[KATARIBE 30195] [HA06N] 小説『夢渡り』

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Date: Sun, 24 Sep 2006 18:30:29 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30195] [HA06N] 小説『夢渡り』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年09月24日:18時30分29秒
Sub:[HA06N]小説『夢渡り』:
From:久志


 久志です。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『夢渡り』
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登場キャラクター 
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 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :吹利県警刑事部巡査。ヘンな先輩。
 相羽真帆(あいば・まほ)
     :自称小市民。多少毒舌。去年十月に入籍
 本宮史久(もとみや・ふみひさ)
     :吹利県警刑事部巡査。人間戦車。
 赤ベタ・青ベタ・メスベタ
     :相羽家で飼われていたベタの霊。真帆の能力で実体化する。
 雨竜  :迷子の竜。まだまだ子供。きゅうきゅうと鳴く。

相羽 〜嵐の前
--------------

 ベッドで静かに寝息を立ててる真帆を見下ろして、手を開いて握り締める。
呼応するように、首の周りに巻きついた雨竜がきゅうとひと鳴きしてしっかと
体に張り付く。
「待ってろ……って言っても無駄か」
「きゅう!」
 梃子でも動かないとばかりに細い体をぺたりと貼り付けてくる。
「わかったわかった、苦しいから少し緩めてくんない?」
「きゅう……」
 ぺたりと頭を胸に押し付けて鳴く雨竜の額を指先で軽く撫でる。
 すりついた雨竜の声に呼応するように首筋に張り付いた二匹のベタが長い尾
ヒレをばたつかせる。
 こいらみんな心配してるんだろうね、真帆のことを。
 真帆を連れ戻す。そのためならこいつらは何があってもついてくる気だろう。
正直なところ置いていけるものならそうしたかったけども、この様子だと無理
やりでもついてきかねない。
「いこか、一緒に」
 首筋にばたばた当たる尾ビレの感触と甲高い雨竜の鳴き声。

『真帆さんは……夢に囚われています』

 以前から、真帆はどこか異質なものを引き寄せやすいところがあった。
 ベタ連中然り、雨竜然り。

 目の前に降りる白い影。
 とぼけた風にも見える正面顔でじっと見つめてくる目。だが、どこか真剣な
何かを感じるメスベタの目。
「来るか?」
 ぶるんと体を揺すって額を飛び越えて頭のてっぺんに乗っかってくる。
「わかった」
 首の両脇に赤と青のベタ、腕にぐるり巻きついた雨竜、頭のてっぺんにちょ
こんと乗ったメスベタ。傍から見たら随分滑稽な姿かもしれないけど。

「真帆」
 全く身じろぎせず眠りに落ちている真帆の手をさする。
「待ってろ……」
 両手で包んだ手はまったく力もなく。
「絶対に、連れ戻す」


史久 〜一抹の不安
------------------

 夢に潜り込む為の道具を揃え、先輩の家へと戻った頃。既に先輩はすっかり
準備を整えていた。

「これです」
 手にした厚手の封筒の中から取り出した一枚の呪符。
「この符を介して、あなた達を真帆さんの夢の中へ送る事ができます」
 先輩に代わってきゅうという鳴き声が答える。細い体をしっかと体を腕に絡
めて、何が何でもついていくという意志を前面に見せる雨竜。そして先輩の首
に張りついたままヒレをばたつかせる青と赤のベタ。さらに頭の上、髪に埋も
れるようにどんと座っている白いメスベタ。

 真剣だというのはわかる。
 皆、真帆さんを心配して真帆さんを救うために覚悟を決めているのだという
のも理解できる。

 しかし、一抹の不安を覚えるのも確かで。

「ですがよく聞いてください。一旦、この符で夢に渡ったら夢を見ている本人
である真帆さんが目を覚ますまで、あなた達は現に戻ることはできません」
 先輩が深く頷く。
「本来なら、もっと準備を整えてからやるべきなのですが」
「連れ戻してくるさ」
 きっぱりと断言する。
「……気をつけて」
 先輩の代わりに雨竜の鳴き声が響く。

 眠ったままの真帆さんの額に符を乗せる。
「ここに手を触れてください」
 額を覆うようにかぶさった先輩の手を確認する。
「気をつけて」
「わかってる」
 それきり、かくんと先輩の体から力が抜ける。倒れこむ体を支えて、ベッド
の脇にそっと降ろす。腕にまきついた雨竜もくたっと体を横たえ、両肩と頭に
止まっていた三匹のベタ達は先輩の体い吸い込まれるようにその姿を消した。

「……先輩、真帆さん」

 どうか、無事で。


時系列 
------ 
 2006年8月頃
解説 
---- 
 真帆の異変、そして史兄の診断と解決法は。 
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上。 





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