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Date: Mon, 4 Dec 2006 20:27:53 +0900 (JST)
From: Subject: [KATARIBE 30432] [HA06N] 小説『最終課題』
To: kataribe-ml@trpg.net
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2006年12月04日:20時27分53秒
Sub:[HA06N] 小説『最終課題』:
From:輝士都
きしとです。
お師匠からの最終課題。
未来への前進と、過去との別れを含んだ課題です。
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小説 『最終課題』
登場人物
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佐上 氷我利(さかみ・ひがり):
:佐上雑貨店の店長代理。記述式魔導術の使い手。
緊急招集
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「セリフィス師匠、氷我利参りました」
急に呼び出され、不機嫌そうな声で言う氷我利。
「あぁ、来ましたね。」
「それで、急に呼び出したからには急用なんですよね?」
「急ぐわけでも無いのだけれど……氷我利は私の性格は
良く知っているよね? 」
「……」
苦い顔をして黙る氷我利。
この氷我利のお師匠様は優秀な魔術師ではあるのだが……
こう、重要な仕事以外をぽろっと忘れる事があるのだ。
今回の話は重要ではないにしても忘れると氷我利が困ること、そういう事
なのだろう。
「まぁ、それはそれとして。はい。」
乱暴においたらドスンと音を立てそうなハードカバーの本を机に置いた。
よく見ると、氷我利が常に持ち歩いている魔導書と装丁が同じである、
違うのは氷我利の魔導書は赤を基調としているのに対し、この本は緑を基調
としていることだ。
「記述式魔導術用の魔導書? 」
「ご明察、といっても見たまんまだけど……これを弟子にあげよう」
「はぁ……って真っ白じゃないですか」
「中身があるものを渡しても意味が無いからですよ」
「どういうこと……ですか?」
「今、弟子が持ってる魔導書は私が書いたものだと言うことは
知ってるよね?」
「え、えぇ……」
「うん、同じ事をしてもらおうか」
「えぇぇ!?」
「あと、書き終わったら私の書いた魔導書は返してね」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!?」
「……何を驚いてるの……」
「いや、だって……その……」
「これがうちの最終課題なの、ちゃんと成し遂げなさい?」
「は、はい……」
「……はぁ……良い? 氷我利。今あなたが使ってる魔術、不満に思ってる所は
無い?」
「え……あー……いや……その……」
「言わなくて良いから、必ず何かあるはず。それの解決方法を考え
新たな魔導書に改良された記述式魔導術を書き込みなさい。」
「分かりました。」
「あぁ、出来上がったらちゃんと複製しておくのよ?才能ありそうな奴が
居たらその人となりを調べて後継者に相応しいと思ったら複製を
拾わせなさい?」
「ぉぃぉぃ……って、まさか……師匠もそうやったんですか?」
「苦労したのよ〜?偶然を装って目的の人物に拾わせるのって……まぁ、
あなたの場合は夜中に散歩したりしてたから比較的らくだったけど」
「……えーと、何でそんなことするんですか?」
「自力で解読するくらいの根性のある奴じゃないとうまくいかないから」
「……(そういうものなのだろうか)」
「まぁ、後継者作る作らないはともかく自分なりの魔導書を作るのは絶対に
やりなさい」
「分かりました……」
帰り道
------
……バタン
やや落ち込んだ感じで師匠の家を出る氷我利。
セレーナを箒形態に変形させゆっくりと飛ぶ。
「……うーん……」
『氷我利、何を悩んでいるのですか? 』
魔導書を開いて悩んでいると、そんな文字が魔導書に浮かんだ。
「お前ともお別れなのかなぁと……」
『最終課題を終えたらそうでしょうね』
「んな、あっさりと……」
『これは私が生み出されたときに決まっていたことですから』
「複製……あぁ、そっか……」
『そうです、私の存在は氷我利の成長の為にあり永久に共に居るためでは
ありません』
「……はぁ……」
『氷我利、私を手放したくないからといって魔導書の作成に手を抜いたら
その時は氷我利との契約を破棄します』
「……わかってるよ……言うと思っていたよ」
『ならば、成すべき事は分かっていますね?』
「あぁ、俺が作る魔導書はもっと素直なせいか……うぎゃぁぁぁぁぁ!」
『……もう一度お願いします、俺が作るときは?』
「お前のような……素敵な魔導書に……したいと思います……(げふっ)」
『良い返事です』
雷撃をくらって放心しかけた頭で思う。
……素直じゃないな、と。
時系列
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2006年12月
解説
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お師匠様から最終課題を言い渡される氷我利。
ま、がんばれ。
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