[KATARIBE 30132] [HA06N] 小説『確かに美味しそう』

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Date: Wed, 6 Sep 2006 01:02:59 +0900 (JST)
From: いー・あーる  <furutani@mahoroba.ne.jp>
Subject: [KATARIBE 30132] [HA06N] 小説『確かに美味しそう』
To: kataribe-ml@trpg.net
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2006年09月06日:01時02分58秒
Sub:[HA06N]小説『確かに美味しそう』:
From:いー・あーる


ども、いー・あーるです。
今日も半分寝ながら書いてました。
……誤字多そう(えう)

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小説『確かに美味しそう』
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登場人物
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 相羽真帆(あいば・まほ)
     :自称小市民。多少毒舌。あやかしに好かれる。
 ベタ達
     :以前、相羽家で飼われていたベタ達のあやかし。
 軽部片帆(かるべ・かたほ)
     :目立たないけど毒舌大学生。相当のシスコン。

本文
----

 夏の間、相羽家の大黒柱はとにかく仕事が忙しく、何日か家に帰ってこない
ことが続いた。
 そうなると、相羽家に近寄ってくる奴もいる、というもので。


「パン出来たよー」
 真帆の声に、赤と青のベタが寝っ転がっていたテーブルから飛び上がり、台
所にすっとんでいった。
「パン?」
 腹ばいになって本を読んでいた片帆が、本から目を上げて声をあげる。
「うん、おからと豆腐のパン」
「そんなのあるの?」
「うん。結構美味しいよ」
 よいしょ、と、転がって立ち上がり、片帆は台所に向かう。そこではもう赤
と青のベタが、パンを持った真帆の手の近くでぱたぱたとそよいでいた。
「ちょっとちょっと待って……はいどーぞ」
 ほこほこ、と、手の中で転がしながら、それでも真帆はパンを二つに割る。
途端に二匹のベタは突撃し……かけてまたぶへーっと逃げ出した。
「……だいじょぶ?」
 慌てて声をかけた真帆の周りで、ちたぱたとベタ達は長く広がる鰭を動かす。
「なんか間抜け」
「こら、片帆」
 言いながら、真帆は少し困ったようにパンを見ていたが、
「ああそっか」
 と、すぐにパンを細かく割り、ふうふうと息をふきかけた。
「すこし冷えたかな……食べてごらん?」
 途端にまたベタ達が、真帆の手の上に寄ってきて、つくつくとパンをつつき
だす。
 今度はかなり、さめていたらしい。

「ねーさん、あたしも貰っていい?」
「うん……あ、そこのジャムとか合うかもよ」

 多少暑いことは暑いが、やっぱりパンは焼きたてが美味しい。半分に割って
間にマーガリンを塗ると、とろっと溶けてパンに染み込んだ。

「……へえ、結構美味しいね」
「おからっぽくないでしょ」
「うん」

 いつの間にかベタ達は台所から元いた部屋に戻っている。その部屋のほうが
冷房が効いているのもあって、真帆と片帆もその後を追った。
「あらら」
 既に二匹のベタは、テーブルの上に転がっている。よほど満腹になったらし
く、おなかを上にしてぺたんと寝転がっていた。

「おなかいっぱい?」
 笑って真帆が言うのに、ぱたぱた、と、鰭だけ動かして返事をする。その様
がとても可愛らしい。
「ひっくり返っちゃって」
「でも可愛いでしょ?」
 言われて、片帆は首をかしげた。

 つるん、と、綺麗な赤と青。薄くてしなやかな鰭と尾びれ。
 それが、どこかしらぱたぱた、と、慌てたように動く。それが子供染みた動
きに見えるせいか、余計に可愛らしさが増すのだろう。

「あ、珈琲いる?」
「アイス珈琲がいい」
「……はいはい」

 真帆が台所に消えてから、片帆は改めてテーブルの上のベタ達を見やった。

「……確かに綺麗で可愛い」 

 つるりん、と。
 色は鮮やかだし、その質感は金魚の餃子にも似ている。どこか半透明の感じ
が、そう見せるのか。

 ひょい、と、無言のまま、片帆は赤のベタをつまみあげ、その手の中で赤ベ
タは、少し驚いたようにぱたぱたと動いた。とはいえそんな大変なこともなか
ろう、とでもいうように、最初は大人しくしていたのだが。

「…………んまそうかも」
 ぼそ、と片帆がこぼした言葉に、それはそれは真剣に衝撃をうけた……らし
かった(魚の顔に、けれどしっかりと表情が浮かぶのは、ちょっと不思議でも
ある)。

「こー、シャーベットみたいでさー」
 ぢたばたぢたばた。
 手の中で無茶苦茶に暴れようとする赤ベタを軽く抑えながら、片帆はぢっと
赤ベタの目を見る。
「さあて」
 ぱくっと口を開いて、片帆はゆっくりと手に持っていたベタを口の傍に移動
させる。
 青ベタが必死に身体を膨らましては威嚇するのだが、全く効き目がない。
 赤ベタ、史上最高の危機!!

 ……とでも言いたくなったところで。

 ぺし、と、片帆の後頭部がはたかれた。
「あいて」
「それでなくても怖がりなんだから止めなさいっての」
 声がかかる前に、赤と青のベタ達は、真帆の方にすっとんでいっている。そ
のまま首の両側に貼り付いて、ふるふると震えだした。

「…………冗談だったのにぃ」 
「冗談にしては、問題があるよ。……ほら、怖がっちゃって……ねえ」 
「…………だってぇ」
 なでなで、と、首のほうに手をやって、二匹のベタを撫でる。片帆は憮然と
した。

 たしかにまあ、このベタ達をもともと飼っていたのはこの家の大黒柱である。
よって片帆としては……何となく「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」という部分が、
無いとは言えないというか言わなければ嘘というか(以下略)。


「……ほら、片帆ももうやらないから、ね?」
 ふるふると真帆の首にひっついて、震えているベタ達を真帆が撫でる。
「ね、もう怖がらないの」
 言いながら、そっと二匹を首から離す。鰭がふわふわとあたって、結構くす
ぐったいようだ。
 それでもベタ達は、なかなか真帆の近くを離れない。うーん、と、数瞬考え
てから、真帆はぽん、と手を叩いた。

「じゃあ……水羊羹食べよう。お茶も入れようね」

 わーい、と、ベタ達が、それでも真帆から30cmと離れないところでぱたぱ
たと鰭を動かす。
 うんいいね、と、片帆が肩をすくめる。

 相羽家の、昼間の風景である。

時系列
------
 2006年7月頃。

解説
----
 日常の話。
 雨竜がいないのは……六華のところで遊んでいるからにしておこううんそうしようっ
(考えてから書け)

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 てなもんで。
 ではでは。
 
 


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