[KATARIBE 30191] [HA06N] 小説『Recollection』

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Date: Thu, 21 Sep 2006 22:11:04 +0900
From: "Toyolina and or Toyolili" <toyolina@gmail.com>
Subject: [KATARIBE 30191] [HA06N] 小説『Recollection』
To: kataribe-ml <kataribe-ml@trpg.net>
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[HA06N] 小説『Recollection』
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登場人物
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 品咲渚 http://kataribe.com/HA/06/C/0636/
 呉羽

 文化祭も近いというのに、創作部はここのところ静かなもので、部員の集ま
りもまばらになってきていた。三年生にも関わらず、出席率のやたらよかった
二人、蒼雅紫と品咲渚が、連れ立って塾に通い出したのも一因だろうが、とも
かくとして。部室に空白の時間が、固定的に発生するようになっていた。
 しかし、それがまったく把握されていないはずもなく。
 ねらってやってくる人間も存在する。

「誰もおらんな……。創作するなら今のうちや」

 先述した品咲渚だ。
 最近は蒼雅紫と二人で行動することが多い彼女だが、今日は珍しく一人。
 こそこそと部室に入って、なにやら周囲を気にしている
 もっとも、誰もいない、とは言っているが、紫の霊獣、呉羽が部室の片隅に
いることには気づいていないようだった。
 持っていた袋の中身を一つ一つ、机の上に渚が並べていく。丁寧に並べてい
るようで、微妙に角度がずれているのが、いかにも渚らしい。多少なりと、気
がはやっているのを隠そうともしていない。

 ことん、と首をかしげて。ピィ、と呉羽が鳴いた。
 何を並べているのか、興味があるらしく、軽く羽ばたいて、渚のすぐ近くに
ちょこん、と止まる。集中していて気づいていないのか、それともいてもかま
わないと思っているのかはわからないが、渚は材料並べを黙々と続けた。
 机が一つで足りなくなったのか、傍の机をくっつけて三つ並べる。その上に、
残りの荷物をどんどん並べていく渚。並べ終えて、うんうんと腕組みして満足
そうに頷く仕草を、呉羽はじっと見守っている。
 鞄から、一冊の本を取り出して、渚は立ったままページをめくり始めた。呉
羽の位置からは表紙は見えなかったが、各ページには、「やさしいぬいぐるみ
作り」とタイトルが書かれていた。

 なるほど。
 とでも言いたげに呉羽は頷いた。
 呉羽自身は作ったことはないが、紫の母親が、さすがのおぼつかない手つき
で、ぬいぐるみを作っていたのを覚えている。今思い出しても、何かよくわか
らない、動物のようなもののぬいぐるみだが、紫は今でも大事にそれを机に飾っ
ている。
 ぱらぱらと、しばらく軽い音が響いていたが、それが止んだ。
 女の子をつくりましょう、と見出しにはあって、そこで渚の手が止まってい
た。しばらくその見出しで止まっていた手が、今度はゆっくりとページを進め
ていった。台紙を用意しましょう、という小見出しで手がまた止まった。
「……台紙はズルして、お店で描いてもらったけど、まあええやんな」
 ちらっと、クリアファイルに入れられた台紙を眺めてつぶやく。

「よっし、やるか」
 本をぎゅっと広げて、閉じてしまわないように、力を入れて、押しつけ始め
る。呉羽がちょこんと降りたって、ページの端を足で押さえた。
「お、呉羽さん、さすが気が利かはるなあ。んじゃサクっと」
「ピィ」
「あ、呉羽さん、これ、ゆかりんにもちょっとナイショにしとって……?」
「ピィ」
 うなずく呉羽。
 五分ほどかけて、どうにか縫い針に糸を通して、渚は作業に取りかかった。
 そして呉羽は、少し離れた位置で見守りながら、廊下にも気を配るのだった。
 誰かきたら知らせられるように。



時系列と舞台
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文化祭間近な創作部の部室で。


解説
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BFCのことをまだ引き摺っているようです。


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Toyolina
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