[KATARIBE 30246] [HA06P] 吹利学校高等部文化祭 2006 :珊瑚・鋭司篇修正版

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Date: Sun, 15 Oct 2006 19:26:37 +0900 (JST)
From: ごんべ  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30246] [HA06P] 吹利学校高等部文化祭 2006 :珊瑚・鋭司篇修正版
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2006年10月15日:19時26分37秒
Sub:[HA06P] 吹利学校高等部文化祭2006:珊瑚・鋭司篇修正版:
From:ごんべ


 ごんべです。

 標記の持ち寄り企画の件、珊瑚と鋭司のパートの修正版を流します。
 ハリさん、チェックありがとうございました。


 引き続き、持ち寄り企画は下記Wikiページで承っております。
http://hiki.kataribe.jp/HA06/?FuriHighSchoolCulturalFestival2006_EPEvent

 んで、元々の企画名は、エピソードタイトルとしておきました。


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エピソード『秋の風都に若さ実る』
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時系列
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2006年9月吉日、吹利学校高等部敷地内、文化祭開催期間当日。



遊離逍遙 〜珊瑚
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 普通科1年5組の出し物の当番を終えた珊瑚は、友人の誘いに駆けだしてい
くクラスメイトを見送りながら、さて、とひとりごちた。
 模擬店の食事に舌鼓を打つわけでもなく、脳内の快楽物質を促進する何かを
求めるわけでもなく、かようにこういったイベントの類に特に感慨を抱かない
身としては、知り合いでもいない限りは、自由時間になったと言ってもてんで
間が保たない。

 珊瑚     :「とりあえず独りね。どうしようかしら」

 愛菜美に先程連絡を取ったが、彼女はしっかり楽しんでいるようだ。1年早
く学校にいる分、人脈も豊富になっているに違いない。クラスの用事が終わっ
たと思ったら野球部の、と、あちこち駆け回って忙しくしているらしい。
 そう言えば陽も、意外と忙しいと見えて、一向にクラスの用事から帰ってく
る様子はない。つっけんどんなイメージで売っているくせをして、「言われれ
ばやる」ものだから、結局いろいろ任されてすっかり馴染んでいるようだ。そ
れにしても焼きそばを焼く係だと言っていたが、うまく焼けるのだろうか?

 珊瑚     :「……まあ、去年も来たけれど、良い経験ね。いろいろ見
        :ておくに越したことはない、かしら……今回は当事者視点
        :でもあることだし」

 出歩けば誰か知り合いにも会うだろう、と考えて、珊瑚はパンフレットを片
手に控え室を出た。
 ……なかなかどうして、普通の女子高生のようである。


 校内にはいろんな模擬店が出ており、様々な人波が訪れていた。主に生徒の
家族だと思われるが、同年代、つまり他校の生徒もいるようだ。そう言えば、
龍穴に置いておいた入場チケットは飛ぶように消えたから、このマンモス校が
開催する特大のお祭りを見に来たいと思う需要は、思った以上に多いのかも知
れない。


 どこかの運動部が射的をやっている。格子状に並んだ複数の的をおもちゃの
パチンコで特定の配列に撃ち抜けば景品がもらえると言う、一見簡単で破格な
遊びだが、弾が軽く、距離も持たせているため、概ね苦戦するようにできてい
るらしい。
 特に興味も持たず通り過ぎかけた珊瑚は、ふと、特等景品の携帯ゲーム機が
ほしいとだだをこねる子供連れを見かけて、声をかけた。

 珊瑚     :「坊や……あれが取りたいの?」
        :(しゃがんでにっこり)
 子供     :「……うん」(ぐすぐす)

 ちなみに特等は、全5発の弾で、5×5の格子の的で右上がり斜めビンゴを
成し遂げよ、とある。距離は8m、弾はピンポン球、的の大きさは……

 珊瑚     :「わかったわ……お姉ちゃんに任せて」

 珊瑚の眼が、きらり、と光った。


素浪人な男女 〜鋭司、珊瑚
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 校内をそぞろ歩いていた鋭司は、廊下の向こうから歓声が上がるのを聞いて、
足を向けた。
 人波の上から覗いてみるとそこは射的の模擬店で、今まさに一人の女生徒が
パチンコを引き絞り、教室の反対側の的を狙っているところだった。

 鋭司     :「おや、あれに見えるは霞原嬢じゃないか」

 ひょうっ、と弾が放たれ、先程よりもさらに大きな歓声とともに、4つめの
的が撃ち抜かれた。見れば、ビンゴよろしく右上から斜めに4つの穴がきれい
に開いている。残るは左下の1個のみ。

 野次馬    :「あっとひっとつっ! あっとひっとつっ!」

 自分のことのように興奮する群衆をよそに、当の珊瑚はひどく冷静でいるよ
うに、鋭司には映った。珊瑚は、最後の弾と思しきピンポン球を手にとり、無
造作に見える動きでパチンコのゴムを引いた。

 鋭司     :「ほう……なんとも無駄のない動きであるなぁ」

 その動きが、先程の射と全く同じ位置で動いていることに、鋭司は気付いた。
全く同じだけ引き絞り、そこからわずかに動かして狙いを定めている。

 ひゅっ、と放たれた弾は狙い違わず、珊瑚は見事に特等を獲得した。
 見物人の興奮は頂点に達し、さらに珊瑚がその商品を惜しげもなく背後にい
た子供にプレゼントするに至っては、店員役の生徒たちもただ苦笑して拍手を
送るしかなかった。

 群衆の讃辞をかき分けてその場を去る珊瑚を目で追い、少し離れた場所で、
鋭司は背後から珊瑚に拍手を送った。
 ついでに、日の丸の扇子を開いてぱたぱた扇いでみせる。

 鋭司     :「いやはや、全く、見事見事」
 珊瑚     :「……あら、周御くん」

 振り返った珊瑚は、応援の子供や見物人に見せた笑顔とはうってかわって、
全くの平常心であるように見えた。

 珊瑚     :「……見てたのね?」
 鋭司     :「うむ。まあ他にも何人か声援を送っていたようである
        :がね」
 珊瑚     :「大人げないことをしたわ」(苦笑)
 鋭司     :「そうかね? あの偉業は素直に誇れるものであろうし、
        :最後の太っ腹ぶりは実に痛快であったよ」
 珊瑚     :「三回分も払えば、出来て当然の成績だわ。格好付けるた
        :めとしては、やりすぎたわね」
 鋭司     :「ふうむ。つまり霞原嬢は、少々調子に乗ってしまったと、
        :思っているのかな?」
 珊瑚     :「そんなところかしら」
 鋭司     :「もう少し調子に乗ってしまって良いと思うがね。むしろ、
        :三回目で得物の特性を把握しきっていたのは素晴らしいと
        :言えよう。誰にでもできることではあるまいよ」
 珊瑚     :「……ありがとう」

 やはりなぜだか苦笑して、珊瑚は鋭司の讃辞に応えた。

 ふと、珊瑚の視線が鋭司の左腕の腕章に止まる。

 珊瑚     :「周御くんは生徒会の用事は良いの?」(腕章を指して)
 鋭司     :「ああ、これはユニフォームのようなものであるからして、
        :別段、常に役員として振る舞っている必要は無いのだよ」
 珊瑚     :「でも大変ね」
 鋭司     :「大変になれば仕事の方からやってくるのが世の理。そ
        :れまでの間は自分の時間を楽しんでいれば良いのだよ」
 珊瑚     :「便利な心構えね(笑)」

 珊瑚は手首の時計に目をやった。

 珊瑚     :「ちょっと時間をつぶしすぎたから行くわね。弟が心配だ
        :から」

 じゃあ、と言って、飄々と一人廊下を歩いていく珊瑚。
 鋭司もにこやかに手を振り、見送って。

 鋭司     :「……なかなかどうして、世話焼きお姉さんタイプである
        :なぁ」


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ごんべ
gombe at gombe.org



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