[KATARIBE 30658] [OM04N] 小説『かまいたちを捕らふ話』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Fri, 19 Jan 2007 00:05:07 +0900
From: Subject: [KATARIBE 30658] [OM04N] 小説『かまいたちを捕らふ話』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20070119000507.2ce0e0e7.hukira@blue.ocn.ne.jp>
X-Mail-Count: 30658

Web:	http://kataribe.com/OM/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30600/30658.html

ふきらです。
あやかし草紙第二夜、第二話の二(多分)
いーさん、キャラをお借りしました(礼

……タイトル間違ってるかも(汗
**********************************************************************
小説『かまいたちを捕らふ話』
============================

登場人物
--------
 烏守望次(からすもり・もちつぐ):http://kataribe.com/OM/04/C/0002/
  見鬼な検非違使。

 妙延尼(みょうえんに):http://kataribe.com/OM/04/C/0007/
  綴る手の持ち主。鬼を祓う刺繍を綴ることが出来る。

本編
----
 都から少し離れたところにある妙延尼の庵。
 望次は脇に小さな箱を抱えて、その庵の門の前に立っていた。抱えている箱
は時貞から預かったものである。
 本来なら自分が出向かねばならぬのだが、生憎いま陰陽寮には誰もおらぬの
だ、と言われ、望次はどうせ暇だから、と快く引き受けたのである。
 望次は耳を澄ましてみた。都から少し離れたこの庵には、さすがに都の喧噪
も届かず、あたりはひっそりと静まりかえっている。
「妙延尼殿は居られるか」
 彼は門の中に声を掛けた。しばらくして、庭の方から「どうぞ、こちらへ」
と声が聞こえた。
 望次が庭に出ると、庵の縁に妙延尼が座っていた。傍らには何枚か布が重ね
られている。
「陰陽寮からの届け物です」
 そう言って、望次は持っていた箱を彼女に手渡した。
「まあ、わざわざ……」
 ありがとうございます、と妙延尼は頭を下げる。
「今日は、お兼殿はおられぬのですか?」
 望次は辺りを見回して言った。
「ええ、刺繍に使う糸を買いに……あら」
 彼女がなにか思い出す。
「そういえば、陰陽寮にも寄る、と」
 それを聞いた望次は呆れた表情を浮かべた。
「なんだ。それでは俺が行かなくても、陰陽寮で待っていれば良かったのでは
ないか」
 その表情を見て、妙延尼が小さく笑った。


 しばらく他愛もない会話を交わした後で、それでは、と望次が腰を上げた。
 そのときである。
 はさり、と庭の隅で音がした。
 二人がそちらの方を見ると、横に並んで植えられている小さな木々の一本の
根元に枝が落ちていた。望次はそこまで行って、枝を拾い、しばし見つめた後
で首を傾げた。
 枝についている葉はまだきれいな緑色をしている。そして、何よりその枝の
根元は刃物か何かで切られたような断面をしていた。
 どう考えても、自然に離れたものとは思えない。
 むう、と望次が再び首を捻ったところで、視界の隅に何かが過ぎったような
気がして首を横に向けた。それと同時に目の前の木から枝が落ちる。
 その木の向こうに小さな動物の影が見えた。
「あら」
 後ろの方から妙延尼の声が聞こえる。どうやら彼女にも見えたらしい。
 それは小さな鼬のような姿をしていた。
「なんだ?」
 望次は眉をひそめた。見たところ普通の鼬のようだが、先ほどからこめかみ
がきりきりと痛んでいる。
「よくは分からぬが、怪かしか」
 彼の呟きが聞こえたのか、鼬のようなそれは彼の方を向くと、一気に飛びか
かってきた。
 前足が鎌のような形に変わりキラリ、と光を鈍く反射させる。
 望次は後ろ足を引いて避けた。すれ違いざまに鼬の首根っこをはし、と掴ん
で捕まえる。
「きゅーきゅー」
 彼の手の中で鼬が両脚をジタバタさせる。前足はいつのまにか普通の形に
戻っていた。
「……どうしたものか」
 望次は困ったような表情を浮かべた。
「見事な」
 後ろを振り返ると、妙延尼が笑顔を浮かべて彼の方を見ていた。
 望次が彼女の側に戻ってくると、彼女は立ち上がり庵の奥へ姿を消した。
 ほどなくして、細長い布を持って戻ってくる。
「これ、お使いになりますか?」
 その布にはきれいな刺繍が施されている。鬼を祓う力の込められた護りの布
である。
 望次が頷くと、彼女は彼が捕まえていた鼬の首にその布を巻き付けた。
 布の効果か、鼬の体から力が抜ける。
 「きゅー……」と弱々しく鳴いた鼬の頭を妙延尼はやさしく撫でた。
「人に害を与えないなら、解いてもあげようほどに……ね」
「さすがに、このまま逃がすわけにはいかぬからな」
 望次が難しい顔をして言った。
「ひとまず陰陽寮に連れていくか。あそこの連中なら何とかしてくれよう」
「ええ……」
 それでは、と立ち去りかけた望次を妙延尼は呼び止めた。そして、傍らに
あった布を手渡す。こちらの方にも刺繍が施されていた。
「とりあえず…… これを、籠に張り巡らせば、逃げられないかと」
「ああ。これはかたじけない」
 いえ、と微笑みを浮かべて首を振った。
「かまいたちの害が減れば、何よりでございますゆえ」
「本当に」
 そう言って、望次は一つ頭を下げると、庵を後にした。

解説
----
果たして、鼬の運命やいかに?(そんなに派手な展開にはなりません、多分)

$$
**********************************************************************
 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30600/30658.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage