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Date: Mon, 25 Dec 2006 18:02:59 +0900
From: Subject: [KATARIBE 30542] [HA] 高技能値狭間イメージ断片その 15
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年12月25日:16時56分21秒
Sub:[HA] 高技能値狭間イメージ断片その15:
From:Toyolina
どうも、Toyolinaです。
滑り込みでクリスマスネタ。
[HA] 高技能値狭間イメージ断片その15
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シーン案5
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12月は好きな季節だ。街は赤と緑に染まるし、人出も多い。なにより、クリ
スマスがある。
クリスマスの由来であるとか、意義に関して、少女はもう考えたこともなかっ
た。まだ人間だった頃、シスターから聞いたのは遙か昔のこと。今の少女と、
街を行く大半の人々にとっては、年末のイベントの一つでしかない。
特に予約していたわけではなかったけれど、お気に入りのパティスリーに入っ
ていく。パティシェは少女の顔を見るだけで、6号のケーキを用意してくれた。
ケーキを片手に、意識して静かに街を歩く。そうしないと、せっかくのケー
キが崩れて台無しだ。
次に、ワインショップに顔を出す。特に予算を言わなかったが、ソムリエは
少女の表情を見ただけで、ワインセラーから一本取り出してきた。ラベルには、
「ROMANEE-CONTI」*と書かれている。
去年と同じだ、きっといいワインなんだな。程度に考えて、少女はボトルを
受け取る。ワインなんてイヴの夜にしか飲まないから、他と比べて重たい筈の
そのボトルに関して、何の感慨も沸かなかった。
彼と初めて出会った頃。ちょうど、「クリスマスは恋人と過ごす日」である
と、マスコミが持ち上げ始めていたのを思い出す。新聞なんて読んだこともな
いけれど、彼は無邪気にはしゃいでいたものだ。それから三十数年。きっと、
四十年に近い年月。あと何十回、クリスマスを彼と迎えられるのだろう。
彼は老いていく道を選んだ。いつか、別れる道を。
それも仕方ないとは思う。
人間だった最後の日が、何年の何月何日だったのか。
少女は気にしないことにして、もう忘れてしまったけれど、繊細な彼はずっ
と覚えているだろう。そしてその日にはきっと沈んで、声をかけづらくなるに
決まっている。そうして月日が過ぎて、彼はきっと眠り続ける道を選ぶ。そう
確信していた。
厚い木の扉を、小さくノックする。
決して流れることはないけれど、大音量のビッグバンドですら遮る程の扉。
その向こうから聞こえる、出迎えの声。人間であれば、聞き耳を立ててすら
危うい音量だが、少女には十分だった。
髪の色と顔の皺と。彼の姿には、確かに年月がその跡を残している。彼の生
はもう、折り返してしまっている筈だが、彼にも少女にも、それを嘆く気持ち
はない。
ケーキとボトルをカウンターに置いて、得意げに笑う。
彼は、少しだけ咎めるような表情を見せたが、目は笑っていた。
時系列と舞台
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2006年12月24日の夜
解説
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* 本来はEではありません。文字コードのバカ。
淡蒲萄さんのクリスマス。本日の被害総額、推定55万5000円。
狭間全般Wiki
高技能値の狭間 http://hiki.kataribe.com/HA/?HighLevelHazama
淡蒲萄 http://hiki.kataribe.jp/HA/?Usuebi
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