[KATARIBE 30321] [HA06N] 小説『端境の日』

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Date: Mon, 06 Nov 2006 00:33:50 +0900
From: furutani@mahoroba.ne.jp
Subject: [KATARIBE 30321] [HA06N] 小説『端境の日』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <20061106003337.916D.FURUTANI@mahoroba.ne.jp>
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2006年11月06日:00時04分25秒
Sub:[HA06N]小説『端境の日』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
色々溜まったログを、まとめてくっつけて……としてる割に、
全くふつーの、相羽家の風景です。
……つーかみんなぐうぐう寝すぎ(笑)。

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小説『端境の日』
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登場人物 
-------- 
 相羽尚吾(あいば・しょうご) 
     :吹利県警刑事部巡査。ヘンな先輩。 
 相羽真帆(あいば・まほ) 
     :自称小市民。多少毒舌。去年十月に入籍 
 赤ベタ・青ベタ・メスベタ 
     :相羽家で飼われていたベタの霊。真帆の能力で実体化する。 
 雨竜  :迷子の竜。まだまだ子供。きゅうきゅうと鳴く。 


本文
----

 土曜日、日曜日。
 相羽さんは昏々と眠り通した。
 そしてあたしも……相当の間寝てたと思う。


 土曜日は、二人して寝坊した。
「…………ってっ」
 でしでし、と、突付かれて起きたらもう10時。慌ててご飯の支度をして、
ベタ達と雨竜が群がったところで、相羽さんを起こして。
「ご飯食べたら、また寝ていいから」
「……うん」

 ししゃもの焼いたのと、大根おろし。
 何だか二人してもそもそと食べて、お茶飲んで。

「これがお昼みたいなもんだから……夜を早くするね」
「……ああ、そだね」

 お皿を洗って、台所を片付けて。
 お茶と葛餅を持ってゆくと、もう相羽さんは新聞を開いて……その前でうと
うととしていた。

「肩、揉もうか?」
「頼むわ」
 がちがちに凝った肩を叩いていると、こちらの手が痛くなってきた。

 一週間、殆ど徹夜。帰ってようやく一日寝たと思ったら夢に落ちたあたしを
助けてくれて……そりゃもう精神的にもがっくり疲れたと思う。
 それにまた、出張、研修ときたものだ。

「……お疲れ様です」 
「ん、ありがと」 
 呟く声は、半ば眠り込んだような声で。

「……寝る?」
「うん」
 じゃあ、と言う間もなく。
「ねえ、膝枕して」
「……はい」
 
 頷くと、すぐに頭が膝の上にのっかる。腰のある髪が額の上で乱れたのを撫
で付けると、相羽さんはにっと笑って、目をつぶった。
 そしてもう、あっという間に寝息に代わる。
 
 疲れてたんだな、と思うのと。
 それと……何だか本当に、手負いの狼みたいだな、と思ったのと。
(治るまでじっと眠り続けるところとか)
(取れるなら、多分栄養を取って)

「……疲れとか、全部取れるといいのに」
 額の際に、うっすらと汗をかいて、相羽さんは眠っている。

 気が付くと、ベタ達と雨竜が、相羽さんのおなかの上で丸くなっていた。
 なんだかすっかり、久しぶりに帰ってきたお父さんに甘える子供達、みたい
で、可笑しかった……けど。
 ふと、思い出して、笑うに笑えなかった。

(オ前ナンカカラ、生マレテヤラナイ)

 その言葉が段々、重くなる。


 相羽さんはなかなか起きなかった。
 正直、この体勢だと何もできない。相羽さんを起こすわけにもいかないし、
こうなると相羽さんの上の子供達も起こすわけにはいかない。
 だんだんと……あたしまで眠くなる。

 一週間、考えてみたらあまり眠ってなかったように思う。悪夢や何やかやが
重なって……それで。
(相羽さん)
 この人は、悪い夢を見なかったろうか。研修の間、仕事はきつくなかったっ
て言うけど、これだけ疲れてて、その疲れが取れてないって。
(でも、無事に帰ってきてるし、少しは元気になってるから)
 膝の上の頭は、いつもより少し温かい。うろうろと、つまらないことを考え
ているうちに、その温みがゆっくりと広がって……

 そしてがく、と、思いっきり傾いたところで目が覚めた。

(っと待った)
 慌てて膝の上を確認する。相羽さんも起きてない、ちびさん達も起きてない、
よし確認……で、寝ちゃいかん。
 と、思った、んだけど。

 動いてないとはいえ、眠かった期間は長かったようで。
 あたしはそれから、何度か目を覚ました。つまり何度か……寝てたらしい。
 で、最後にがくっとなって慌てて体勢を元に戻した時には、相羽さんが起き
上がって目をこすっていた。


「良く寝れた?」
「うん」
「じゃあ、お茶でも淹れようか」
 それじゃお湯沸かして、お菓子用意して、と立とうとして……
(あ、駄目だ)
 うとうとしてたからこちらも気が付かなかったけど、時計を見たら2時間く
らいそうしていたみたいで……完全に足がしびれてる。
「2時間?」
 やっぱり時計を見たらしい、呆れたような相羽さんの声。
「こんなになるまで我慢しなくていいのに……」 
「……いや、我慢とかじゃなくて……」 
 結局、その間、こちらも結構うとうとしてたわけだし、案外寝てたんです…
…と言う間もなく。
「寝てな、足しびれてるでしょ」 
 ふわりと身体が浮く。そのまますとんと寝かされて、頭の下には相羽さんの
腕があって。
「……いやあの……ほんとに寝ちゃうから」 
「いいよ、寝てて」 
「でも、片付けとか、買い物とか」 
 週明けに出かけるなら、用意とか色々あるし、今日の夕ご飯も買い物行かな
いと、とか考えて……いるのに。
 撫でてもらう手が気持ちよくて、本当に安心できて。
 溶けるように眠くなる。

 そういえば昨日はあの悪夢を見なかった。
 耳元で聴こえる鼓動と、自分のそれより少し低い体温。
 それだけで……安心したんだろうと思う。

 かさかさ、と、音がした。
 眠い目でなんだろうと思ってそちらを見ると、メスベタが一面に新聞紙を並
べていた。新聞紙だけじゃなくて広告まで広げたところで、今度はくるくると
それを丹念に裏返してゆく。

「……メスベタちゃん、それくちゃくちゃにはしないでね」
 まだ、相羽さん読んでる途中の筈だし……と付け加える前に、メスベタは、
こちらを見てこっくりと頷いた。
 なんか、すごく素直だな、と思って。
 ああ、この子も相羽さんが居るといい子なのかなって少し思って……

 ……そのまますとんと記憶が切れている。


時系列
------
 2006年9月はじめ 

解説 
---- 
 休みの日の、相羽家の風景。なんということもなく眠ってます。
**************************************** 

 てなもんです。
 こういう普通の日、土曜日から日曜にかけて、また続くかもしれません(えうえう)





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