[KATARIBE 30547] [HA] 高技能値狭間イメージ断片その20

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Date: Wed, 27 Dec 2006 01:28:04 +0900
From: Subject: [KATARIBE 30547] [HA] 高技能値狭間イメージ断片その20
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こんばんは、Catshop/桜井@猫丸屋です。

 鉄は熱いうちに打て、ということでさくさくエピソード起こし。

 ──エルロクないよね?

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[HA] 高技能値狭間イメージ断片その20
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ちえねつが、ひえてきもちいいから
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 SE      :ちゃぷんっ

 音を立てて水の中に潜っていく。
 部屋の中を満たすまぼろしの海を、ひらひらとミニスカートの裾をゆらしな
がら、ゆったりと泳ぐ。
 ぶくぶくと、銀色の泡が天井に立ち上っていく。
 
 ジンベエザメとシロイルカ。
 まなと戯れるように、或いは彼女を守るように並んで泳ぐ。
 その二頭にも負けないほど、まなのフォームはなめらかで優美だった。

 まな     :「気持ちいいねー」
 シロイルカ  :『きゅいー』
 ジンベエザメ :『ぼえー』
 まな     :「オジサンも、一緒に泳げばいいのにー。ノリわるーい」

 まなの視線の先に、中年の男の身体がゆらゆらと揺れている。裸の上半身は
すっかり水を吸っててふやけ、生白く膨らんでいる。

 まな     :「せっかくの海なのに、つまんなくね?」
 シロイルカ  :『きゅいー』
 ジンベエザメ :『ぼえー』

 二頭を従えて、優美に泳ぐ。
 まぼろしの海の中でだけ、まなは安心することができた。一緒に遊んでくれ
るニンゲンの友達がいないのはちょっと寂しいけれど。

 ドウシテ、ミンナ、泳ゲナインダロ?

 ときどき、頭をよぎる疑問。
 でもその問題は、まなには難しすぎて──

 だから、まなはまぼろしの海の冷たい水に身をまかせる。すいすいと泳いで
いれば、少しは痛くなった頭も冷えて楽になるから。


オボレテモ、シナナイ
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 片桐     :(がぼごぼげぼがぼ)

 苦しそうにオジサンがもがいている。
 澄んだコバルトブルーの部屋の中、蛍光灯の灯りに照らされて、オジサンの
吐き出した息がぶくぶくと銀色に輝く。

 アァ、コイツモ、泳ゲナインダ──ツマンネ

 はぁ、っと溜息。でも、諦めるには少し早いかもしれない。
 だって、このオジサンはまだ死んでない。

 まな     :「オジサン、一緒に泳ごーぜっ」

 にーっと笑いかけ、腕を組んで泳いでみる。
 ちゃんと教えてあげたら、泳げるようになるかもしれない。なんだか、優し
そうな感じだし。
 よれよれのスーツとネクタイが、水を吸ってちょっと動きづらそうだけど。
ついでに天然パーマでもじゃもじゃの髪が、水を吸ってすっかり面白いことに
なってるけど。

 まな     :「ほら、見てっ。これって綺麗じゃね?」
 片桐     :(げぼごぼごぼごぼ)

 オジサンを引っ張ってついーっと泳ぐ。目を白黒させて、なにか抗議してい
る様子だけど、よくわからないので無視。げぼごぼごぼごぼと、銀色の泡が
後をついてくる。
 ちょっとだけ心配そうなシロイルカにウィンクしてみせたりして。

 アレ、死ンデナクナイ?

 そのまましばらく泳いでいたのに、オジサンはまだ死んでない。がばごぼ
言いながら、苦しそうだけど死んでない。
 今までの厭なオジサンたちならとっくに死んでたのに。

 まな     :「えへへー」

 なんだか嬉しくて頬がゆるむ。
 もしかしたら、一緒に遊んでくれる初めてのオトモダチになってくれるかも
しれない。そんな、淡い期待がよぎる。
 ちょっとオシャベリしたくなって、海を消してみる。

 片桐     :「……ごほっ」
 まな     :「オジサンが初めてだよっ。死ななかったの」

 床に四つん這いになって水を吐くオジサンに話かける。キモチが弾んで、
ついつい頬が緩んでしまう。こんなに楽しいのは久しぶりかもしれない。

 片桐     :「普通死ねるわいっ!!」

 やっと水を吐ききって、ばっと顔を上げて一言。
 ちょっと傷つく。
 そんなに怒んなくていいじゃん、怒りっぽいオジサンはキライになっちゃう
ぞ──そんなことも思うけれど、でも今は許してあげる。
 もしかしたらオトモダチになってくれるかもしれない人だから。だから、海
より広い心で許してあげるのだ。

 まな     :「どうしてー? だって、わたし死なないしー」

 腕をからめて上目遣いで見上げながら甘えてみせる。
 これでデレっとしなかったオジサンは今までいない。パパが怒ってるとき
だって仕方ないなぁって許してくれたくらいだ。

 片桐     :「……ふつー溺れ死ぬわい、鰓もついとらんのじゃぞ」
 まな     :「わたしだってエラないもん」

 ぜーぜー言いながら、でもオジサンの口調はさっきより少し柔らかい。
 ほらね、とこっそり舌をだして、ぷくーっとふくれてみせる。

 片桐     :「確かに……ワシとは違うようじゃが……」

 何か納得したように呟いて、オジサンはどかっと座った。

 片桐     :「…………嬢ちゃん」

 真面目な顔になって、まなの顔見る。
 これって、ヤバい。オジサンがお説教するときのパターンだ。

 まな     :「わたし、お説教きらーいっ」

 先手を打って、ぷいっとそっぽを向く。お説教なんて聴きたくない。
 いつもいつもオジサンたちは、こんなことしてちゃいけないとか偉そうな
コトを言って、でもその後でまなの服を脱がすのだ。
 やらしい目でわたしを見てるクセに──やらしいこと期待してるクセに。
 だから、お説教はキライだ。
 でも、オジサンは少し違うみたいだった。

 片桐     :「……ああ、わかったわかった、嬢ちゃんは特別なんじゃ
        :ろな」

 すっかり濡れて元気のない天然パーマを、指でかきあげる。

 片桐     :ワシは……死なんから平気なだけじゃ」
 まな     :「死なない人、すきーっ」

 にへーっと笑って隣に座る。
 そう、死なない人は好き。きっと一緒に遊んでくれるから。
 だけどオジサンは、そういうことが言いたいんじゃないみたいだ。

 片桐     :「……嬢ちゃん、なあ」
 まな     :「なに?」
 片桐     :「ワシの他にも……おっちゃんと同じように泳ごうとした
        :んかいな?」
 まな     :「だって、みんな一緒に遊ぼうって言うんだもん。まな、
        :他の遊びしたくない」

 ぷいっと横を向く。
 そんなお話したくない。ツマンナイ。

 まな     :「わたし悪くないよっ。だって、オジサンたちも、まなの
        :したくない遊びさせようとしたもん」

 さぁ、服を脱ごうね──シャワー浴びようよ──わかってんだろ? ──誘
惑したのはそっちじゃないか──
 ぷちぷちとボタンを外していく指先。肌を這い回るヤニくさい指先。痛いっ
て言っても離してくれない乱暴な指先。

 ヤダ──キモチワルイ。

 吐き気がしてうつむく。喉もとに酸っぱい感じがこみあげる。

 片桐     :「……ああ、わかっとる」
 まな     :「ヤだって言っても聞いてくンなかったもんっ。わたし
        :悪くないもんっ」

 なんだか急に情けなくなって、涙がぼろぼろこぼれる。
 ふぁさ、とオジサンの暖かい手のひらが髪を撫でてくれる。

 片桐     :「そうじゃの、嬢ちゃんのせいだけじゃない」

 このまま空気の中で溺れそうにな気がして、オジサンにしがみつく。涙が
止まらない。涙の海で溺れる、なんてあるわけないと思ってたけど、もしかし
たらホントウかもしれない。

 片桐     :「わかっとる……だがな、遊ぼういわれても」

 ぽんぽん、と子供をあやすようにオジサンは背中を叩く。

 片桐     :「もう、ついていったらあかんぞ」
 まな     :「そしたら、まな、寂しいじゃん──寂しいのキライ」

 しがみつきながら、泣きながら。やらしいオジサンはキライだけど、寂しい
のはもっとキライだ。

 片桐     :「あーーー」

 困ったようにオジサンは頭をがりがり掻く。
 それからちょっと悩んで。

 片桐     :「わぁった、おっちゃんがな、寂しかったら遊んでやる
        :わい」

 まなの両肩に手を置いて、覚悟を決めたように言った。

 片桐     :「だからな、しらんおっちゃんにホイホイついてったら
        :あかんぞ、ええな?」
 まな     :「──はぁい」

 急にぴたっと涙が止まる。自分でもなんだかよくわからない。
 でも、ええな? って言い聞かせる顔がパパに似てるような気がして。
 顔をあげてにっと笑う。

 ひたひたと、水の音。

 片桐     :「……え」
 まな     :「じゃ、遊ぼっ!」
 片桐     :「ちょ、ま」

 にへーっと笑ったまなに、オジサンは慌てたけれど、もう遅かった。


解説
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 連続溺死事件に終止符?

 やっぱりまなは壊れたコみたいですが、保護者を得てちょっと安心。


関連ログ
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  狭間全般Wiki - 高技能値の狭間
  http://hiki.kataribe.jp/HA/?HighLevelHazama

  語り部IRCログ #KA-03 20061226
  http://kataribe.com/IRC/KA-03/2006/12/20061226.html#220000

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