[KATARIBE 30579] [HA21N] 小説『霞ヶ池の闇断片〜静かなる転機』

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Wed, 3 Jan 2007 19:40:49 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30579] [HA21N] 小説『霞ヶ池の闇断片〜静かなる転機』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200701031040.TAA78022@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 30579

Web:	http://kataribe.com/HA/21/N/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30500/30579.html

2007年01月03日:19時40分49秒
Sub:[HA21N]小説『霞ヶ池の闇断片〜静かなる転機』:
From:久志


 久志です。
ちまちま正史化を目指していく。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
小説『霞ヶ池の闇断片〜静かなる転機』
====================================

登場人物
--------
 片桐壮平(かたぎり・そうへい)
     :吹利県警巡査、世話焼きギリちゃんのあだ名を持つ。

要因
----

 車の窓ガラス越しに眺める、色とりどりのネオンが光る街並み。
 助手席のシートに窮屈そうに体を沈め外の様子を伺いながら、イヤホンから
聞こえてくる声に耳を済ませている。
 吹利県警生活安全部保安課による一斉摘発。吹利県警巡査である片桐壮平と
その相棒も捜査員として参加していた。
「しかし……あんなガキくさい娘っこらでよくまあ」
 国籍不明の未成年者を店で働かせ利益を得ていたという風俗店。
 片桐にとっては幼い少女らを売り物にするという神経自体、吐き気を覚える
信じがたいものだった。
「そういう趣向の店だからな、お前はつまらないかもしれないが」
 隣の運転席で同じく無線に耳を傾けながら淡々と相棒が言葉を続ける。
「おう、おネエちゃんは高めの美女に限るわい。成長しとらん乳臭いガキなぞ
女のうちにも入らんわ」 
 微かに歯をきしらせて、ピンクのネオン看板を睨みつける。


 幕切れはあっけなかった。
「はいはい、子ヤギさんら。狼さんがきよったで」
「それだとラストが悲惨だぞ」
「じゃかあしいわ」 
 赤い回転灯の照らす中、相棒と軽口を飛ばしあいながら、連行される経営者
と次々と保護される女性達を見送る。
「こっちは最後かいな?」
「ああ、あらかた片付いた」
「あっちはも一度見回ってくるわ」
 淡い桃色のカーテンの奥、部屋の片隅。膝を抱えて震える少女が一人。
「なんじゃ、まだおったんか」
 カーテンを捲ってしゃがんで覗き込む。
 ぬっと顔を近づけた片桐の姿を見て、びくりと肩を震わせた。
 艶々とした黄金の髪に透けるような白い肌、小さな頭にふさふさと狐のよう
な尖った耳を生やした幼い少女。
「なんじゃ、妙な耳しよって……そういう飾りがはやっとるんか?」
 膝に顔を埋めたまま震える少女に手を差し出す。
「なんも捕って喰ったりせんわい。もうおっかないオッサンおらんわ、でてき
い、な?」
 ゆっくり顔をあげて、片桐の顔を澄んだ金色の瞳が見上げる。
 にやっと笑う片桐の顔をしばらく見つめて、恐る恐る伸ばした手を掴む。
「おし、エエ子じゃ。おーい、こっちにもおったぞ」
 ぎゅっと小さな手を握り返して、少女の頭を包むように撫でる。
「おう、もう心配いらんぞ。もうこんなスケスケひらひら服着て嫌なオッサン
どものの相手なぞせんでええんじゃ」
 ふわりと毛布をかけてそっと肩を叩く。
「ほれ、歩けるか?」
 こくりと頷く少女の頭をもう一度撫でて背中を押した。

 金色の瞳。
 他の警官たちと話ながら歩いていく片桐の姿をいつまでも見つめていた。


盗難
----

 吹利県警、某所。
 応接間の革張りのソファ、片桐と男が向き合ってる。

「つまり、だ」
「……あの、小娘かい」
「その日の翌日から、妙に体が軽くなった、と」
「妙に疲れが取れて、体が軽く感じたちゅうんは……」
「それ以前の資料や検査からは異常が全くみられない」 
「なっ……あんクソがきゃ、恩を仇でっ」
「そのお陰で命を落とさずにすんだんだ、感謝するべきだろう」
 拳で膝を叩く片桐の前で冷静に言葉を続ける。
 立ち上がりかけて、座る。
「…………くそ」 
「こちらの少女に関してはできる限り調査はする、だが、犯罪もおこしていな
い以上、調べるのは困難だ」 
「ヒトの魂無断でぶっこぬくのは犯罪ちゃうんか」 
「刑法上は……」
「……盗難は?」
「魂を盗まれました?」
 貴方の心を盗みました?とでもいわんばかりの男の言葉に、がっくりとうな
だれる。
「おいおい、こちらの任に慣れるということで、今回の件に集中してくれ」
「……アイアイサー」


時系列と舞台
------------
 2006年12月頃。吹利県吹利県警。
解説 
----
 片桐。不死身になった要因。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。




 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30500/30579.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage