[KATARIBE 30146] [HA06N] 小説『白郎鬼 〜三章』

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Date: Sun, 10 Sep 2006 01:56:25 +0900 (JST)
From: 久志  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30146] [HA06N] 小説『白郎鬼 〜三章』
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2006年09月10日:01時56分25秒
Sub:[HA06N]小説『白郎鬼 〜三章』:
From:久志


 久志です。
ふにふにと続けてみた。

-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 
小説『白郎鬼 〜二章』
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登場キャラクター 
---------------- 
 如月尊(きさらぎ・みこと)
     :花屋店長兼退魔師なお姉さん。実は心は大人で体は子供。
 如月夾(きさらぎ・きょう)
     :尊さんの養子、正体は花鋏の付喪神 
 本宮尚久(もとみや・なおひさ)
     :本宮法律事務所所長。小池とは大学時代からの親友。

依頼
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 眩しい日差しが照らす。
 時刻は午後三時を少し回った頃、日は少し傾きつつあるものの、夏の日差し
はまだ力強く降り注いでいる。
 吹利商店街にある小さな花屋FLOWER SHOP Mikoにて。人波の途切れた時間、
店主の如月尊はレジの側の椅子に腰掛けて注文書に目を通していた。長い黒髪
をリボンで緩く束ね、洗いざらしのTシャツにジーンズ、エプロンを羽織った
姿は一見十代半ばの少女のように見えるが、仕草の合間合間に大人の女性を思
わせる動きが垣間見える。
 如月尊。FLOWER SHOP Mikoの店長であり、もうひとつの顔として如月流退魔
術直系第十六代継承者という肩書きを持っている。過去に遭遇した妖魔の襲撃
により外見年齢を退行させる術を受けた影響で、実際年齢は三十を過ぎている
のに見た目は少女というアンバランスさを醸し出している。
 尊が注文書に一通り目を通してふと顔をあげた先、店の奥から私用の電話の
音が鳴る音が響いた。
「はいはい」
 椅子から立ち上がって、つっかけを慣らしながら店の奥の電話に手を伸ばす。
「はい、如月です」
 受話器をとって電話に出る。そして相手の声を聞いた尊の顔が一瞬険しい顔
になった。
「……はい」
 眉根をきゅっと寄せた顔は、十代半ばに見えるその容姿には不似合いな程に
険しく、凛とした緊張感を漂わせていた。
「はい、わかりました。では夜にお伺いします」
 きっぱりと答えて受話器を戻す尊の姿を、通りかかった住み込みアルバイト
の夾が不思議そうな顔で見上げた。
「おねえちゃん、どうしたんです?怖い顔して」
「ん? あ、何でもないよ。あのね夾ちゃん、ちょっと急に別口のお仕事の話
が入っちゃったから今日は早めにお店閉めるね。夜はいないから知恵ちゃんと
一緒にお留守番しててね」
「はいっ、わかりました」
 元気よく答えた夾がぱたぱたと店の入り口へかけてゆく姿を見送って、尊は
小さく笑った。
「久々の仕事、ね。少し気合を入れておかないとかな」
 ちろりと唇を舐めて笑う姿は、狩猟者を思わせる気迫に満ちていた。

見舞い
------

 じっとりとまとわりつくような空気の中、本宮尚久は歩いていた。
 夕暮れ時とはいえ、夏の日差しは照りつけるように暑い。それでも仕事着で
あるスーツをキッチリと着込み、ネクタイを緩めることもなく、商店街を抜け
目的の店へと向かって歩を進めていた。
 目指す先、FLOWER SHOP Mikoの店先で足を止める。
 普段ならば入り口近くに溢れんばかりに並んでいるはずの花があらかた片付
けられ、ホウキとちりとりを持った尊が慌ててぺこりと頭を下げた。
「あ、本宮さん……いらっしゃいませ」
 慌てて姿勢を正してお辞儀する尊の姿に、微笑して軽く片手を上げた。
 尚久にとって、店長の尊は末の息子の和久の交際相手という少し微妙な間柄
でもあり、晩生でなかなか進まぬ仲を温かく見守る相手でもあった。
「こんにちは尊さん。今日はもうお店を閉められるのでしょうか?」
「はい、急用が入ってしまって。あの、もしかしてお花がお入用でしたか?」
「ええ、友人が少し体調を崩していましてね。見舞いの花をと思ったのですが」
 幸久より知らされた小池の不調。事務所の仕事を早めに切り上げて、見舞い
に向かおうとした途中だった。
「そうでしたか、あの」
「ああ、御用があるならば無理にとは言いませんから、すみませんでした」
「いえ、まだ大丈夫です。時間に少し余裕がありますから、今から花束ひとつ
お作りするのならすぐにでも」
「そうですか、本当にすみません。お願いできますか」
「はい、どのようなお花でお作りしましょう?」
「ええ、白い花が好きな人なので……そうですね、白バラと緑の葉を大目に
使って作っていただけますか?」
「かしこまりました」
 ぺこりと頭を下げて、ぱたぱたと慌てたように店の奥に駆け込んでいく尊を
見送って思わずくすりと笑う。

 夕暮れ時、徐々に翳ってゆく空を見上げて尚久は小さく息をついた。
 思い浮かぶ、白髪の友人の姿。
 尚久にとってかけがえの無い親友であり、かつての恋敵であり、どれだけ感
謝してもし足りない大切な恩人でもある。
 小さく息を吐く。何事もなければよいと願いながら、不安感は消えない。

「お待たせしました、このような感じでいいでしょうか?」
 顔をあげると、両手にいっぱいのバラと緑の葉をあしらった束を手にした尊
がにこやかに笑っていた。
「ええ、いいですね。それでお願いします」


時系列 
------ 
 2006年08月らしい
解説 
----
 如月尊、店を早めに切り上げることに。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=
以上。



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