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Date: Sat, 23 Dec 2006 01:45:39 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30534] [HA06P] エピソード『ヤクザ見物』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年12月23日:01時45分39秒
Sub:[HA06P]エピソード『ヤクザ見物』:
From:久志
久志です。
吹利県警のお話。ふっと思いついたネタを即EPにしてみた。
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エピソード『ヤクザ見物』
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登場キャラクター
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本宮和久(もとみや・かずひさ)
:吹利県警生活安全部巡査の生真面目さん。犬にたとえると豆柴。
相羽尚吾(あいば・しょうご)
:吹利県警刑事部巡査。ヘンな先輩。犬というか狼。
県警の方々や所轄の方々やゲストの人達
:下手なヤクザよりヤクザらしい方達。
ヤクザさん達
:居た事すら忘れられてます。
休憩室にて
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吹利県、県警本部。
本宮和久は業務の合間のひと時を休憩室で過ごしていた。
和久 :「ふぅ」
缶コーヒーをひと口飲んで息をつく。
このところ、年末に向けての取り締まり強化や安全呼びかけ、警備などで忙
しい日々が続いていた。
和久 :「今日は早く帰れるかな……」
時計は既に七時を回る頃。
ふと。
相羽 :「いよう、豆柴」
和久 :「わっ……相羽さん」
ふいに背後から現れたのは、刑事部の相羽。
和久 :「あ、あの、どうしたんですか?」
相羽 :「ふふふ、豆柴、今日暇?」
和久 :「え?あ、一応、ひと区切りつきましたから」
飲みの誘いか、とふと思った和久だったが。
相羽 :「よおし、豆柴。ヤクザ見に行こう、ヤクザ」
和久 :「はい?」
まるでパンダ見に行こうとでも言わんばかりのノリで物騒なことを言い出す。
和久 :「や、ヤクザって……いったい」
相羽 :「いやあ、聞いた話なんだけどさあ。今日近郊のヤクザ屋
:さん達がシークレットで集まって食事会するって話仕入れ
:てさあ」
にやにやと、いかにも楽しくて楽しくてしょうがないという表情を浮かべる
相羽を見て、思わず汗が伝う。
和久 :「シークレットで食事会……って」
相羽 :「ね、見にいこ、見にいこ。別段悪さするわけじゃないん
:だし、こっそり覗きにいこ」
和久 :「覗きに、って、ヤクザ……」
どうしてそんなに子供みたいに楽しみにしてるんですか、という言葉をなん
とか飲み込みながら。この様子だと断れそうに無いな、と他人事のように思う
和久だった。
見物多数
--------
吹利県、とある店にて。
相羽 :「まだかねぇ」
和久 :「はぁ」
テーブルに向かい合って座る男二人。片や、表情から仕草からなにから全身
でわくわくと楽しみに待ち受けてる相羽と、冷や汗を浮かべている和久。
和久 :「……ところで、ヤクザの人達が来るって、どこで聞いた
:んですか?」
相羽 :「ん、ああ。仲良くしてる情報屋さんがねえ」
上機嫌で煙草をふかしながらいまかいまかと見回す相羽の姿に、思わず溜息
が出る。
和久 :「……それにしても、な、なんか……ここ、怖い人多くな
:いですか?」
相羽 :「そお?(くっくっく)」
思わず首をすくめて辺りを見回す。いくつか埋まったテーブル席には、和久
らの他にはいかにもいかつい強面の男達で占められている。
ふと。
片桐 :「……おう、豆柴。おのれもきとったんかい」
和久 :「わっ」
相羽 :「お、ギリちゃんも着いたん?」
飛び上がって振り向いた先、二メートル近い骨太の大柄な体にパーマ頭の男
がぬっと立っている。吹利県警生活案全部、風俗事犯担当の片桐巡査。相羽の
同期であり『世話焼きギリちゃん』のあだ名を持つ強面ながらも頼れる兄貴肌
の先輩でもある。
和久 :「か、片桐さん……なんで」
片桐 :「おう、相羽の奴が『今日ヤクザ来るよ、見においで』
:ちゅうメールよこしおってな」
和久 :「……相羽さん(汗)」
相羽 :「ほら、県警お膝元で舐められちゃあ、恥じゃん?」
にやにやと笑う相羽の視線が、他のテーブル席のいかつい男達をちらちらと
見る。その目は牽制するというよりは、歪んだ親しみのこもった、ような。
片桐 :「なんじゃ、あっちは葛城署の所轄連中どもかいな」
和久 :「え」
思わず片桐が目をやった先を見る。
スキンヘッドにスーツを着込んだ見るからに威圧感のある男と向かいに座っ
たサングラスの男二人組み、片方のサングラスの男が片桐と相羽に向かって小
さく片手を挙げた。
相羽 :「葛城署のたっつぁんとトシさんだよ。サングラスがトシ
:さんね?覚えときなよ、豆柴」
和久 :「は……はい」
一瞬、脱力して。はっとなる。
和久 :「あの、ひょっとして他の……あの窓際にいる人達とか向
:うの席の人達も、ひょっとして……」
相羽 :「そそ、鋭いね」
片桐 :「窓際におるのが伊吹署のおいやんとしげっちじゃの」
相羽 :「向うの席にいるのが……ああ、京都府警のヒデさんと伸
:さんだねえ、こんなとこまで足伸ばして」
和久 :「…………あの、皆さんわざわざ」
相羽 :「みんな暇人だねえ」
片桐 :「この忙しいのに暢気なもんじゃのう」
相羽 :「そうそう、忙しいくせに暇人だからねえ」
和久 :「いえ、あの」
あんたらもその暇人ちゃうんか、と言いたいのを飲み込んだ。
その時。入り口のドアベルが鳴る音が響き、同時に入り口付近の空気がざわ
ついた。いかにも畏怖するような、息を飲むような音。身を引き締めるような
緊張が走るのを和久は肌で感じた。
和久 :「……来たっ?」
一瞬身を硬くする和久だった、が。
そこに現れたのは。
尚久 :「やあ、相羽くん。和久も」
史久 :「……やっぱり」
小池 :「……まったく」
ボルサリーノのソフト帽を持ち、トレンチコート姿の父が軽やかに片手を挙
げて立っている。その後ろにつき従うように白髪に黒コート姿の小池の姿と、
額に手を当てて溜息をついている兄・史久の姿が見える。
和久 :「と、父さん……ど、どうして……」
立ち上がりかけて真っ白になってる和久を横目に、テーブルに近づいて目を
輝かせながら口を開く。
尚久 :「相羽くん、ヤクザはどこだい?」
まるで楽しみでしょうがないという顔でちらちらと店内を見渡す姿。
相羽 :「まあ、もうそろそろかなー」
片桐 :「しっかしそこらのヤクザも逃げ出す面子じゃのう」
相羽 :「怖いよねえ」
アンタがいうか、と正直心の中で叫ぶ豆柴だった。
その後。
ヤクザは来たものの、それまでの面々の迫力に圧倒されたのと毒気を抜かれ
たことが相まって、本物のヤクザもまるっきり普通のおじさんにしか見えない
豆柴だった。
時系列
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2006年12月中旬。
解説
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ヤクザ顔負けの人達。
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以上。
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