[KATARIBE 30194] [HA06N] 小説『白魚の警告』

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Date: Sat, 23 Sep 2006 01:32:37 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30194] [HA06N] 小説『白魚の警告』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年09月23日:01時32分37秒
Sub:[HA06N]小説『白魚の警告』:
From:久志


 久志です。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『白魚の警告』
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登場キャラクター 
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 相羽尚吾(あいば・しょうご)
     :吹利県警刑事部巡査。ヘンな先輩。
 相羽真帆(あいば・まほ)
     :自称小市民。多少毒舌。去年十月に入籍
 本宮史久(もとみや・ふみひさ)
     :吹利県警刑事部巡査。人間戦車。
 メスベタ
     :相羽家で飼われていたベタの霊。真帆の能力で実体化する。

相羽 〜危うい予感
------------------

「真帆?」
 呼びかけに答えることはなく。真帆は深い眠りについていた。死んだように、
という形容が怖いくらいに当てはまるほどに。
 恐らく自分がいない間、眠れない日が続いたのだろうということは想像に難
くない、疲れ切って眠っているのだろうという予感もあった。ベッドに寄りか
かったままの体を抱き上げてベッドに横たえる。
 その体が、妙に軽い。
 ベッドに寝かせた真帆の額を撫でて唇を触れる。
「真帆……?」
 何かがおかしい。
 静かに寝息を立てる頬を両手で触れ、額をつける。肌を通じて感じる体温、
鼻先に当たる呼気、一定のリズムで刻む脈の感覚。
 どれも不整なわけではなく、その表情も穏やかそのものといっていい。
 だが、何かがひっかかる。
 手首をとって脈を診る。そのまま目を閉じて、自分の呼気と脈の感覚から普
段感じている真帆を思い浮かべる。
 脈が少し遅い。
 微妙に体を上下させる呼気のリズムも少し違っている。
 触れた体温も、普段ならば二度ほどの差があるはずだが、それも少し低い感
じがする。
「真帆……」
 ぞくり、と。影を落とす不安。
 何かがおかしい。それが何かは見当もつかないが、自分の中で何かが真帆の
異常を告げている。
 目の前にふわりと浮かび上がる、白い影。
 オスほどではないが長い尾ビレとえらぶたを膨らませながら浮かぶ姿。
「真帆に何かあったのか?」
 メスベタは答えない。ただ、じっと真っ直ぐにこちらの目を見つめている。
 ふと思い出す、年明け二月にあった出来事。バレンタインで自分宛てに贈ら
れた異物入りのチョコをこのメスベタが見破った事。女の勘なのかどうかまで
はわからないが、このベタは他のオス二匹とは違う妙な鋭さがある。真帆の異
常をなんらかの形で察して、自分をこうしてたたき起こしたのだろう。
 何かが真帆の身に起きている。
 漠然とした予感に過ぎないが、それは妙に確信できた。

 ベッドの脇に置いた個人携帯を手に取る。架け慣れた番号を確かめて通話ボ
タンを押した。


史久 〜夢魔
------------

 いやな予感がした。
 そして僕の予感は、いやなものであればあるほど良くあたる。
 嬉しくはないけれど。

 手にした御石を真帆さんの額に当てる。
 超常現象事件を捜査する、という立場にいるけれど。実際の所、僕自身には
何かを視る力も感じる力も備わっていない。できることといえば、ちょっとし
た霊具を借りて視ることと、今まで培った感覚から状況を推測すること。

 導き出した答え。

「どうだ?」
 普段と全く違う、真剣な先輩の声。仕事の時に聞く真剣そのものの声ともま
た違う、心の底から心配しきった切実な声。
 おおよその状況と状態を把握することはできた。そして、それが決して楽観
できるものではないということも。
「現象はおおよそ見当がつきました」
 真帆さんの額に当てていた御石を布でくるんで、ポケットにしまう。

 夢、とは厄介なもので。
 夢占、夢渡り、夢喰い、夢手繰り。
 肉体と精神の境界、曖昧で混沌とした夢に潜む魔というものは案外多い。
 何かとこの世でないものと関わり合いやすい性質の彼女が、夢の魔に囚われ
てしまったというのも理解はできる。
 だが。

「史」
 少しこわばった先輩の声。
「真帆はどうなんだ?」
 両肩にのった赤と青のベタがばたばたとヒレをばたつかせる。
「真帆さんは……夢に囚われています」
 しばしの間を置いて、先輩が口を開く。
「助かる方法は、あるか?」
「……いくつかあります」
 夢に囚われた者を救い出す方法。夢を手繰ることのできる術師に依頼し呼び
かけてるか、またはその夢に侵入し夢に囚われた本人を探し出して目を覚まさ
せるか。方法はいくつかあれど、これが最良で絶対の解決法というものがない
のも事実ではある。
「史」
 先輩の目が真っ直ぐに見る。真帆さんを救う為の方法はある、だがそれはど
の方法を選ぶにしろ少なからず危険が生じる。
「頼む、教えてくれ」
 その言葉は真剣で。
「わかりました、なんとか手配できるようにします」

時系列 
------ 
 2006年8月頃
解説 
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 真帆の異変に気づくメスベタ。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
以上。 




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