[KATARIBE 30256] [HA06N] 小説『追跡』

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Date: Sat, 21 Oct 2006 22:17:10 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30256] [HA06N] 小説『追跡』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年10月21日:22時17分10秒
Sub:[HA06N]小説『追跡』:
From:久志


 久志です。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『追跡』
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登場キャラクター 
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 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :吹利県警刑事部巡査。ヘンな先輩。
 赤ベタ・青ベタ
     :相羽家で飼われていたベタの霊。真帆の能力で実体化する。
 雨竜  :迷子の竜。まだまだ子供。きゅうきゅうと鳴く。

赤い影
------

 吐き出した息は、じっとりと熱を持っていた。
 喉の奥から湧き上がってくる、鼻をつく鉄臭い血の匂いと混ざり、吐き出す
度に乾いた喉が引き攣るのを感じる。

 さんさん、と後から後から降り注いでくる赤い影。
 じわじわと降り注いでは肌を通じて音もなく沁みこんで、触れた所が錆びつ
くように赤茶けた色に変色し、外から、中から腐ってゆく。

 踏みしめた足から響く、骨と骨が擦れる音と崩れかけた肉が軋む音。

「……まほ……」

 搾り出すように出た声は語尾が掠れて。
 目の前に映る赤い鳥居と石畳の色がどろりと解けたように滲む。

「……どこに」

 伸ばした手は既に半分ほど指が腐り落ち、左の手の甲から手首にかけては、
ごっそりと皮膚が剥げ落ちて、薄黄色い骨が剥き出しになっている。
 上下の区別、左右の区別、何もかも仕切りが取り払われてしまったかのよう
な希薄感の中、それでも前へと足を踏み出す。

 真帆。
 
 石畳を汚す、赤黒い血。

 それでも。

「きゅぅっ!」
 肩を揺らして小さく鳴く声。
 
 薄れ掛けた視界の目の前、ばたばたとヒレをはためかせる赤と青のベタと必
死に肩を揺らす雨竜。
 何度も何度も方向を変えながらいったりきたりをくりかえす青と赤。
 肩を揺らしながら甲高い声で鳴く雨竜。

「……まほが、いる……のか」
「きゅぅぅっ!」

 体を膨らませる青、ヒレをばたつかせる赤、必死に鳴く雨竜。

「……わかった……」
 微かに震える膝に力を込める。

 真帆。
 絶対に。



時系列 
------ 
 2006年8月頃
解説 
---- 
 真帆さんを追いかける先輩。ベタず&雨竜に導かれる。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上。 




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