[KATARIBE 30545] [HA] 高技能値狭間イメージ断片その18

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage


Index: [Article Count Order] [Thread]

Date: Tue, 26 Dec 2006 00:53:58 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30545] [HA] 高技能値狭間イメージ断片その18
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200612251553.AAA20664@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 30545

Web:	http://kataribe.com/HA/
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30500/30545.html

2006年12月26日:00時53分57秒
Sub:[HA]高技能値狭間イメージ断片その18:
From:久志


 久志です。
ギリちゃん事件簿、っていうほど事件に関わってないけど。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
高技能値狭間イメージ断片その18
================================

 吹利県。
 吹利市中心街から霞山へと伸びた国道沿い、鬱蒼と生い茂る木々の合間に立
ち並ぶ無数のホテル。ごてごてとレゴブロックを積み上げたようなもの、まる
で子供の絵本に描かれた城、モダンなレンガを思わせる作りのもの、外観は違
えど目的はどれもひとつ。
 パトカーの助手席に大柄な身体を詰め込んで、片桐は前方を睨んでいた。
 目的の場所、塗装の少し剥げかけた潰れた円筒型のホテル。
 既に先に到着した現地の制服警官達が、現場入り口の前で仁王のごとく見張
りを務めている。
 踵を正して敬礼する警官達に軽く手を上げて、片桐は中へと入っていった。

 淡いピンク色で統一された部屋。
 部屋の中央に置かれたピンクのシーツダブルベッド、ドアの無い脱衣場とそ
の向こうに見えるシャワールーム。
 一見、何の変哲も無いラブホテルの一室。
 だが。

 片桐     :「こりゃ、まあ……」 

 よれよれのトレンチコートの裾を捌いて、口元を手で軽く押さえる。
 吐き気ではなく、むせ返るような血の匂いから嗅覚を守るための反射的行動。
 部屋の中は、床から、壁から、ベッドのシーツにいたるまで、絵の具をぶち
まけたようにあちこちに飛び散った赤で染まっていた。

 片桐     :「相当なもんじゃのう」 

 見回した先、赤黒く染まった血溜まりの中にちぎれた部品のように転がった
何か――人の、一部。

 片桐     :「……さて、こらあワシらの領分じゃのう」

 現場慣れした鑑識達でさえ、一瞬息を飲む光景。
 ドアの前で小さく両手を合わせた後、靴の汚れを確認し、血溜まりを踏まな
いように注意しつつ部屋へと足を踏み入れる。

 片桐     :「……物騒になってきよったのう……奇妙なほどに、な」


鑑識結果
--------

 吹利県、吹利県警。
 すっかり日の落ちた中、一室に佇む二人の男。
 よれたスーツを窮屈そうに着込んだ、鳥の巣のようなくしゃくしゃのくせっ
毛頭の二メートル近い大柄の男。その向かいに眉根に深いしわを寄せたメガネ
に小太りの中年男。

 鑑識     :「しっかし、まあ……よくもまあこんだけ細かく分断した
        :もんだ」

 彫刻のように刻まれた眉間にしわを更に深めて、つぶやくメガネの男。

 片桐     :「拾い集める身にもなってもらいたいもんじゃな」
 鑑識     :「全くだ」
 片桐     :「……どうじゃ?」 
 鑑識     :「それがなあ」 

 腕組みをしたまま、深く溜息をつく。

 鑑識     :「バラバラになった遺体の肺から大量の水が検出されてな」
 片桐     :「……ほう」
 鑑識     :「……お前の相棒と同じ」

 そこで言葉を止める。ついこの間、男の相棒を死に追いやった原因。
 侵食するように、溢れる……淀んだ水。
 ぎゅっと、片桐が眉をしかめる。片桐の様子を見て、向かいの鑑識の男が軽
く肩をすくめた。

 鑑識     :「……お取り上げ、か?」 

 普通の捜査の手に負えない、人の手の及びつかない事象。

 片桐     :「すまんの、そうなりそうじゃ」 

 椅子から立ち上がって、上着を肩にかける。

 鑑識     :「アンタも無理しなさんなよ」 
 片桐     :「おおよ、無理しても無理し甲斐のない体じゃしな」

 そのまま振り向かずに部屋を出て行く。

 かつて、取り上げられる側だった片桐がはまり込んだ、二度と戻れない出口
の無い迷路。

 『君には、魂がない』

 境界線。
 自分と、他とに引かれた一本の線。
 自らも、人の手に及びつかない何かであることを、片桐は他人事のように感
じていた。

時系列と舞台
------------
 事件現場と、吹利県警での会話。
解説 
----
 断片的なイメージ。

チャットログ
 http://kataribe.com/IRC/KA-04/2006/12/20061222.html#220000

狭間全般Wiki
 高技能値の狭間 http://hiki.kataribe.com/HA/?HighLevelHazama
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。


 ---------------------------------------------------------------------
http://kataribe.com/ 語り部総本部(メインサイト)
http://kataribe.com/ML/ メーリングリストの案内
http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/ 自動過去ログ
Log:	http://www.trpg.net/ML/kataribe-ml/30500/30545.html

    

Goto (kataribe-ml ML) HTML Log homepage