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Date: Wed, 27 Sep 2006 01:59:19 +0900 (JST)
From: 久志 <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30206] [HA06N] 小説『闇の赤』
To: kataribe-ml@trpg.net
Message-Id: <200609261659.BAA51206@www.mahoroba.ne.jp>
X-Mail-Count: 30206
Web: http://kataribe.com/HA/06/N/
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2006年09月27日:01時59分19秒
Sub:[HA06N]小説『闇の赤』:
From:久志
久志です。
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小説『闇の赤』
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登場キャラクター
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相羽尚吾(あいば・しょうご)
:吹利県警刑事部巡査。ヘンな先輩。
赤ベタ・青ベタ・メスベタ
:相羽家で飼われていたベタの霊。真帆の能力で実体化する。
雨竜 :迷子の竜。まだまだ子供。きゅうきゅうと鳴く。
落下
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曖昧な境界。
肌と同じ境目のない温度、上下左右の感覚が消え、全身が形もなく溶けて、
何もかも区別がなくなっていくような奇妙な感覚。
ゆらゆらと、暗闇の中にたゆたう。
ひらひらと、暗闇の中で揺れる赤。
積み重なる落ち葉のように、闇の中を舞い落ちる赤い破片。
鮮やかな、ヒレをばたつかせるベタのような――ベタ?
半分解けかけた意識が引き戻される。視界がぐるりと回り、目の前に浮かび
上がる石畳。とっさに体を引こうと意識した途端、無から表れるように体が宙
を泳ぎ回転する。
つま先から石畳に触れ、足、膝を伝わって地面に降り立つ。腕に巻きついた
雨竜が小さく声をあげた。
「ここが……」
真帆の夢の中。
辺りを見回す。先ほどまで暗闇の中で降り注いでいた赤い断片は欠片も見当
たらず、延々と続く灰色の石畳と無数に立ち並ぶ赤い鳥居があるだけだった。
「真帆」
眺めているだけで引き込まれそうな錯覚を覚えるほどの、重なるように続く
赤い鳥居。その中を真っ直ぐに突き抜けてく石畳。
ふっと、頭の上にのっていたメスベタが飛び上がる。
「おい」
呼びかけに答えず、かすかな白い残影を残し、真っ直ぐに鳥居の向こうへと
飛んでいく。
「いくしか、ないか」
呼応するように小さな鳴き声と首筋に触れる尾ビレの感触。
疾走
----
まるで赤いトンネルのように。
連続した風景の中、石畳に響く足音。
真帆。
お前は今どこにいる?
彷徨っているのか、追われているのか、囚われているのか。
「真帆……」
響く足音。
どれだけ走ったのか。
目の前を閃く、鳥居の鮮やかな赤。
いくつ、潜り抜けたか。それすらも曖昧で。既に時間という感覚も、距離も
何もかも自分の中からぬけ落ちている。先行したはずのメスベタの姿も既に遠
くに消え、息つく間もなく一心に走り続けていた。
『相羽さんを必要とする人達は見捨てるの?!』
見捨てたくない。
「真帆」
お前だけは。
走りながら。視界で踊る、鳥居の赤。
「真帆……」
背筋を這い上がる寒気。
霧雨の降る日に感じた、五月のあの日に思い知らされた……喪失の恐怖。
「真帆っ!!」
何もない闇、その漆黒の中から覗く、赤。
黒い穴。
赤。
全身の毛が逆立つような恐怖。
赤い、穴。
「真帆っ!!」
時系列
------
2006年8月頃
解説
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夢の中、真帆を探す相羽。
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以上。
さあ、話が終わるまでに何回「真帆」と叫ぶでしょう(クイズにするな)
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