないだの喜田さんで3人目ですね。月一ペース。すばらしい」
漣が照真教から呼び出しを受けたのは、山田老の連れ戻しから3ヶ月ほどた
ってのことだった。何人も信者を連れ戻された教団としては言いたいこともあ
るのだろう。
「どうも」
プレハブは既に撤去され、道場は木の香も清々しい立派なものに建て替わっ
ている。もっとも、応接室も板張りで、それが檜ではなく杉であるあたり、豪
奢というほどのものでもない。出された煎茶のふたを開け、立ち上る湯気を鼻
に当てる。
「そちらこそ、立派な道場が建ちましたようで。めでたいことですな」
「みなさまのお志あってのお蔭でございます。ありがたいことですね」
渡された名刺には、『照真教 広宣部 仙道光成』とある。二十代前半とお
ぼしきその男は、籠の中のカナリアをみるイタチの目をしていた。まあ、目つ
きの悪さではお互い様なのだが。
「で」煎茶をすすりながら、漣がうながした。
「はい。実は当麻さんにお仕事をお願いしたいと思いまして、ご足労願ったわ
けです」
「内容による」
「でしょうね。『霞ヶ池』の水を採取してきていただきたい」
これは漣にとっては意外だった。てっきり不干渉か逆説得を依頼されると思
っていたからである。
「失礼ながら、調べさせてもらったんですよ。誰だあいつ! てなことになっ
てましたしね。そしたらお若いのになかなかの実績をお持ちでいらっしゃる」
「だが断る」
「ジョジョラーですか? 私は一部が一番好きでしてね。次点は六部」
「マニアックですな。それはさておき、水関連はめんどうなので」
「そこをなんとか。カガミさまを助けると思って」
それはどういう、と聞きかけた時だった。応接室のドアが無造作にあけられ、
一人の女性が入ってきた。入り口の座布団を5枚ほど抱えて運んでくる。
たまご色のジャージの上に、翔鶴の縫い取りがされた絹の打掛。
「あー、もうヤダー。なんか変なストーカーみたいな信者さんがいるのーぅ」
彼女は柔らかそうな長い黒髪を揺らしながら、陽あたりのいい窓際まで運び、
座布団をちらかす。ぼすん、と座って仙道に話しかけた。
「ねえセンミツお願い、事務室の冷蔵庫からこっそりあたしのドクペ取ってき
てよ、う」
そこで彼女は漣の存在に気づいた。無言で座りなおしながら打掛を調え、威
儀を正す。それはとても美しい所作だった。窓から差し込む陽光を背に、静謐
な宗教画のような表情は、漣の目を奪うに十分だった。ジャージだけれども。
「あなたが今日おみえになることはわかっていました」
ジャージで。
「ホントですよ?」
「カガミさま……また緋袴の下にジャージはいたんですか。それとジャージで
うろうろしないってお願いしましたよね、先週……!」
「だってだって、めっちゃ寒かったのーぅ!……正装でくつろぐと皺が寄るっ
て怒るし……」
「早くちゃんとしてきてください。教団のイメージに関わります」
「いいの……センミツがあたしのくつろぎより教団が大切だってことは知って
るもの。あたしはここに囚われた小鳥さん……」
「3……2……」
床にのの字を書き始めた真乃は、仙道のカウントダウンを聞いてしぶしぶと
出口に向かった。
「あ、レンレン。その人悪そうな顔してるけど、いい人だから仲良くしてあげ
てね。じゃあよろしくー」
「……」
「……」
扉が閉まってからたっぷり5秒間は沈黙が支配した。
「鹿神真乃?」
「ちなみに23です」
「レンレン?」
「彼女の中では、あなたが協力してくださるということは既定事項のようでし
て」
「なんで」
「カガミさまは、予知能力者なのです」
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