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Date: Sun, 22 Oct 2006 23:35:53 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30260] [HA06N] 小説『白魚の奇跡』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200610221435.XAA53068@www.mahoroba.ne.jp>
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Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2006年10月22日:23時35分53秒
Sub:[HA06N]小説『白魚の奇跡』:
From:久志
久志です。
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小説『白魚の奇跡』
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登場キャラクター
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相羽尚吾（あいば・しょうご）
：吹利県警刑事部巡査。ヘンな先輩。
相羽真帆（あいば・まほ）
：自称小市民。多少毒舌。去年十月に入籍
赤ベタ・青ベタ・メスベタ
：相羽家で飼われていたベタの霊。真帆の能力で実体化する。
雨竜 ：迷子の竜。まだまだ子供。きゅうきゅうと鳴く。
本文
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抱きしめたのか、崩れ落ちたのか。どちらかはわからない。
だが、そこにいて今自分の側にいるのは間違いなく真帆だ。
「まほ……」
半分消えかけた視界の中、泣きながらしゃがみこむ真帆の腕を掴む。
「……めを、さませ」
声にならない悲鳴をあげたまま、両手で頭を抱えていやいやと首を振る。
「足りなかった、追いつかなかった、出来なかった…………っ」
ぼろぼろと零れた涙が頬をつたって落ちる。
「……おまえがもどらないと……みな……おれも……」
言葉がうまく形にならず、喉からこみあげてきた血が口の端から溢れて真帆
の服を汚した。
「いやぁぁぁぁぁあっ！」
「もどれ……おれがくさりはてるまえに」
「……いや」
「……ここは、おまえのゆめのなかだ」
ゆっくりと真帆が首をふる。何度も、何度も。振るたびに勢いが増して振り
払うが如く頭を振って。
『真帆さんが目を覚ますまで、あなた達は現に戻ることはできません』
どう言えば、こいつは信じてくれる？
「おまえがもどらなけれれば……おまえも、おれもきえる……」
「戻るって、何」
「めをさませ」
「夢の中って、何」
「おれは……ぜったいにしなない」
「…………嘘つきっ！！」
顔を覆って、泣き叫ぶ真帆。
こんな姿で、何の説得力もないのはわかっている。
どう言えば、お前はわかってくれるのか。
「……まほ」
ふと、真帆の腕を掴んだ手が淡い光を帯びた。
半分指が腐り落ち、皮膚がごっそりと剥げ落ちたはずの手が、内側から光を
放ちながらゆっくりと再生していく。
指の腐り落ちた手が。
半分骨が覗きかけた足が。
視界の半分に霞がかかった目が。
ふと見上げた目の前、ヒレをはためかせながら全身から光を放つ白い影。
「あ……」
乾ききった喉が癒えていく。
「……真帆」
真帆が涙を浮かべたまま、目を見開く。一瞬遅れて、転がるように飛びつい
てきた。
「……死んじゃったと思ったっ……」
「死なないよ」
しっかりと真帆の体を受け止めたまま頭を撫でる。
「真帆、一緒に戻ろう」
「…………だいじょぶ、なのね？」
「大丈夫」
手を握る。
「もう、死なないのね？」
「絶対に」
ぎゅっとしがみつく真帆の背に手を回して。
「死なないよ、絶対」
時系列
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2006年8月頃
解説
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真帆に追いついた相羽、メスベタの力で復活する。
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以上。
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