[KATARIBE 30393] [HA06N] 小説『家族風呂・ sideB 』

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Date: Tue, 28 Nov 2006 00:25:49 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30393] [HA06N] 小説『家族風呂・ sideB 』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年11月28日:00時25分49秒
Sub:[HA06N]小説『家族風呂・sideB』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
流します。

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小説『家族風呂・sideB』
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登場人物
--------
 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :吹利県警刑事課巡査。
 相羽真帆(あいば・まほ)
     :自称小市民。多少毒舌。10月に入籍。 
 赤ベタ・青ベタ・メスベタ
     :相羽家で飼われていたベタの霊。真帆の能力で実体化する。
 雨竜  :迷子の竜。まだまだ子供。きゅうきゅうと鳴く


本文
----
 
 山の中の温泉宿として、ここは有名なのだ……と、来る前に聞いていたけど。

「浴場、露天風呂らしいよ」
「わあ」
 座卓の上に広げられた、宿の説明を読んでいた相羽さんが言った。
「でさ、ここ貸切の家族風呂らしいね」
「え?」
「ほらこれ」
 家族風呂は部屋ごとに貸切。24時間いつでも入れる、とある。
「……そんなのあるんだ」
 温泉にそう度々行ってたわけじゃないから何とも言えないけど、こういうの
があるとは知らなかった。
「丁度いいじゃん」
「でも……貸切ってそんな……新婚みたいなお風呂にしないでも」
 そういう需要があるのは良く判るけど……なんだか。
「いいじゃん。おれらも、こいつらもゆっくり楽しめるし」 
 つくつく、と、相羽さんはベタ達をつつきながら言う。
 確かにここまで来てこの子達に『お風呂はダメ』と言うわけにもいかないし、
そう考えると貸切ってのは丁度いいのかもしれない。

「あ、じゃ、先どーぞ」 
 言った途端、相羽さんはこちらをじーーっと見た。
「一緒じゃないの?」 
「…………はい?」 
「風呂、広いよ」 
 いやそういう問題じゃなく……ってなんか根本が食い違ってる気がする。た
だ、それを言って通じるだろうかって考えるとちょっとどうしたら……
 ……ええとええと。
「あのね、相羽さん」 
「ん?」 
「……恥ずかしいんですけど、普通に」 
「まあ、お前さんはそうだろねえ」 
 お前さん『は』……と言われると、妙に不安になるんですが。
「……相羽さんは?」 
「まあ多少はね」 
 軽く頷かれて、非常にほっとしたのも一瞬で。
「でもさ、たまにはいいんじゃない?」 
 ……そうくるかっ。
「たまにって……っ」 
「まあ、そんな恥ずかしいなら無理強いしないよ」 
 そう言って、こちらをじっと見てる。

 無理強いはしないだろうなって思う。嫌だって言ったらそれで終いだと思う。
 ……だけど。
 一週間徹夜させた後に夢のことで山ほど迷惑かけて、その後もまた出張で、
ようやく休みを取ってここに来たって思うと……そりゃ、この人の言うことは
出来るだけ聞くべきだと思う。
 ……そりゃ、思うんだけど。

「……相羽さん、視力いいもんね……」 
「ん?」 
「ほら、あたしは、眼鏡取ったら……殆ど見えないから」 
 あたしは相羽さんがよく見えないけど、相羽さんはこちらが見えるわけで。
もしおんなじくらい見えないまんまだったら、こちらどれだけ気が楽かって思っ
た……んだけど。
「こけないように手ひいてあげるよ」 
 ……問題がすごく違うんですがっ。

 時折、思う。
 何でだろうって。
 それは確かにこの人と家族で、だから一緒に居たいと思うけど。だけど別に
一緒にお風呂入って何が面白いのかなとか……なんかもうぐちゃぐちゃになっ
た頃に。
「だめ?」
「だっ………」
 何でそんな、残念そうな顔でこちらを見るんだろう。
 そんな残念に思うようなこと、何も無いのに……ってとこまで考えたら、駄
目って言い張るのは自意識過剰とかそういうことになるのかな、いやでも正当
に恥ずかしいってだけなんだけど、とか……
 ……ああもうっ。
「…………だめとは、いい、ません、けど」
「けど?」
 恥ずかしいんです。判らないんです。そんな何が嬉しくて……って確かにそ
れは色々言えることはあるけど。
 理由はあたしの理解の範疇外だけど、相羽さんはそうしたいって言う。
 ……だから。
「ゆっくりつかろ?」
「………………はい」
 言いながら、顔が上げられないままだったけど……だけど相羽さんの声が、
ふわっと明るくなったのが判る。
「折角の露天だしさ、のんびりしよか」 
「………………うん」 
 恐る恐る、顔を上げる。
 どうして、と言ったら嘆かれるだろうか。
 それくらい……嬉しそうな顔で、相羽さんは笑った。

時系列 
------ 
 2006年9月

解説 
----
『家族風呂』の真帆視点。
********************************************

 では。


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