[KATARIBE 30398] [HA6N] 小説『古書店・蜜柑堂』

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Date: Wed, 29 Nov 2006 01:55:18 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30398] [HA6N] 小説『古書店・蜜柑堂』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年11月29日:01時55分18秒
Sub:[HA6N]小説『古書店・蜜柑堂』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
なんとなく書いてみました。

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小説『古書店・蜜柑堂』
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登場人物 
-------- 
 関口聡(せきぐち・さとし):
  片目は意思と感情を色として見、片耳は異界の音を聞く。 
 高瀬夕樹(たかせ・ゆうき):
  高校生で歌よみ。詩歌を読むと、怪異がおこる。 
 形埜智明(かたの・ともあき):
  古書店蜜柑堂のアルバイト。形埜千尋の息子。高瀬、関口両名の一年先輩。
 ケイト: 
  蒼雅紫が生み出した毛糸のよく分からない生き物。癒し系。 
 
本文
----
 学校自体は休んでいた間、僕はそれでも学校の図書室に入り浸っていた。
 学校側には両親の手紙と医師の診断書を提出し、最後に先生と多少話した。
 それで僕は自由に図書室に入ることが許されるようになったわけだから、こ
れは相当僕に有利な取引だったと思う。
 何冊も読むうちに、貸し出しカードの名前に、ある程度見覚えが出来てきた。
その中に繰り返し繰り返し出てくる名前のうちの一つが『形埜智明』。ファン
タジーにSF、ミステリにドキュメンタリーと、何故かこの人は僕の借りたい
と思った本を、先に借りているようだった。

 その先輩(僕よりも一学年上)に会ったのは、数ヵ月後だったと思う。
 図書室に入った新刊、これを取ろうとして、ほぼ同時に手を伸ばした……と
言うとまるで漫画みたいだけど、実際そうやって会ったのが形埜先輩だったの
だ(後から先輩も、『これでお前が女の子だったら、そのまんま一昔前の少女
漫画みたいだよな』と笑っていたものだ)。
 その後、同じ読書傾向であることを話した。借り出しカードの名前のことを
話すと、先輩は結構面白そうに聞いて……そして、ふと、口を開いた。

「ということは、関口は古本屋にも行くか?」
「行くことは、あります」
「そしたら、蜜柑堂知ってるか?」
「みか……あ……ああ、知ってます」

 商店街からちょっと外れたところ。長いことシャッターの閉まった店舗らし
きところがある(元は本屋だったらしい)。その前に立つと、丁度冬場には蜜
柑の匂いが香る。その匂いを辿るように進むと、通りに面した処に大きな蜜柑
の木のある店がある。
 つまり、蜜柑堂の名前の由来は、そこから来ているらしい。

「俺、そこでバイトしてるんだよ」
「へえ」
「結構面白い本が入るんだ。俺が居る時に来たら、本探すの手伝うよ」
「お願いします」

 そうやって、蜜柑堂に、週に一度かそこら行くようになって……そろそろ半
年くらいは過ぎる頃。

              **

「……高瀬君は、クリスマスは、創作部のほうに行くのかな」 
「…………ん?」

 表の創作部は、どうやら紫先輩の家でクリスマス会をするようだ。丁度その
時はクラブを休んでいた高瀬君に、後で御厨先輩が話していたようだけど。
 とりあえず、高瀬君が本から目を上げて返事をするまでに、少々の間があっ
たのは……これはまあ、いつものことではある。

「もしクリスマスの時ヒマなら……面白いことやってみないかな」
「面白いこと?」 
「本のプレゼントしないかな、互いに」 
 本、と聞いた途端に、高瀬君の感情球は明度と彩度がぐんと上がる。確実に
興味を引いた、と見てから続きを口にする。

「予算は2000円まで。どっちが相手を驚かす本を選べるか」 
 ふむ、と、高瀬君が小さく頷く。
「確かにそれは面白そうだね」 
 くるくると、楽しげな明るい緑の柳葉が、幾筋も流れては廻っている。
「そしたら、のる?」 
「驚かせる自信はないけど、のる」 
「よし」 


『年末大売出し?』
『うん。なんか店長がそうしようと言い出したんで』

 皆が必死になっている中、形埜先輩は案外呑気な顔でバイトをしている。実
はもう推薦で大学が決まっているから余裕なんだよなあ、とは、これは先輩と
同じクラスの人が(多少の嫉妬と共に)言っていたことだ。

『面白い本が見たかったら来いよ』
『そりゃ、是非』

 多分そこでなら、本当に面白い本が買える。本当に面白い本、高瀬君が読ん
で喜ぶ本が。


 気が付くと、ケイトちゃんが何となく首を傾げてこちらを見ていた。
「何?」
 ふわっとケイトちゃんの周りに、丸い感情の玉が浮かび上がる。ちょっと不
安、ちょっと楽しみ、ちょっと心配。
「ああ、ケイトちゃんにもプレゼントするよ、本」
(わあいっ)
 途端にケイトちゃんの周りが、ほんわりと卵色に輝きだす。言葉にするより
も、遥かに判りやすいサイン。

「……ただ、ケイトちゃんにページをめくれる本ってのは、ちょっと難しい」
「だね」

 がーん、と、文字で書いてあるくらいはっきりと、ケイトちゃんがショック
を受けているのが、これまたおかしくて。

「大丈夫、ちゃんと探すから」
 手の上であやしながら、ふと思う。
 古書店蜜柑堂。ケイトちゃんを連れて行ったら……やっぱりまずいだろうか。


時系列
------
 2006年11月下旬〜12月はじめ

解説
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 古書店蜜柑堂、第一話……であるといいんですが。
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 てなわけで。
 続きはまだ未定です。

 ではでは。
 


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