[KATARIBE 30539] [HA] 「高技能値狭間イメージ断片その 13 」

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Date: Sun, 24 Dec 2006 15:33:19 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30539] [HA] 「高技能値狭間イメージ断片その 13 」
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年12月24日:15時33分19秒
Sub:[HA]「高技能値狭間イメージ断片その13」:
From:Saw


[HA]「高技能値狭間イメージ断片その13」
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登場人物
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西海道アハト :犯罪者。
檻宮戒    :少女。

コンビニ
--------
 県道沿いのそのコンビニは周囲に民家もまばらで都合がよかった。
 
「顔出すなよ、戒」
「殺すの?」
「殺さない」

 ニット帽を被ったアハトが車を下り、どこか楽しげに身を乗り出す少女を車内
に押し込めた。

 6台も止められるスペースのある駐車場には、アハトのアンティークなんだか
古いだけなんだかわからないイタリア車しか存在しない。
 時間は午前2時。十字を切って腰に下げた二丁の火縄式拳銃を抜き取る。
 もう10年来使ってる相棒。銘はフラニー&ゾーイー。
 店内には客はいない。いても同じ事だったが。
 ただアルバイトの青年が一人。おそらく奥に待機要員がもう一人。いずれにし
ろ駐車場で拳銃を抜いているアハトの存在には誰も気付いていない。
 監視用のカメラはおそらく4台。レジを破壊するのに一発。あまりに手際がい
いのもまずいので時間差をつけるタイミングを瞬時に組み立てる。

 アハトの両手に刻まれた星と十字架のタトゥーが熱を持ち拳銃と連結。

 Brazing Beat Star──アハトを守護する天使がフリントロックの撃鉄とバレ
ルに宿る。
 交差した手首の延長戦、フラニー&ゾーイーが店舗に向けられる。

「BANG! BANG! BANG! BANG!」

 右、左、右、左とリズムを取ってトリガーを引くアハト。
 反動と共に来る高揚感。目が焼けるようなマズルフラッシュ。硝煙の匂い。そ
れだけは昔から何も変わらない。
 4発の銃弾はそれぞれ弧を描きながらガラスを叩き割り、一発は店員の側頭部
を殴打して昏倒させ、一発は左手前のカメラをぶち抜き、一発は入り口付近のカ
メラを破壊し、一発はチーンという間抜けな音を立ててレジを叩き開ける。

 アハトは顔の半分を覆うようなサングラスをつけて自動ドアからゆっくり入っ
ていく。店内にはおなじみのジングルベルがかかっていて、おそらく黒人であろ
う男性ボーカルが深く低くブルース調に歌い上げていた。
 スタッフルームから驚いたような人の気配。それを一発で確実にぶち抜く。
 顎をプロボクサーのパンチに匹敵する衝撃が襲い、吹き飛び昏倒する店員。
 アハトの銃撃はその軌道も破壊力も思うがままに自在に変わる。そして確認す
るまでもなくその手応えはアハトに返る。
 奥のカメラの位置を確認。順々に打ち抜いたのが計三機。最初の二機と合わせ
ると予想より一機多かった。乾いた発砲音はジングルベルのリズムに合わせるよ
うにして続き、床やカウンターに敢えて残した弾痕が素人臭さを演出する。ただ
の拳銃による連続強盗だと思われていればそれに越した事はない。
 一通り破壊を終えると、店内にかかる曲もバラード調の女性ボーカルに変わっ
た。
 銃を構えたままレジの金を掴む。手に入ったのは千円札を合わせてもたかだか
7万数千円。これで何日凌げるかは今は考えない事にする。

 そのまま店を去ろうとして、アハトは頼まれていた事を思い出した。
 左手の銃を腰にしまい、カウンター脇の赤い箱を一つ回収。
 連続銃撃強盗三度目の犯罪は、結局翌日の朝弁当を運びに来る業者が乗り付け
るまで発覚することはなかった。

 車に戻ったアハトは金をダッシュボードに突っ込み赤い箱を戒に手渡す。エン
ジンは掛けっぱなしだったのですぐさまに出発。何事もなかったようにほとんど
車の通らない深夜の県道に戻る。

「お帰りアハト。殺した?」
「殺してない」

 コンビニでの滞在時間は計3分。それでもどうしようもなく長い時間。出来れ
ばもう繰り返したくはなかったがきっとやらざるを得なくなるのだろうとアハト
は思う。

「ねえ、コレ何?」
「ケーキ」
「苺の?」
「多分ね。今食うなよ、こぼすから」
「……」
「そんな目で見るなよ」
「クリスマスだからいいことにしよう」
「勝手にしろ、馬鹿」

 戒は赤い箱に頭ごとつっこんでホールのケーキと格闘し始めた。

解説
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 高技能値狭間イメージ。
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